天神様の嫌いなお祭りその3
一時間後、俺は電車に乗って大阪市内のビジネス街にやってきていた。
聞けばこの近くに、容疑者、天神様の大きな御社があると言う。
俺は、今回の騒動の原因を突き止めるべく、明石さんとともにその神様に話を聞くためにその神社に向かっていた。
前を歩く明石さんの顔が険しいのは、おそらく残暑が厳しいばかりではないのだろう。俺は彼女のあとを汗を拭きながら歩きつつ、今から会うべき神様について尋ねてみた。
「天神様って、菅原道真公のことですよね?確か、学問の神さま。」
正直、この仕事を始めるまでは知りもしなかったが、さすがに半年もこの仕事をしていればよく耳にする名前だった。俺の記憶が正しければ、その昔、権力争いに敗れ、流罪にされた貴族で、死後祟り、災厄を起こしたとして人々に恐れられ、祀られて神となった人物。
今まで電気街で仕事をしていたせいか顔を合わせる機会は全く無かったが、確か生前文才があったことから学問の神様として信仰を集めている高名な神様であった。
「うん、やっぱり学問の神様ちゅうことで、霊威も相当なもんやねんけどな。元が祟り神やったせいか、それとも人間やったせいかは知らんけど、なんかうちらみたいな天津神とはちょっとノリが違うねんなぁ。」
「……ノリですか。」
「そう、確かに頭はええねんけど、まぁ、悪く言うたら融通のきかんところがあってね。特にうちらが売ってるような商品にケチつけることが多いんよ。テレビが頭を悪くするとか、ゲームすると成績が落ちるとか……。」
「……アレって、天神様が祟ってたんですか。」
そう言えば子供の頃、そんな言葉を聞いた記憶がある。
ウチの親も、学校の先生も、俺がテレビを見たりゲームをしたりするとそんな事を言って俺たちから楽しみを取り上げたものだ。
確かに、学問の神様の仕事であれば、まぁ、納得の行く話である。
「で、その延長でインターネットですか。」
「……多分ね、そういえば何年か前はパソコンを使う人間の事をボロクソ言うとったわ。時代の流れでIT化が無視でけへんようになったから、最近は大人しくしてると思とったんやけどなぁ。」
なるほど、彼女たちにとっては随分と苦手な相手であるらしい。
俺は、明石さんの険しい表情の理由が理解できた気がして、同じく険しい顔で天を見上げた。
もはやこれは神同士の見解の相違と言っても過言ではあるまい。
ざっくばらんに仕事をしている彼女にとっては、口やかましい教師か、PTAの役員のような存在なのだろう。
正直俺も、彼と気が合いそうな気がこれっぽっちもしない。
俺は彼女の話を聞いて、のこのこ理由も聞かずついて来た事を後悔した。
「……でも、インターネットはともかく、天神様がスマホやテレビまで祟るんですか?なんだか筋違いな気がしないでもないですけど?」
「さあなぁ……?他所の神さんの考えることなんでウチにはわからんわ。だからこうやってはるばる話を聞きに来てるんやないの。」
「……それもそうですね。」
毎度の事ながら、今回も厄介な仕事になりそうだ。
明石さんの言葉に頷くと、俺は二人して溜息をつき、そして天神様の御社へと向かった。
テレビで頭が悪くなる?
ゲームで頭が悪くなる?
天神様は言ってたけれど
インターネットも祟るのか?
聞いてみなくちゃわからない。
さて天満軍はどんなとこ?
続きは次回のお楽しみ




