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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

キミのお陰で、私の世界は色付いた。

作者: byakuya

これから話す物語は、私にとってお気に入りだ。私が好きになった子は、私のことを好きだったそうだ。彼に会いたい。付き合いたい。そんな夢は、もう叶わない。だから代わりに私は、キミが遺してくれた言葉を大切にするね。


私。地味な私。何の取り柄もない私。こんな私は、ある人に恋をしている。それは、クラスでNo.1美男子、大川裕翔だ。名前もそうだが、顔立ちが異国の王子様のように美しい。でも、彼には秘密がある。誰にも、知られてはいけない事。でもね、私は知っている。それはね…


一年前。雨が降った梅雨の日だった。私は、雨音を聞きながら読む小説が好きだ。その日もいつものようにそうしていたんだ。段々と幸せになってきたな〜、というところだった。大川裕翔君に呼び出された。待ち合わせの中庭に行ってみた。彼は、もう、そこにいた。

「よう!突然呼び出してすまん。」

「え、あぁ、だ、大丈夫です?」

男の子と話すことは、全く無いから緊張して敬語にはなるし、語尾は疑問形になるし。うぅ、緊張する…。

「そう?良かった。あのさ、今から俺が言う事、聞いてくれる?」

「あ、はいっ!も、もちろんです。」

「あのさ、姫川愛莉さん!お、俺と付き合ってくれませんか!?」

え、えぇぇぇ!う、うそでしょー!?もう、頭はパニック状態。え、これ夢?試しにほっぺたをつねってみるとものすんごく痛かった。夢じゃ、ないんだ!しかもクラスでNo.1美男子から告白!?なんの取り柄も無いわたしに!?

「な、何で私に?」

「ずぅーっと、キミの事が、好きだったんです!優しいところとか!色々!」

嬉しい。こんなに良いこと、人生で初めてだ。

「はい!」

こうして、私と裕翔君との交際は始まった。


半年前だった。

また、半年前のように中庭に呼び出された。今度は、何?、と思って身構えていた。何だろう?胸がもやもやする。そのモヤモヤは、当たっていたんだ。

「愛莉。命の期限って分かる?」

「分かんない。」

「だよな。でもな、俺には分かるんだ。俺は、半年後に死ぬ。」

半年後に、裕翔が死ぬ?

「嘘だよね?」

「嘘じゃない。」

最初は、半信半疑だった。でも、裕翔のその瞳は、真っ直ぐで現実を呑もうとする、もう決めたという瞳だった。青い、瞳が少し揺らいでいるようにも見て取れた。そこで、私は決心した。彼を救う、と。逃れられないかもしれない。でも、私は彼を救いたい。たとえ、自分が犠牲になったっても良い。彼を救えるなら万々歳だ。逃れられない現実を逃れれる現実に変えてやる!そう、決心した。


そして、今。裕翔には、なんにも変化は見て取れない。間違いだったんじゃないのか。という思いが強く心の中を埋めいている。もし、裕翔が、明日死ぬかもしれない。それは、嫌だ。今のうちに裕翔とやりたいことをやっておきたい。まずは、線香花火で勝負したい。夢見てた、彼氏との線香花火。

「裕翔。今日の放課後、線香花火やらない?」

「おっ!良いな〜。季節外れだけど。」

こういう事は、しっかり釘さすんだな。もうすぐ、死ぬ人間には思えないほどしっかりしている。


放課後。私の家の前で、線香花火をした。

「よーい!スタート!」

パチパチパチ。いい音。そんな音に、耳を澄ませていると、裕翔が突然話しだした。

「なぁ、愛莉。線香花火って命に似てないか?」

「どうして?」

「つけはじめは、命がスタート。人生のスタート地点。途中のバチバチは、災難とか人生の様子。枝分かれしてるのは、苦渋の決断だったり、枝分かれ。ポトッて、落ちるときは人生のゴール地点。」

「なるほど。」

私がそういった直後、二人の火はポトッと落ちた。

「引き分けだね。」

「だな。」

二人で笑いあった。でも、この笑いは、もう見られなくなる。

「送っていくよ。」

「いいよ、いいよ。」

私の家から裕翔の家まで徒歩五分程度。でも、その途中に大通りがある。最後まで、一緒にいたい。もし、ここで終わって欲しくない。そう願いながら、付いていった。

「うぉ!あっ、ぶね!」

トランクが猛スピードで信号無視して走っていったのだ。危なかった…。裕翔、下手したら死んでたかも。そう、思うとゾッとした。とりあえず、第一関門突破!次は、明日だ。


翌日。

放課後まで、問題は無かった。第二関門、放課後!よ〜し!やるぞー!

「あ〜いり!帰ろうぜ〜。」

「うん。」

「よっしゃー!」

変わらない日常。良かった。


その後も、変わりは無かった。


変化が訪れたのは、一ヶ月後。

いつものように、学校に行った。でも、裕翔はいなかった。もう来ている時間なのに、いつまで経っても裕翔は来なかった。また、先生も来なかった。不思議。やっと、先生が来たのは朝のホームルームが終わって、1限目に差し掛かろうとしていた頃だった。

先生を見ると目尻に涙が浮かんでいた。

ど、どうしたんだろう?そう、思っていたら先生が、急に話しだした。

「裕翔さん。今日、車との事故で亡くなりました。」

えっ?目の前が真っ暗になった。裕翔が、死んだ?嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!これは、夢だ!そう、夢なんだ。お願い、裕翔。私をこの悪夢から現実に戻して。お願い!でも、それは叶わなかった。何度願っても彼は私を救ってくれなかった。

「命って線香花火みたいじゃない?」

あの日、彼が言ってくれた言葉が耳の奥でリピートされた。

彼が亡くなった、という思い事実から私は逃れられないだろう。


約十年後

私は、あの日から約十年たった今、医者として働いている。一人でも、命を大切にするために。

君が遺した言葉を私は大切にするね。「命って線香花火みたいじゃない?」あの頃の記憶が蘇る。ねぇ、裕翔。私は、キミのお陰で将来の夢が出来た。キミと過ごした日々。1年間、という短い期間だったけど、私は幸せだった。そこでね、一つお礼をさせて。キミのお陰で私の世界は色付いた。ありがとう。だからね、裕翔。天国で待っててね。キミとの再会を楽しみにしているね。医者としての人生を全うしたあと、私はどんなに離れていてもキミに会いに行くから。キミの事は絶対に忘れない。忘れたくない。過去になったキミとの日々。天国では、過去と未来の両方として過ごしたいね!

ありがとう。さようならー。

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