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ごっどぶれすゆー  作者: 宮城 英詞
防災祈願は我らにお任せ

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防災祈願は我らにお任せ その4

「……なるほど、それは困りましたねぇ。」

 が、しかし、その穏やかな顔のお地蔵様は、こちらの話を聞いても、即座に解決策は出せないようだった。

さすがに神々が集団で暴れるとなると、問題は深刻であるらしい。彼はその穏やかな顔を曇らせ、腕を組んで下を向く。

「八百万の神々の怒りともなればそれはすなわち自然の怒りそのもの。衆生の罪業が神々を怒らせたとなると、私一人の力ではそう簡単に救済は難しいですね。」

「そんな……。」

 彼の一言目がそれだったので、我々もそれに落胆を禁じえなかった。だが、やはりそこはお地蔵様。何とかならないものかと我々と額をつき合わせ共にうなり声を上げる。

「……因果応報、人々の業が尊様に蓄積され、報いとなって人々に降りかかっています。ここはこの因果をどこかで断ち切らねばなりません。そうなるとこの街の人々がその業を払わない事には神々も納得されないでしょう。……私からも神々にお話はしてみますが、それくらいで収まるかどうか……。」

「滅びの日は近い!」

 なるほど、業、すなわち穢れはそう簡単に消えないという事か。

見た目は完全にアホ臭いこの状態にばっちり霊的な解釈を当てはめられ、なるほど、と頷く俺。

……が、それが解ったところであれほどの人々の罪業とはお地蔵様にとっても強敵であるらしい。

それでも説得してくれるというのはありがたいが、おそらく彼にとっても分が悪い話なのだろう。

「何かええ方法はありませんかでしょうか?お地蔵様。」

「そうですねぇ……。」

 千手院に文字通り拝まれ、考え込むお地蔵様。それを覗き込む我々に対して、決して衆生見捨てない彼は何とか知恵をひねり出す。

「例えば、我々が涙を流して。皆様に危機を知らせるとか……。」

「確かに正攻法やけど……失礼ながらそれで避難する人っていまどきおるんですかのぅ。」

「逆に人が集まっちゃいそうですね。」

 なんともはや。仏法の力をもってしてもなかなか難しい。

 俺は神々の怒りの恐ろしさというものを今更のように実感させられ、千手院とともにうなり声を上げた。

 が、お地蔵様はそんな俺の肩を優しく叩く。彼は慈愛と厳しさを同居させたような表情を俺に向け、諭すように俺に語りかけた。

「やはり、衆生が業を積み重ねて招いた神々の怒りは、我らではなく人間であるあなたが代表して払うべきです。」

「俺が?」

「……思い起こしてみなさい。あなたが今までやってきた仕事、あなたが今まで経験した苦難はいつも人々の喜びに繋がってきたはずです。その経験を生かして今あなたができることを考えましょう。」

「できること……?」

「そうです。人々を救いたいとはるばるあなたはここにいらっしゃった。そういうその心にみ仏は宿ります。そんなあなたにしかできない事が、必ずあるはずです。」

「……はぁ。」

 まさかのご指名に俺は困り果てた顔で周囲を見渡した。

 確かに、半ばヤケと勢いでここまで神と人間を引き連れてやってきたのだが、よくよく考えればこんなことができる人間など確かにざらにはいまい。

……とはいえ、これ以上の事が人間である俺にできようはずもない。コレが駄目ならあとは安全圏に逃げ、忘れるためヤケ酒でも飲むくらいしか……。

――。

酒?

と、そこまで考えたところで、俺はふと考えた。

やり場のないフラストレーションを溜め込んでいるのは、よくよく考えれば神々も、我々も同じである。ただ違うのは、その怒りが災厄という形で現れてしまうだけのことだ。そう、目の前にいるスサノオさまのように――。

そして、彼とはともに酒を酌み交わすことで、今は心強い味方になっている。

何百年、何千年とあの気ままな神々と付き合ってきた我々は、今まで幾度となくこういう状況に陥ってきたのではないのだろうか?

その時、人間たちはどうやって――。

――。

 そして、俺は一つの結論にたどり着き、ぽん、と手を打った。

 そして、唯一人間ができるその解決法をゆっくりと口にする。

「……祭りですよ。」

「祭りやて?」

「そう、お祭りですよ!お祭りをしましょう!」

 俺の言葉に千手院は顔をしかめた。一人うれしそうに頷く俺に頭でもおかしくなったのかといわんばかりにしげしげと顔を覗き込む。

「こないな時に浮かれ騒いでどないすんねんな?お前、大阪の危機やってさっき自分で言うとったがな。」

「違うんですよ!神々をお祭りする、つまり楽しませて神々の憂さを晴らすんですよ。古代から、人間はみんなこうやって神様を慰めてきたんです。今人間ができることといえばこれ以上のことはありませんよ!」

「……要するに、接待して、酔わせて、ウヤムヤにしてしまおうっちゅうことかいな?」

「まぁ、似たようなものですね。スサノオ様も言っていましたが嫌なことは飲んで、騒いで忘れるのが一番!神様だってそれは同じなんです。ただ、怒ったときの影響が少しばかり大きいだけで。」

「……確かに。ワシも根本的なこと忘れとったな。天神はともかく、他の神はこの状況に便乗してる奴も多い。そいつらに心をこめた祭りで、憂さを晴らしてもらえば連中は天罰を起こす気すら失せるやろう。そうなったら奴かて、そうは天罰がどうのこうのと言えんはずや。」

「……「神々を祭る」古代の原点に戻った儀式ですな。なるほど、確かに、ほかに手段はありますまい。」

 お地蔵様とスサノオ様が大きく頷く姿に、千手院は「ハァ。」とやや遅れて頷いた。そして、少し困ったような顔でこちらを覗き込む。

「……ホンマにそんなことでどうにかなるんかいな……。それに……。」

「何です?」

「その祭りの費用は誰が出すねん。」

「……あう。」

 さすがにそこまでは考えていなかった。

 俺は千手院の質問に言葉を失う。

「……確かに一柱や二柱の神やったらどうにかなるかもしらへんけど、今回はなにしろ数が多い。大阪中の八百万の神を接待するとなったら。それこそいくらかかるかわかったもんやないで?」

 ごもっとも。

 確かに、千手院の言う通り今回は何しろ数が多い。体裁を整えるためにはある程度お供え物は必要だがそうなると莫大な予算が必要となってくることは疑いようがない。

 当然、日ごろ神々のご利益を背景にスクラッチくじやパチンコで収入を得ている俺にそのような予算があるわけもなく――。

「……千手院さん。どうにかなりません?」

「……お前、地方公務員の給料ってどれくらいのもんか知っとって言うとるんか?」

「良いじゃないですか。どうせ市民の血税なんだし。この際パッと使っちゃいましょうよ。」

「税金から給料もろたらアカンのかい!そないな事言われても無いもんは無いわい!」

 ううむ、振り出しか。

参った。

そして、再びしかめっ面に戻り、腕を組んで考え込む俺。

こうしている間にも、台風は刻々と関西に接近しつつあり、神々は大地震の打ち合わせまで始めている。

もはや神々の加護も薄く、今からパチンコ屋に駆け込んだところで収入が得られるとはとても思えない。

かといって地道にバイトでもしてお金を稼いでいては間に合わないし――。

こうなるとやはり「祭り」で解決というのは無理なのだろうか――。

……。

「よっしゃ、わしに任せとけ!」

――が、そんな俺の背後で大きく自分の胸を叩いて見せたのは意外にもスサノオ様だった。今まで俺の背後で話を聞いていた彼は大きく頷くと、俺の肩を力強く叩く。

「なぁに、金なんぞ、心意気一つでどうにでもなるがな。その件。ワシが何とかしたろ。」

「へ?」

 言いつつ満面の笑みを見せるスサノオ様、その姿に俺と千手院は思わず顔を見合わせた。

「……なんとかって……スサノオ様が?」

「……疫病神が金を工面できるんかいな。」

「ワシかって穢れとっても神の端くれや。こう見えても霊威は他の八百万の神の中でも桁外れに高いねんで?心から災厄を防ぎたいという願いがあるなら、そらナンボでも協力したるがな。」

「……まぁ、お前、元凶やしなぁ。」

 そう補足する千手院をスサノオは無言でぶん殴る。

 そして呆気にとられる我々を前に彼は地面に倒れた千手院を踏みつけながら。無邪気な笑みを向けた。

「ま、些細なことは忘れて、榊君とお地蔵さんは祭りの準備に取り掛かってんか。金はこのワシが何とかしたるさかい、大船に乗った気でドーン!と派手に祭りをやろうやないか!」

 ――ホントに任せて大丈夫なんだろうか。

 何しろお金に縁のなさそうなスサノオ様にモーレツに不安を感じる俺。

 俺がお地蔵様にアイコンタクトでお伺いを立てると、彼はにこやかな顔でそれに答えた。

 ――他に方法はないでしょう。

 そう目配せを返すお地蔵様に。俺は一抹の不安を感じつつ、彼に金策をお願いすることにした。


神の怒りを収めるためにゃ、

お祭りやるのが一番いい。

確かに理屈はわかるけど

先立つものはどうするの?

スサノオ様が何とかすると

ニッコリ笑って言うけれど

お金はないし、時間もない

疫病神のご利益で

一体お金は出てくるの?

不安いっぱいこれからどうなる?

次回をどうかお待ちあれ

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