第1話『天才は異世界でやり直します!』
目が覚めると俺は、見覚えのない部屋のベッドで寝ていた。
しかも身体が幼児化している。
状況が理解できないので、一番最近の記憶を思い起こしてみる。
「たしか俺は階段から滑って、その後は……」
思い出せない!
頭でも打って記憶を無くしたとか!?
いやでも、ここは病院には見えないな。
考えろ俺……何があったのか……!
そして俺は、一つの答えを導き出した。
「なるほど、俺死んだのか。そんで転生してどっかの家の子供にでもなったってところか。よくある異世界転生ものみたいだな。」
それなら知らない部屋で寝ていることも、幼児化していることも、階段から滑った後の記憶が無いことも、おねしょしていることにも説明がつく。
……おねしょ。
おねしょ!?
「はぁー!!!???」
大声を出した直後、ドアの向こうからドタバタという誰かの足音が聞こえた。
誰か来る。
思わず身構えてしまう。
『ドンッ!!』
「アルト!大きな声が聞こえたけどどうしたの!?大丈夫!?」
ほほぉーん。俺の名前はアルトと言うのか……いい名前だな。
それで、態度から察するに俺の母親か。
推測通りだな。
っと、今の事情を話されば。
俺は床に足を着き、土下座の体勢をとる。
「ごめんなさいお母様。僕はおねしょをしてしまった様です。本当にごめんなさい。」
どうだ!この名演技は!我ながら完璧だ!
母親は沈黙し、数秒後口を開く。
「お母様なんてどうしたの?いつも通りママでいいよ。それに、おねしょは毎回のことでしょ、大丈夫だよ。」
母親はニッコリと笑い、面白いものを見ているかのような口調でそう言った。
「ママ、ごめん。いつもありがとう。」
「いいのよ。さぁ、もう朝ごはんの支度ができてるよ。パパが待ってるから、早く着替えてごはん食べよっか。」
「うん!」
さて、着替えながらこれからの事を少し考えてみるか。
まずはこの世界のことだな。地歴や法について学ばねばな。
次に人の名前を覚えることだ。人の名前を覚えてコミュニケーションをとることで信頼を得ることができるからな。
そして、魔術や魔法などの概念がこの世界にあるかどうかだな。今まで俺が読んできた異世界ものに、魔術などの概念は必ずと言っていいほどあった。概念があるのならば会得する他ないが、もし無いのであれば、その時はまた考えよう。
こうして、これからの俺のやる事は決まった。
* * * * *
「おはようアルト。今日は朝から元気いっぱいだな。」
この人が俺の父親か。なんというか、とても優しそうだ。
「おはようパパ。大きな声出しちゃってごめんね。今日もまたおねしょしちゃって。」
今は子供の口調で喋った方がいいよな。
「ガハハ!アルト。お前10歳になってもまだおねしょって!ちゃんと成長できてるか?ガハハ!」
思ったよりうざったらしいなこの親父。
「ごめん。ちゃんとおトイレ行けるようになるね。」
「そうか!頑張れよ!ガハハ!!」
はぁ。こんな親父がいる家に転生してしまったのか。先が思いやられるな。
ため息をついていると、母親が戻ってきた。
「賑やかですね。さて、朝ごはんを頂きましょうか。」
* * * * *
「今日のごはんも美味しかったよ!いつも美味しいごはんをありがとう!ママ!」
「あらあら、そんなことを言ってくれるなんて、ママ感動しちゃう。」
ふっ。完璧だぁ。改めて自分の凄さに感服するわ。
まぁ、そんなことは置いておいて、今日やることはこの世界についての勉強だな。図書館とかあるかな。
「ママ、僕本が読みたい気分だから、図書館行ってきてもいいかな。」
「いいよ。図書館の場所は分かる?」
「忘れちゃったかも。」
「分かった。図書館まで一緒に行ってあげる。」
「ありがとう、ママ!」
* * * * *
「ここまでで大丈夫?」
「うん!教えてくれてありがとう!」
「じゃあ、ママは洗濯とかしなきゃいけないから、先帰ってるね。」
「うん!バイバイ!」
「さてと、やってやるか。まずは地理からだな。」
俺は棚にある地歴に関する書物全てに目を通し、一度で理解した。
「なるほど。この世界は三つの国に分かれていて、今俺がいる場所はアルデルカ王国の最南端にある町か。また地図のどこにも魔術や魔法という文字が無いし、歴史の本にも魔術のことについて書かれていないから、魔術の概念は無い……と考えるのが妥当か。」
魔術の概念があるならば、魔術師などを養成する機関があってもおかしくないのだが、それが全く見当たらない。それに、この図書館の隅から隅までを見ても、魔術に関する書物はなかった。
よって俺は、この世界には魔術の概念はないと判断した。
「魔術の概念がない……か。」
俺は正直、魔法とかをバンバン撃てる人生を期待していた。
「残念だ。非常に残念だ。」
俺はため息をつく。
「いや、待てよ。」
魔術の概念がない。ならば、魔術を使えるようにすればいいのでは……?
「なんて天才的な考えだ!我ながら恐ろしい!」
が、ここで一つの疑問が湧いた。
「確か、魔術や魔法を使うには魔力とかそんなもんが要るんだったよな。」
この世界に、そもそもそんなのあるのかな……
と、とりあえず!物は試しって誰かが言ってたし!後で適当に魔法陣っぽいものでも描いてみるか!
ははっ……きっと!上手くいくはず!俺は天才だ!できないことはないはず!
こうして、俺の魔術創造計画は始まったのであった。
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