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FILM.39 第三者の目

昨日のことが頭から離れない。


―お前、俺のこと何も知らないくせに余計なことするな


俺は余計なことをしたらしい。しかし、分からない。何がダメだったのだろうか。俺は何をしたのだろうか。脳みそフル回転で答えを出そうとするが、分かるわけがなかった。その糸口さえも見つからない。

「体調悪いの?」

「……え?」

後ろから市川が話しかけてきた。

「なんかやたらとため息してるから。眠そうだし疲れてるの?」

「いや、大丈夫。悪い。心配してくれてありがとう」

完全に無意識だった。ため息が出るほどに悩んでいたのか。確かに、昨日はいつもより就寝時間が短かった。肘をつきながらあくびをしたとき再び視線を市川へ移した。そして自分の中にこれまでに何度か抱いた「もしかして」という疑念が浮かび上がる。

「……なあ、市川ってさ、片村と付き合ってんの?」

「……え!?」

スマホをいじっていた市川が勢いよく顔を上げた。

「……え……か、片村くん……?」

「うん」

「え……何で」

しばらく沈黙が続いた。今のはこんなことを急に聞いた俺が間違いなく悪かった。

「……いや、ごめん。何でもない」

「……うん」

俺は素直に彼女に謝った。

「……ねえ、何でそんな風に思ったの?」

「何でって……ちょっと気になってて……」

「気になってて……ってどう言うこと?」

彼女の頭にクエスチョンマークが見える。ただ、今ここで「片村がやたらと市川を気にしている」ということは伝えてはいけない。

「たまに一緒にいるところ見るから『付き合ってるのかな』って」

よくある理由だ。たったこれだけのことで2人が男女の関係であると断定するのは失礼だとは分かっている。俺みたいに普通に関わりのある男の1人かもしれないじゃないか。

「私と片村くんってそういう関係に見えるの……?」

「まあ、少なくとも俺にはそう見えた……かな」

「そうなんだ……」

市川は「申し訳ないよ」と大きく息を吐いた。

「申し訳ない?何で?」

「申し訳ないよ。私のせいで片村くんに迷惑かけてるかもしれないのに」

「迷惑って。そんなの気にしなくて大丈夫だと思うよ」

「そうかな……」

「なんだかんだであいつはモテるからそういう噂は流れることはあるだろうけど、片村的には迷惑じゃないかもよ」

「……?」

こんな慰めをして俺はどうしたいのだろうか。この2人をくっつけたいのだろうか。カメラが上手い片村と絵が上手い市川。芸術センスの塊という似た者同士。そんなお似合いな2人の進展を想像すると胸の奥にほんの少し痛みを感じた。

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