FILM.3 呪われた写真部
写真部の噂はよく聞いていた。いつどこで聞いたのか。気付いたら、知っていた。
「なんか、写真部の先輩が撮ったっていう写真が発端だったらしいよ」
「写真……?」
「うん、俺がいなかったときだから本当かは分からないけど」
そういって話始めた。
「写真部を引退した先輩が心霊写真を撮ったらしくて、その写真をきっかけにいろんな悪運が訪れたんだって」
「それってどんな……?」
「交通事故とか食中毒とかって書いてあった気がする……」
「え……」
「そんなのが続いたんだって」
想像していたものとは全く別のものだった。そんなことが立て続けに起こっていたら私も背筋が凍る気がする。
「そりゃ、呪いだなんて言われるのも無理無いけど、困ったもんだよな」
片村くんは頭を掻きながら地面に身体を下ろした。
「そういう話ってどこから?」
「……まあね。先輩が残してくれたから」
「先輩?」
今日の片村くんから「先輩」という言葉を何度か聞いた。でも多分、この「先輩」は原因を作った「先輩」とは違う。名前こそ出ていないが、それだけは分かった。
「……でもさ、それでも片村くんは呪いを信じて無いんでしょ?」
「え?」
「え、だって周りが辞めていくなか、自分は辞めてないわけじゃん。それってその呪いを信じてないからこその行動じゃないの?」
「……そう……か?」
鳩が豆鉄砲を食らったとはまさにこのような顔を言うのだろう。私を見上げる彼の目は、これまでの「カメラオタク」からの使命感よりは、「廃部」という事実に対して後悔の色を強く感じた。
「先輩も辛かったと思う。みんな誤解してるから、ある意味四面楚歌に近い状況だったんじゃないかな……」
「写真部を助けてくれなかったの?」
「……」
こんなこと、聞いていいのだろうか。
「写真部に所属している人と接触したら呪われるとか言われてるの?」
「え?」
「……え」
変な空気を作ってしまった。お互いに顔を合わせながらそれを分かった。どうやら、違うみたいだ。
影が徐々に左に傾き始めていた。一体、どのくらいの時間ここにいたのだろうか。最初はここまで長居するつもりはなかった。
「そろそろ、帰ろうかな。やることもあるし」
「俺も帰ろっと……」
片村くんは立ち上がり身体を伸ばした。荷物をまとめて私たちは屋上で解散した。屋上で描いたスケッチブックを眺めながら私は彼のくれた言葉を思い出していた。
彼は「上手」と言ってくれた。
泣きそうになった。
嫌いな言葉なのに。どうして、私は嬉しくなってしまったのか。お世辞かもしれない。それでもあの時の私には十分な言葉だった。自分は何のために絵を描くのか。絵を描いていれば夢中になれる。だから、描く理由なんて「自己満足」で足りた。けれどそんな私を許せなかった自分もいた。その嫌悪感をたった一言で私の中から払拭してくれた。
このスケッチブックは、まもなく全てのページが埋まる。
「新しいスケッチブックを出さないと……」
この日は帰ってきてから自分の部屋で着替えるより先に、新しいスケッチブックをストックしている引出しを開けた。