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Rose Mary  作者: 水面 幸陽
3/6

二話:ウゴキ


「五番ドック……五番ドック……」



軍基地特有の薄暗い廊下でコツコツ、と硬い床に革靴の踵を打つ音が響く。先ほどの兵士から抜き取った内部地図は素人目には分かり難いもので、水仙は迷子になっていた。


「仮にも戦闘用アンドロイドなんだからこれぐらい読み取る機能があってもいいものなんだが……っと」


独り言で時間を潰している間に『五番ドック』と書かれたプレートを見つける。

日本。

彼が目指すのはそこしかなかった。


――何故俺は……


立ち止まった水仙の思考が渦を巻く。

何故自分は日本に行かなければならないのか。何故自分は生きているのか。何故自分は――


「……ふぅ」


思考を止めて、軽くため息をつく。

ドックの中には一台のエンジン付きボートが留まっていた。


「まさか……これで?」


しかし、ドックの中には警備しているはずの兵士もいないし、それどころか軍服を着た人はここに来るまで一人もいなかった。

下手に自分に抵抗しないように……とのことだったのだろうが、


「操作方法が――」


――わからん




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「――と言うことで、来週の月曜日も休みになるため学校は3連休となりますが……って人の話は最後まで聞きなさいよ」


自称、熱血女子教師である担任の声は既に遠し、3連休と聞いたクラスの生徒達は早くも休みの予定について騒ぎ出す。


「海!」「おい今6月……」

「山!」「梅雨時の山って事故多いらしいな」

「自宅……」「このニートが」


とホームルームそっちのけの男子はどんどんヒートアップしていく。


「……もういい……ホームルーム終了……」


覇気を無くした女子教師は帰りの挨拶もしないまま教室から出て行く。

と同時に静かにしていた女子もグループごとに集まって各々予定を立て始める。


「どこ行く?!」「温水プールとかどうよ?」「男子と被ってんじゃん……」


一気に騒々しさが増した教室から二人だけ、逃げ出すように扉から飛び出る。

時雨と智世だった。


「えぇ?!何で付いて来るの?」

「今から予定立てるって時にどこ行くのさ」

「い……忙しいの」


正確には巻き込まれる前に逃げようとした時雨を智世が追う形で、パタパタと二人分の上履きの音を鳴らしながら階段を下りる。

智世は自然と早足になる時雨にぴったりとくっ付きながら手を口に当ててホホホ、と笑う。


「3連休、予定も入れずにさっさと帰るところを見るとさては男だな。っとなると……やはり弓野先輩ぃぃぃ「いや別にそんなんじゃないよ」


昇降口でピタリと足を止めた時雨に智世は驚きながら少し前に足を止め、振り向く。


「え?じゃあ他の人?」

「違う。明日は大事な日なの。」

「ふーん……」


いつもより元気を無くした時雨に微妙な変化を感じとったのか、そういう所には鈍いはずの智世はあっさり引き下がる。


「……じゃあいいや。私戻るから」


そう言いながら智世はスカートの裾をヒラヒラさせながら階段を上がって行った。

姿が完全に見えなくなった所で時雨はため息をつく。


「ふぅ……」


嘘は言っていない。

智世がなんとなくでも察してくれたのはわかった時雨だが、微妙にしっくりこなかった。

それでも明日は大事な日なのだ。予定を入れるわけにはいかない。

靴を引っ掛けながら、校門に向かう。


――今日の夕飯何にしようか……あぁ、智世には悪いことしちゃったかな


寂しい帰り道を埋めるように、次々とどうでもいいことを考え出す。

梅雨明けも間近の空は水色がただ、広がっていた。







少し書き方を変えてみました。

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