閑話 宋清の最期
僕は僕から逃げている。正確に言うと僕になりすました張白と周恩楽からだ。彼らとは大学の李教授ゼミのクラスメイト。ただ、それだけのはず。そう、ただのクラスメイトのはず。なぜ、張白は整形までして僕になりすますのか。
「清、こっち。こっち」
僕の恋人の李月麗。彼女が最初にこの異変に気付いて僕に教えてくれた。彼女も狙われてしまったのかもしれない。
「そっちの状況はどうだい」
「うん、李老師に相談したよ。すべては東方の周恩君が解決してくれるはずだから、私たちは何も心配しないで逝っていいよって」
「おいおい、大学の教授がそんな不謹慎なことを。でも、安心したよ。麗ちゃんもその周恩君に任せておけばいいってことだよね」
「私は李老師と一緒に周恩君を目覚めさせに東方に行ってくる。ごめんね。最期を看取ってあげられなくて」
李月麗は涙ぐみながら僕に最後のハグをして、どこかに行ってしまった。
衆恩神。別名、周恩君。まさか、最後の最後で神頼みとはね。
「こんな所で会うとはねえ。宋清」
僕の顔をした張白に見つかってしまった。僕は黙り込む。そして、後頭部に激痛がはしり僕の意識は遠のいていった。
せめて麗ちゃんだけでも。神さま、僕を清兄と慕う妹の麗ちゃんだけでも助けてくれ。
『そうだね。宋清』