第2話『天才は魔術を作り出すために想像します!』
魔術を生み出すと決めて一週間が経った。
当然の結果なのだが、アニメで見た魔法陣をそのまま描いただけでは魔法を使うことはできなかった。
だからって俺は諦めたりなんかしない!
第二段階として、今から石を集めに行く。
しかしそれはただの石ではない。
図書館にあった石の図鑑の中に、気になるものがあった。
その石は紫色の光を放っていて、よく洞窟の中で見つかるそうだ。
稀に動物の体内から見つかることもあるらしい。
図鑑にははっきりと名前が書かれていなかったが、俺はこの石が魔力を持っていると考えている。
まぁこれは俺の勘だから、確かな理由はないんだけどな。
ってことで今は、町の外れにある洞窟に向かっているところだ。
そろそろ洞窟の入口くらい見えるはずなんだけどな……
「あ、あった。」
話には聞いていたが、想像してたより大きな洞窟だな。
「こりゃ期待できそうだな」
俺は明かりをつけ、洞窟の中へと入っていった。
* * * * *
「うわ!あっぶねぇ……」
洞窟に入ってから約二時間が経った。
今俺は洞窟探検を最高に楽しんでいる!
……と思ったか!
あっちこっち崩れるし、足を踏み外して奈落まで落ちそうになるし、マジでやべぇ。
まぁ、そろそろ洞窟の最奥に着く頃だろうし、もう少しの我慢だな。
そして歩くこと更に一時間……
「おっしゃ!やっと見つけたぜ!」
遂に石を見つけられた!と喜んだと同時に、これまでの疲れが一気に来た。
「脚がパンパンだな。でも、あとは回収して元の道を戻るだけだ。頑張れ俺!」
そして俺は紫色の光を放つ石を10個程袋に詰めた。
「よし、帰るか」
やっと帰れる、これで魔術の研究をすることができる!そう思った瞬間、足元が急に揺れ始めた。
「なんだ!地震か!?」
ただでさえここに来る途中で崩れていたのに、こんな時に限って地震か!
俺は全速力で走り始めた。
が、次の瞬間、俺は宙に浮いた。
「え」
何百年も前からある洞窟だ。
崩落するのも時間の問題だった。
俺はやはり運がよくないみたいだ。
ここまでか。
せっかくこの世界に来れて、新しい人生を始められると思ったのに。
魔術の研究だって、まだ終わってすらいないのに。
まぁ、少しでも楽しめたからいいか。
俺は目を瞑った。
* * * * *
「あれ、生きてるのか……」
しかし、あの高さから落ちたら絶対に助からないはず。
とにかく、今はどうやってここから出るかを考えるか。
明かりを無くしてしまったからどうせ何も見えないのだが、一応辺りを見回してみる。
すると、奥の方で何かが光っているのが見えた。
「とりあえず、あそこまで行ってみるか。」
俺は脚を引きずりながらゆっくりと歩いた。
一分もかからないで光源の場所まで来た。
光源は壁に埋まっていて取れそうにない。
が、その近くに文字が彫られていることに気づいた。
暗くてよく見えないため、俺は手で文字を触り、書いてある文字を読んだ。
『誰かがここまでたどり着けるよう、そこらじゅうに転移陣を設置しておきました。光に手をかざし、中へお入りください。』
なるほど、俺はこれを彫った人が設置した転移陣によってここに転移してきたのか。
……転移。
転移!?
「はぁー!!!???」
転移したってことは、魔法が使えるということ。
しかし、これまで見てきた書物には魔法という単語は一文字も出てこなかった。
どういうことなんだ。
まぁ、それもこれから分かるかもしれない。
俺は書いてある通り、光に手をかざした。
すると、辺りが白色に輝きだし、俺は光に飲み込まれた。
* * * * *
目を開くと、見たことがないほど美しい場所にいた。
日が差し、小川が流れ、草木が生えている。
「なんだ、ここは」
俺は驚いたが、戸惑いはしなかった。
なぜなら、もう、大体の検討はついているからだ。
「んじゃ、あそこに見える小屋にでも行ってみましょうかね。あれ。」
歩いてみると、さっきまで感じていた脚の痛みがない。
これも効果なのだろうか。
見た目はボロボロな小屋なのだが、窓越しに中を見てみると全く違った。
ホコリ一つ見えず、散らかってもいない。
ただそこにあるのは、机の上にある一枚の紙と、椅子に腰をかけた骸骨だけだった。
俺は息を呑み、小屋の扉を開け、机の上にあった紙を読む。
その紙には、こう書かれていた。
『何百年経ったかは分かりませんが、あなたの訪れを歓迎します。まぁ、その時にはもう私は死んでいるのでしょうが。』
ということは、あの骸骨はやはりここの主のものなのか。
『まずは、過去に何があったのかをお伝えします。
まだこの世界が十の国で分かれていた時代、アルデルカ王国の王都にて、一人の女の子が産まれました。その女の子は魔術が使え、後の魔族との大戦で大いに活躍をしまた。しかし、彼女は魔力の蓄積し過ぎで魔力暴走を起こしてしまいました。その結果、国一つを消し去り、我々の創造主である神を怒らしてしまったのです。神からの罰として、この世界から魔術に関する全てのものを消し去られました。私は偶然にもその時この異空間の中に居たので罰を受けませんでしたが、私以外の者は魔術に関する記憶を全て無くしていました。また、世界のどこに行っても、もう魔道具や魔導書などは残っていませんでした。 裏に続く→』
『私はもしかしたらと思い、みんなに魔術のことを話し、思い出させようとしました。しかし、誰もその事を信じようとはしてくれませんでした。実際に術を見せても、どうせ何かの仕掛けがあるんだと言い、信じてくれませんでした。
だからと言ってはなんですが、これを見た方に、もう一度、魔術が存在する世界をつくって頂きたいのです。魔術や魔法は人々の生活においても、必ず役に立ちます。どんな魔術を作るかはあなた次第です。人を助ける為の魔術を作っても、人を殺める為の魔術を作っても。
作り方はとても簡単です。そこの棚にある指輪を着けて、どんな魔術を作りたいかを想像すればいいのです。
長くなってしまいましたが、これで私の伝えるべきことは全て伝えました。あなたの活躍を期待しています。』
なるほど。
俺は真横にある棚を見てみる。
「確かに、指輪はあるな。」
どうしようか迷ったが、物は試し!
早速着けてみることにした。
「試しに何か魔法をつくってみるか。」
そうだな。あ、転移の魔術とかいいかもな。
想像、か。
例えば、物体Aが場所Bに一瞬で移動する感じ…で。
その瞬間、俺の中から何かが失われたような感覚がした。
「できたのか?」
試しに使ってみる。
家の前を想像しながら……
「転移」
* * * * *
おぉ、上手くいった様だな!
しかし、大昔にそんな事があったとはな。
そりゃどこにも魔術に関することが載ってない訳だよな。
「って!もう日が暮れてるじゃん!」
俺はこの後、母親と父親にこっぴどく叱られた。
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