防災祈願は我らにお任せ その3
「……地蔵菩薩って、あのお地蔵様ですか?」
数分後、これから案内される予定の仏様の名を聞き俺は、すっとんきょう名声を上げていた。
お地蔵様といえばそう、あの日本中どこでもその姿を拝むことが出来るという。ある種とてつもなくポピュラーな仏様である。
何か道端で苔むしているイメージの強いその仏様の名に、俺はあからさまに大丈夫かな?という顔をしたが、千手院はそんな俺の態度を一喝した。
「アホ!お地蔵様っちゅのは、仏様になる力を持ちながら、あえて地獄に身を落とし、迷える衆生を救ってくださるというありがたい菩薩様なんや。そんな事言うとったら罰が当たるで!」
「……はぁ、すみません。」
「穢れた衆生を救う道を考えてくださる仏さん言うたら、他にはないやろ。あんたらも道端で会ったら忘れんと手を合わせや。」
「……はい。」
なるほど。考えてみれば日本全国どこにでもその姿を見かけるその仏様は、逆を言えば霊威という点では明石たち稲荷明神に匹敵するに違いない。お手軽な分、支持基盤はあのお不動さん以上と思って良いだろう。
そして、そのお地蔵様は市役所から少し歩いた場所の裏路地にいらっしゃった。
千手院がその小さな小屋に向かってお経を唱えると中から、そのお地蔵様が顔を出し、手を合わせたままでこちらに丁寧にお辞儀する。
――その姿に、俺は思わず言葉を失った。
隣の二柱の神も同様であったらしい。俺たちは千手院の後ろで互いに目を丸くして顔を見合わせていた。
ぽかんと口を開けた俺たちの姿に千手院はしばらくしてようやく気づいたらしい。彼はそんな俺たちに手を合わせたままの姿勢で後ろを振り向き、訝しげにこちらに目を向ける。
「どないしてん?」
「……いや、まともやなぁ、と思って。」
「うん、千手院さんの紹介する仏様の事だからてっきり柄シャツとかパンチパーマとかしてると思ったんですが……。」
そう、目の前に現れた神様……じゃなかった菩薩様は。そのままずばり、小さなお坊さんの姿をし、穏やかな顔をしたお姿をされていた。
今まで千手院経由で会った仏様とくればヤクザ顔負けのいかつい顔した仏様ばかりだったので拍子抜けもいいところである。
「……お前ら、仏教を力いっぱい誤解しとるやろ。」
呆気にとられる俺たちに、実に心外そうな千手院。
が、お地蔵様はそれにも静かな笑みをこちらに向ける。背後に後光すら見えるその姿はここのところ変な神様しか見ていなかった俺にとってはむしろ新鮮であった。
「まぁ、み仏の教えを体現するのも我々の務めです。このような誤解を生むのも我々の功徳が足らないからでしょう。」
ううむ。心も広い。
俺たちは、お地蔵様の言葉に自分の立場も忘れ、思わず彼に手を合わせていた。
坊主が呼び出す仏さまは
ありがた町のお地蔵さん
さて役者が揃った上で
これから作戦会議の開始
皆さま次回をお楽しみ




