第一話「ようこそ現実(こちら)の世界へ」
ゲームのシナリオに従わなくて良くなった元村人CPUは、これからは自由な日々を過ごせるのだが…
「で、俺は何をすれば良いんだ?」
彼はまだこの世界にもシナリオがあるのではないかと思っている。
「ん?待てよ?現実世界ということは、ゲームプレイヤー…よは、ゲームの操作をしている人間がいる世界だってことだよな?」
彼はようやく理解した。
「よし!シナリオに従わなくてよくなったと分かった今!夢に見ていたスローライフを送るぞー!」
ようやく彼の脳の整理が終わった。
「服は?着てる。髪は?生えてる。アソコは?立派な男だ…。なんか安心した」
彼の転生した姿は半袖短パンの薄い服を着ている。
「朝か〜。よく見たら、すごく洋風な部屋だな〜。白くてお洒落な部屋だ〜」
ゲーム内の村人の家は、あたりの家との違いはなく、プレイヤーが訪れる建物以外は、内装も外観も全く同じなので、新しい景色に、彼は見惚れてしまった。
「とりあえず起きてこのベッド部屋から出よう」
彼は起き上がり、部屋のドアを開けて、リビングに出た。
「綺麗なリビングだな〜。ずいぶんと平たい家だな〜」
元のゲームの世界にはなかったのか。マンションというものを知らないようだ。
「ていうか、部屋のカーテン全部閉まってんじゃん!開けとけよ〜。まぁ家主は俺なんだろうけど」
そう言うと、彼はカーテンを「シャ!」と思いっきり開いた。
「なんだ…これ…?」
彼は目の前の光景に驚いた。
「縦に長い建物がたくさん、鉄の塊が動いてる!」
ビルや車のことだ。
「細長い鉄の塊が何本も走ってる!」
彼が転生した先は東京だった。
「ぐぅぅぅ」
「あっ!お腹減ったな〜」
彼は空腹状態だった。しかしここで新たな問題が発生する。
「この世界の通貨は?てか、俺持ってる?」
元のゲームにも通貨という概念はあったらしく、買い物の仕方には問題ないようだ。
「見渡せば…あった!」
机の上に小銭とお札が置いてあった。しかし…
「なんでこんな沢山の種類の金があるんだ?あとこの紙はなんだ?」
金貨・銀貨・銅貨しかなかった世界にいたものには理解できないみたいだ…。
「わからん!今の貯蓄いくらだよ〜!」
この世界の細かすぎる仕組みに呆れてしまった。
「銀行預金残高20081106円です」
いきなりテレビ横の機械が喋り出した。
「え?何?なになになに!だれだれだれ?」
「銀行預金残高20081106円です」
「ニシェンハチマンセンヒャクロクエン?いや!わからんて!どのくらいすごいのか」
この家の家主の貯蓄額は半端なかった。小金持ち…いや、大金持ちだった。
「とにかく、俺はお腹が空いた!」
そう言うと、彼はドアの方へ向かい外へ出た。
「うわぁぁ〜綺麗な街だな〜」
ドアを開けた先は最先端技術が垣間見える街並みが広がっていた。そんな光景に見惚れていると…
「あら?新人君、今日は朝早いね」
そう声をかけてきたのは、隣に住む若い女の人だった。
「ん?よく見たら〜…」
お隣さんは不思議そうにこちらを見ている。
「え〜と〜…あの〜」
彼は突然話しかけられたことに驚いてしまった。
「誰!?」第2話へ続く