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ごっどぶれすゆー  作者: 宮城 英詞
防災祈願は我らにお任せ

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防災祈願は我らにお任せ その5

 夕方になると、大坂の街にもとうとう雨が降り始めた。風も強くなり、街にはコウゴウという不気味な風鳴りの音が響いている。

 もはや、台風の接近は疑う余地もないというこの状況下、俺は狭いワンルームマンションの我が家に集まった神仏、そして二人の人間が囲むテーブルの上に積まれた札束の山を絶句しながら覗き込んでいた。

「どや?ワシかて、やればできるやろ?」

「……予想以上ですね。」

 得意満面のスサノオ様に本気で言葉もない俺。

そして、それをはさんで真向かいにはこのお金をここまで運んできた千手院はやや憔悴した顔で座り込んでいた。

「……ホンマ、ワシもびっくりしたわ。こんだけの額のお金がかばんに入ってると思ったら生きた心地がせんかったで。」

 無理も無い。

つい先ほど、おどおどしながら家にやって来た千手院のカバンからこの札束が出てきた時には、形容詞抜きで俺も心臓が止まりそうになったものである。

 正直、どうなるものかと思ったが流石は強力な霊威の持ち主、俺の目の前には今、多分、今までも、そしてこれからもこんな額のお金を拝む機会などそうは無いのではないかという額の札束が、積み木のように積み上げられていた。

「……何処にあったんですか?こんなお金。」

「どこも何も……そこの疫病神に言われてお地蔵様の所に行ったら、お堂の奥にカバンごと置いてあったんや。もーそこから先は覚えてへん、無我夢中でここまで着たがな。」

「……無茶苦茶ですね。」

 俺は千手院のありえない話に思わずそう感想を述べた。

 神々と付き合って半年、偶然を装って彼らが奇跡を起こす姿を何度か見てきたが、ここまで強引なのは流石に見たことが無い。

 俺はやりすぎ感漂う奇跡を目の前に流石に命様に聞かざるを得なかった。

「……コレ、元は何のお金なんです?」

 流石に神の奇跡といえど、紙幣を勝手に作ったらそれは偽造なわけで、当然のことながらこのお金は何らかのか形で巡り巡ってここに来ているわけである。

 で、あればこのお金は……?

 渦巻く疑問。

 そして、俺の胸を駆け抜ける「嫌な予感」。

 だが、一同の視線を一身に浴びたスサノオ様は別段悪びれも無く種明かしを始めた。

「ああ、コレ?元は脱税した金。」

「脱税?」

「そう、政治家やっとる社長が税金ちょろまかして溜め込んだ金や。災厄をはらう祭りに使うにはもってこいの穢れた金やろ?」

「……その穢れた金が。何でお地蔵様のところにあるねん。」

「簡単やがな。あいつらの所に抜き打ちで査察が入るようにしたってん。ワシが耳元で『ええ隠し場所がある』って、囁いたら。あいつら『神のお告げや』言うて喜んであそこに置いていったがな。」

「……お前はいちいち人を不幸にせんと自分の霊威を示されへんのか。」

「……っていうか、それ詐欺じゃないですか!完全に。」

 酷い。

 やっていることが完全に悪魔である。

 俺たちはいたずらが成功した子供のように笑うスサノオ様の姿と、積み上げられた札束を引きつった顔で交互に眺めた。

 これだけの税金をちょろまかして溜め込むという業の深さを差し引いても、神にだまされ、裏金を隠しに来た人への同情は禁じえない。おそらく今頃はお金が忽然と消えたことに気づき、お地蔵様の前で崩れ落ちているに違いない。

「ま、どうせ表向きは無いことになってる金や。無くなったところで警察にも届けられんやろう。遠慮なく、パッと使ってしまおうや。」

 悲しいかなそれが事実なのだから、神のやることというのは残酷である。

 俺と千手院はそんな命様の言葉に、互いに困り果てた顔でテーブルの上の札束を見やった。

「……神様はああおっしゃってますけど……使って良いんですかね?」

「……百歩譲って今の話聞かんかったことにしても、これ、人間のルールやとれっきとした『落し物』やさかいなぁ。この場合は普通に警察届けた方が……。」

「……じゃぁ、お祭りはどうしましょう?」

「そうなるわなぁ、……じゃぁ、この際やし一割くらいなら……。」

 なにしろ額が額だけにとても気軽に使う気にならない俺と千手院。

 いかに神がゴーサインを出しているとはいえ、こんな額の金、使い込んだことがバレたらこちらの社会的地位が吹き飛びかねない。神の加護を信用したいところだが、何しろご覧の通り荒神のやることだ。後々のことを考えると、不安でたまらない。

 しかし、このままでは大阪を危機から救えないことも確かだし……。

「皆さん!何を言っているんですか!」

 後ろ暗い気持ちでお金に手をつけようと考え始めた俺と千手院の思考にそう言って喝を入れたのは、今まで黙って話を聞いていたお地蔵様だった。

彼はいつもの穏やかな顔で我々の動きを制すると。机の上に積まれた山のような札束に手を合わせる。

そして、自らの邪な心に押しつぶされそうになっていた我々の前で、お地蔵様は静かに言い放った。

「これは供物です。」

俺と千手院はお地蔵様の言葉に、二人同時にポン、と手を叩いた。

 その手があったか。

 確かに道に落ちていたのならいざ知らず。お地蔵様のお堂の中にあったのだから(さっきの話を聞かなかったことにすれば)これはもう立派な『お供え物』と定義することが出来る。

 であれば、お地蔵様がゴーサインを出してしまえば我々が大阪の罪業を清算するためにこのお金を全額使ってしまってもまったく問題ない。

 うん、資金調達成功。

 社長さんの業は無事払われたということでお地蔵様に何とかしてもらおう。

 俺たちは二人して頷くと、神と仏とともに札束の山に合掌した。


どんな汚れたお金でも

供えられたら仕方がない

それは賽銭、浄財と

世間様ではいうそうな。

さてそのお金で榊君

これからお祭り始めます

さてその演目は?

続きは次回のお楽しみ

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