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FILM.24 提案

―『絵は人なり』って言うでしょ。それと同じように私は絵は人生を描くものだと思う、全ての人間の


その言葉が私の全てを変えた。


小学生。

ただ、絵を描いていた。紙、自由帳、画用紙、授業ノート、教科書。目の前に「紙」があれば描いていた。楽しかった。


中学生。

美術部に入った。それは「ここに入れば絵を描けると思った」から。もちろん、大当たり。絵をたくさん描けた。しかし、小学生の頃とは違う。描けば全てに締め切りがあった。社会ではそれが普通だ。だが、当時の私にはそれは盲点だった。美術部に入ってもクロッキー帳と鉛筆、絵の具で描くことしかしていなかったが、良いものを作ろうとクオリティーを重視し始めたため、なかなか納得のいくものが出来ない。1日減っていく度に募る焦り。締め切り1週間前は勉強よりも優先順位が上だった。部活に入ることはこんなにも大変なのかと思わされた瞬間だった。大変だからこそ、完成したときの嬉しさはここでしか味わえない達成感を覚える。


それでも、上手くいかないのがこの世界。この頃から徐々に私が私でいられなくなっていった。


「賞状。最優秀賞。中学2年、市川莉桜殿」

私は美術のコンクールにてありがたいことに最優秀賞を獲得した。応募した作品は自信が全くなかった。それでも結果が良かったのであまり消極的には考えない。一通り読み終え校長先生が「おめでとうございます」と一言。拍手が鳴り響く中、私は賞状を受け取った。


「莉桜ー!!おめでとう!!すごいねー、また入賞じゃん!!」

「ありがとう!去年は悔しかったからリベンジ出来てよかったよ」

去年も表彰された。記憶は新しい。だが、今年と違って佳作。当時の自分はかなり自信を持って描いたので順位に納得がいかなかった。だが1年経った今、あの結果はごもっともだと思う。むしろ、佳作という結果を付けてくれたことに感謝したい。大人になると目も肥えてくる。

「いいなー、私も賞取りたいよー」

「茉由なら取れるよ、次も一緒に頑張ろう!」

「そうだねー!!」

笑顔で話してくれるが、彼女は内心どう思っているのだろうか。私の目に映る茉由は、常にポジティブに物事を捉える子だ。だからきっと今くれた言葉も彼女は素直に喜んでくれているのだと感じた。

「今日、部活いく?」

「うん、いく。次は何描こうかなー……」

私は人物を描くのが好き。パラパラ漫画ではないので絵はもちろん静止画。切り取る動き1つで絵の迫力が変わってくる。人物画は風景画よりもそれを追及されやすい。風景画もそこは大切だが平面なので地味になりやすい。だから技術も必要なのだ。私にはそんな技術は無い。今思うと自分でそれを分かっていたのでひたすら人を描いていたのかもしれない。

「茉由は、今度何描くの?」

「どうしよっかな、まだ決まってないんだよね」

「私も」

廊下を歩きながら私たちは考える。

「……ねえ、ちょっと提案があるんだけどさ……」

「ん?何?」

「もしよかったら一緒に作らない?作品」

「え、合作ってこと?」

「うん」

合作。つまり、2人以上で1つの作品を作り上げること。

「美術、特に絵って基本的に個人作業じゃん。だから嬉しい時も辛い時も自分の気持ちを分かり合える人がいない。だけど合作なら違うと思って。莉桜とやれば、嬉しい時も一緒に喜べるし、辛い作業だって楽しくなるんじゃないかって思ったの」

「茉由……」

振り返ってみれば私はずっと1人で作っていた。誰かと手を組んで作品を作ったことは無い。それにこの機会を上手く利用すれば、また楽しく絵を描けるかもしれない。気付いてしまったら、魅力を感じてしまう。

「うん、いいよ。私も茉由とやってみたい」

「本当に!?やったー」

茉由と一緒に作品を作る。これが楽しくないわけがない。絶対に楽しいはずだ。喜ぶ彼女を見て私もまだ何を作るのかすら決まっていないにも関わらず心が踊っていた。

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