【6】目覚めるとジュラエル王国
キラキラ。
◆
キラキラ。
◆
「きらきらさん、たすけてくれるの?」
◆
「……んあ?」
エラはぱちくりと、目を瞬いた。
何度も何度も瞬いて、それから、ゆっくりと、周囲を見た。
木造の建物……にいるようだ。
「……」
夢でも見てたんだろうか。そう思った直後――「ママ!」と、ビルの元気な声が飛び込んできた。
「ビル?」
「ママ、ママ、おねんねぇおわったんだね!」
どうやら自分はベッドに寝ているらしい。そしてビルが自分を覗き込んでいる。そこまで理解して、エラは体を起こした。
「ビル。ここどこだ?」
「ジュラエル王国ですよ」
「は?」
聞こえてきた、すこし固い祖国語に、エラは首を動かした。そこで気が付いたが、部屋の入口であるドアは開けっ放しになっており、そこに一人の男が立っていた。
やたらキラキラして目に痛い男だった。
髪も目も輝くようなピンク色で、まるで人間ではないようだ。顔の造形もエラが今まで見た中で一番美しい人間の造形をしており、エラは一瞬、自分は「ここはやっぱ天国か?」と思った。
だが、先ほどこの男はジュラエル王国、と口にした。
「……ここが? あの? 精霊の国? マジ?」
精霊に愛された国、ジュラエル王国。
或いは、宝石の国とも言われる。
それはエラがビルを連れて逃げようとしていた隣国の名前だ。
「その通りです」
エラの荒い口調を特に気にした風もなく、男は頷いた。
短い言葉であまり違和感はないが、やはり、それは祖国の言葉であった。
ビルはエラのベッドによじ登り、エラの腹部に抱きつきながら、補足するように言い出した。
「あのねあのね、あひむ様とね、いっしょのね、キラキラさんがね、たすけてくれたんだよっ」
「あひむ? きらきら?」
どっちが男をさしているか分からない。
(名前からして、恐らくアヒムがこの男の名前……だろうが……ならキラキラは? この男がやったらキラキラしている事言ってんのか?)
そんな事を考えていると、ズキリと頭が傷んだ。額に手を当てると、ビルは慌てたような声で「ママいたい? だーじょぶ? いたい?」と不安そうな顔をした。
「無理をしないほうが良いでしょう。体を横にした方が楽でしょうから」
男はそう言いながら近づいてきて、エラをベッドに寝かせた。
男が祖国語を話しているから、余計に、本当にここが隣国――ジュラエル王国なのかと、疑問を抱いてしまう。
エラは呼吸をしながら、やたらとピンク色をした男を見上げて問いかけた。
「マジに、ここ、ジュラエル王国なわけ?」
「ああ。君と君の息子は、川岸に流れ着いていたのを、我々が見つけて保護しました」
……男の言葉が本当であれば、どうやらエラは母の所に行くことはできなかったらしい。
「ざん、ねん、だ……」