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ごっどぶれすゆー  作者: 宮城 英詞
天神様の嫌いなお祭り

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天神様の嫌いなお祭り その9



夕刻、俺は単身、青ざめた顔で事務所に帰って来ていた。

事の顛末を話すと、事務所に居た神々はさすがに驚いて顔を見合わせる。

「ほな、ミイラ取りがミイラになってもうたんかいな?」

「……はい。」

 新聞から目を離して問う社長に力なく答える俺。それに隣の席の南さんは周囲に明石さんが居ない事を確認し、目をぱちくりさせた。

「じゃぁ、明石さんはどこに?」

「天罰を起こすためにやることがあるって、どこかに行っちゃいました。……止める間もなく……。」

 よもや、話し合いに行った福の神がそのままの勢いで怒れる神となるとは思わなかった。

しかも、原因がネット上の掲示板が荒れて被害を受けた腹いせとは、やっていることがオカルトなのだかハイテクなのだか理解に苦しむ。もはや百パーセント私怨丸出しと開き直る彼女を説得する口実なども俺に思いつくはずもなく、天神様と意気投合してどこかへ行く彼女を、結局俺は呆然と見送ることしか出来なかったのである。

 俺がその事を説明すると社長と南さん、それに先祖霊様はほぅ、と声を上げ、互いに腕を組んで眉をしかめた。

エライことになった。

力なく俺が机に倒れこむと事務所は沈黙に包まれ、この状況に唯一ノーリアクションな与根倉さんが黙々とスマホのキーを叩く音が響く。非常事態に対してなにも答えの出ないという重たい空気が、少なくとも俺の周囲には重く垂れ込めていた。

「……しかし、さすがは天神さんや。まんまと明石を取り込んでしもうたか。流石は元貴族、朴訥な天津神を取り込むなんぞ、わけはないっちゅうことか。」

「あの神様、もともと怨霊ですから一旦機嫌損ねると手段を選ばないですねぇ。この調子だと、もう幾柱かの神様も抱え込まれてるのかも……。」

「……ふむ、そうやな。榊君、ちょっとテレビつけてみ。」

「……ハイ。」

 社長にそう言われ、何のことかわからないまま俺は手元のリモコンでテレビのスイッチを入れる。

そして俺は、そこに映し出されたお天気お姉さんの言葉に思わず耳を疑った。

『突如発声した超大型台風は勢力を保ったまま、ゆっくりと北上し続け、明後日には関西圏にも……。』

 うそぉん!

 そう、映し出されたテレビのニュースで流されていたのは、観測史上最大規模の台風の接近!

 衛星写真で映し出された特徴的な雲の形と、その真ん中にくっきりと映し出された台風の目に俺は思わず手にしたリモコンを取り落としてしまった。

「ああ、やっぱり。」

「あそこには天御中主神あめのみなかぬしのかみさんも祭られてるし、風災害言うたら、天神さんの得意技やからなぁ。」

 その内容に、お茶をすすりながらのんきに声を上げる南さんと社長。

俺はそれに本気で気が遠くなりそうになった。

「それにしても、ワシらの霊威を跳ね返してしまうとは、ねっとのSNSいうのは恐ろしく穢れとるんやなぁ。まぁ、あの辺りは明石の領分やったさかい、怒るのも無理はないわ。」

「いくら人の意志が集まっているとはいえ、普通に神の力に対抗するって、相当ですよねぇ。ひょっとすると、ちょっとした厄神が宿ってるかもしれないですよ。」

 考えたくもない話だ。

 俺は神々の言葉に頭を机に叩きつけた。

 コレだけ神を動かすということは確かに天神様や南さんの言うとおり霊的にネット上には何かあるのかもしれない。となると、見た目通り単なる腹いせというこの状況でもかなりたちが悪いのに霊的な何らかの解決策を見出さなければ事態が解決しないとあれば、事はますます簡単に解決はしない可能性がある。

 俺は押し寄せる危機感に頭をかきむしり、泣きそうな顔で社長に助けを求めた。

「……どうにかならないんですか?」

「そうは言うても、天罰かてうちら神々の大切な仕事やさかいなぁ。今は豊か過ぎて気付かんもんやけど、人間、貧乏や危機に陥ったときに、始めて穢れた心を改め、助け合おうと言う心が起きるもんもおるやろ。そうすることで、人同士が団結し、助け合ってくれればワシら土地神もうれしいし……。第一、人間かってそう無尽蔵に栄えて増えても自然を破壊して自滅するだけやしなぁ。」

 ……いや、俺相手にそんなスケールのでかい話をされても。

 いきなり害虫のような言われようをされて、返す言葉もない俺。

 だが、それに南さんはあくまであっけらかんとお茶をすする。

「まぁ、風災害くらいなら、毎年のことですし、たまにはいい薬じゃないですか?」

「南さんまで、そんなご無体な。」

当然と言えば当然かもしれないが、文字通り彼ら神々には他人事に過ぎないらしい。

俺はそれに、きりきりと胃が痛み出すのを感じ始めていた。

神らしい感情表現といえばそうなのだろうが、こんなもの人間にとっては迷惑極まりない。だが、自分でも言ったとおりだが「祟りで台風がやってくる」などと言う婉曲的なメッセージにネットの住人たちが反応するはずもなく、また、一夜にして彼らを改心させるなど、事実上不可能な事は人間である俺には痛いほどよくわかる。

 すなわち、災害は回避不能。

 俺はもう何度目かになる問答を頭の中で反芻し、人間の原罪の重さに押しつぶされそうな気分になった。


ミイラ取りがミイラになって

大風台風やってきた。

天罰も神の仕事というけれど

人からしたらたまらない。

他の神様どうするの?

続きは次回のお楽しみ



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