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ごっどぶれすゆー  作者: 宮城 英詞
天神様の嫌いなお祭り

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天神様の嫌いなお祭りその6

「……なんやコレ?掲示板かいな。みんな変わった名前やけど?」

「SNSですよ。みんなが、ハンドルネームで好き勝手書いているんです。」

「ふ~ん。楽しそうやん。どれどれ……。」

 ――。

 ……うわ。

 明石さんの後ろからそのサイトを見ていた俺は数秒と経たずそのスレッド内で起きている状況が理解でき、その惨状に顔をゆがめた。

それは、書かれている内容が全てが一つの、それも険悪な方向のベクトルを示した、いわゆる「炎上状態」であったのである。

内容は簡単、かつ簡潔。

全てがある特定の人物への罵詈雑言、誹謗中傷で埋め尽くされていると言う代物で、よく公衆便所や何やかやにある落書きがそのままサイト化した状態だと思えばいい。

言ってしまえば、こんな事SNSでは日常茶飯事だが、ここの不味い所は、誹謗されている張本人が感情的になって反論を行い、それを面白がる連中がさらにその張本人を罵り、挑発するという悪循環が成立している事だった。

面白がった無関係な人間がさらに挑発的な書き込みを行い、ものすごい勢いであることないこと、誹謗中傷やからかいの文章、果てはイラストまでもが次々と貼り付けられていく。こういう状態をネット社会では「お祭り状態」と言うのである。

……当然のことながらコレは、我らが八百万の神々が好む祭りとは全く違う種類の祭りである。

考えてみれば当然のことながら、経験の浅い明石さんはこの状況が理解できないらしかった。

「……なんやコレ?えらい勢いで悪口書かれてるけど……。」

「コレは、この人を吊るしているんですよ。」

「『吊るす』?」

「……吊るし上げですね。気に入らない人の悪口を多人数で語り合うんです。」

「ふ~ん……そんな悪いことしてるとは思わへんけどなぁ。何でこの人言い返さへんの?」

「いや、それが向こうの狙いなんですよ。……ほら、挑発されて言い返したら揚げ足取られて、馬鹿にされて……。」

「……うわ、さらに酷くなっとる。しかもコレ、面白がって関係ない人が集まってるみたいやん。」

「そうなんですよ。……ホラ、もうここまで来るとこの人、完全に我を見失っていますよ。見てください、言ってることがもう、無茶苦茶。」

「……で、それをさらに馬鹿にされるわけや。アホやなぁ!コイツ。」

 ばきぃ!

 ……あ。

 正面で突如天神様が扇子をへし折る姿に、俺と明石さんはようやく全てを察することが出来た。

どうやらここで、つるし上げられ手いるのは目の前に居る天神様、その人……いや、その神であるらしい。

多少ちゃらんぽらんな人間なら笑ってすごせる話だが、天神様のような謹厳実直なインテリには立ち上がれないほどのダメージらしい。

気が付くと彼は俺たちの目の前で、目に涙すら浮かべ、わなわなと震えていた。

「……あてはな、乱れた言葉を正して、美しい日本語について語ろうと頑張ってたんや。それがなんや!注意したら逆に言い返すばかりか、この悪口、落書き、読んだらええのんか、みたらええのんか分からん文字の羅列!稚拙な切り貼りした写真!日の本の文化を守って千猶予年。あてはこんな酷いもん見たことおまへん!」

……どうやら絵文字もアスキーアートも気に入らないらしく、もはやそれを文化として認めるような気はさらさらないらしい。

哀れ。正しい学問と美しい日本文化について理解を広めようとした天神様はネット上で電波な人物としてつるし上げられ、今や皮肉な事にネット上で「神」とあだ名されて誹謗中傷の的となっている。

彼は俺の目の前で、さらに増えた中傷の書き込みに、砕け散った扇子を憎々しげに自分のノートパソコンに投げつけていた。

「どや、わかったやろ?ネットなんかあったら、人間は何するかわかったもんや無い。こんなもん文化として定着したら、日の本はえらい国になってしまうわ!」

 ……。

 ……どうやら実体験に基づき、半分私怨で祟っているらしい。

 俺と明石さんは天神様の言葉に状況をようやく把握し、互いに顔を見合わせて顔をしかめた。

 この場合、誤解ではないところが実に厄介だ。彼は無知ゆえの誤解ではなく、ネットを使いこなしその暗部に触れた結果怒っている。

 当然原因はネット社会の交渉術に不慣れなのが原因なのだが、一体どうやったら学問の神にそれを機嫌を損ねずに説得できるのか、非常に難しい話だった。

 互いに、気まずい顔で見つめあう俺と明石さんだったが、先に口を開いたのは明石さんだった。

「……まぁ、気持ちは分かるけど。それで携帯やテレビなんかの電化製品まで祟るのはやりすぎとちゃう?悪いのは道具とちごうて人の心や。道具を禁じたところで、人の心の荒廃は止められやせんで?」

先ほどの事もあり、ばつが悪そうに彼女は天神様を諭したが、天神様はそれにふん、と鼻を鳴らした。そして、再びこちらを睨み返すと彼は心外そうな顔で意外な言葉を返す。

「電化製品を祟るやて?……またとんだ言いがかりをつけられたもんや。残念やけど、それはあての仕業やありまへんえ。」

「はぁ?」

 さすがにこれは予想外だった。

俺と明石さんはその言葉に一瞬ここに来た目的を見失い、再び顔を見合わせ首をかしげる。それに天神様は追い討ちをかけるように言葉を付け加えた。

「そら確かに、プロバイダやスマホを祟ってたのはあてでっせ?せやけど、なんでそれで、テレビやスマホまで祟らなあきまへんの?」

 ……よく考えてみれば、確かにそれは一理ある。

 最近無茶な事を言う神様ばかり相手にしていたから感覚が狂っていたが、以外に祟る対象は考えているらしい。

 ……いや、まぁ、ネットを祟ると言う行為は、さておいてと言う話だが。

しかし、ここまであからさまに自分の犯行を認めている人間が、もう一つの犯行に対してここまで白を切りとおす理由を俺も、明石さんも見つけることはできなかった。



ネットで叩かれ悔しくて

怒って祟る天神様の

言うこと確かにそうだけど

全部が全部そうじゃない?

一体何が起こってる?

続きは次回のお楽しみ


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