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Rose Mary  作者: 水面 幸陽
2/6

一話:ハジマリ

梅雨も半ば、7月に入りかけで暑くなってくるある日の朝も水町家は始まる。


「おはよう、時雨!」

「おはようお父さん。」

「おはよー」「はよー」

「はいはい、陽と雪もおはよう」


一足先に起きて全員分の朝ごはんと小学校に入りたての双子の弁当を作るのは父親である瀬矢ではなく、長女の時雨の仕事だった。

家兼レストランで、瀬矢の職場である台所を任されているのは丁度二年前からだった。


「早く食べないと学校待ちあわないよ」

「だいじょーぶ!」「うん!」


時雨は呆れた顔をするも、陽政と雪乃はニコニコと笑いながら箸をすすめる。

瀬矢はと言えば、リビングのある一点を見つめて動かない。


「まだあいつは帰ってこないのか……」

「……うん」


瀬矢の妻、また時雨達の母である夕陽の仏壇の一角に手紙の入った封筒と、2本の箸が置かれていた。

彼がここにいた印、戻ってくるための証。

世界でも開発が進んでいるが実際に表立って披露されることはない人型アンドロイド。

水仙がここにいたと言う。その証。


「まぁそのうち帰ってくるだろ。」

「……うん……」


瀬矢はこの話はこれきりだと言わんばかりに目玉焼きにフォークをつき立てた。

時雨も目を一度だけ閉じて、開ける。それだけでいつもの表情に戻った。


「さぁ!急ぐよ!」


水町家は今日もいつもどおりに始まった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




その頃アメリカ――

一人の軍服を着た兵士が電話に向かって頭を下げていた


《おい!『彼』はまだ見つからないのか!》

「すいません!大佐。ですがレーダーにも反応しないほど遠くに行かれまして……」

《言い訳はいい!早く『彼』を連れ戻さないと我が国は大変なことになる!》

「は?……と言いますと…・・・」

《日本の兵器を秘密裏に回収していただなんてバレたら日本にどんなものを送り込まれるか…・・・お前も見ただろう。あのアンドロイドは核以上だ。『彼』が本気なら今頃アメリカなんぞ地球から消え去っている》


電話を持つ手が震える。


「どうかしたのか?」


――に…日本語…・・・?

カチリ……と音が鳴る。そして背中に何か棒のようなものを押し当てられた感触。


「手を上げ……あぁそうか、ここはアメリカだったな。ホールド……アップ?だっけな?」


兵士は直感した。この男こそが『彼』であることを。

すぐさま受話器を机の上に置き、手を上げる。


「ふぅん……随分と聞き分けがいい……が、まぁいい。少し眠ってもらうぞ。」


ドスリ、と背中に重い感触のち、兵士は倒れる。

『彼』奏葉水仙はそのまま電話を取り、


「こんにちわ、大佐」

《なっ……貴様……まさか》

「あぁ、俺だ。」

《もう逃げたんじゃなかったのか?!》

「いや、ずっと隠れてたんだがレーダーに引っ掛からないところはよくわからないな。それはともかく、俺は今猛烈に日本に行きたい。船を出せ」

《そ……っんな要求……》

「聞こえないか?いいや、聞こえるよな。俺は一瞬でお前のいる場所を特定し、三日以内にお前を殺せるぞ?」

《くっ……その代わり……》

「アメリカなんか戻ってこないさ。俺だって好きでいた訳じゃない。」

《違う!私達に捕縛されていたことを誰にも漏らすな!それが出来るのなら五番ドックに行け!あぁ!さっさと行ってしまえ!》


ガチャンと水仙の返事もまたずに通信は切れる。


――五番ドック……


船の見取り図を兵士からさっと抜き取ると歩き出した。


「なんで俺は日本に行きたいと思ったんだろうか……」


彼が目覚めたとき、一番に思ったこと。

それが日本に行く事だった。



「まぁ行けばわかる……か」



彼は着実に日本へと近づく。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「時雨ー」

「あ、ともちゃん……おはよー」

「うん、おはよ」


通学路を歩く時雨に後ろから走ってきた女生徒が肩を叩く。

女生徒の名前は朝居智世(あさいともよ)。肩下まで伸ばした茶色がかったロングの髪と、桜の花びらの髪留め、一昔前のアイドルのような顔立ちで制服はミニスカートをもっとミニにしたような際どい着方をした、平たく言えば一般的な女子高生と言ったような風貌だった。


「いやー、もう高一も二カ月が過ぎちゃったかー……」

「時雨、早いよ!そこ感じるの早いよー」

「あはははー」

「ちょっと!時雨ー」


智世は軽く時雨を小突きながら学校への道を歩き出す。

時雨もそれに続きながら学校へ向かう

他愛もない世間話をしながら徒歩通学の時間を潰した。

そして、学校が丁度後十メートル程と言う所で、


「でさ、でさ」

「どーしたの?」


智世が目を輝かせて時雨にしがみつく。


「あの話……ホント?」

「ぇ……?」


智世は言わんでもわかるでしょ、とばかりに


「だーかーらー、ラブレタークラスの男子全員から貰った、てやつ」

「えぇ?!なんでそんな尾ひれついた噂になってるの?!」

「おっと……ということはラブレターは本当なのですか?ほほう……」

「あ……いや、貰ったのはそうだけどそのなんて言うかそんな沢山じゃ……」


時雨は学校までの道が急に遠のいた気がした。


――なんで知ってるんだろ……


彼女がラブレターを貰ったのは確かだった。

しかも1通ではなく、5通や6通。

それも入学してから一ヶ月もたたない頃である。


「で?あっちの噂は?」

「ふぇ?あっち?」

「また誤魔化そうとしてー。2年の弓野先輩からの……」

「あぁっ!チャイムが!」

「えっ?!うそぉ!」


いいところで予鈴のチャイムが校内から響く。

二人が通う高校――青羽学園(あおばがくえん)――では、予鈴が鳴るまでに校内に入らないと放課後に生徒会に呼び出しをくらうほど、時間には厳しい。


「走るよ!」

「えっ……ちょっと弓野先輩の……」


時雨は智世の返事を待たずに走り出す。

重要な情報を聞き出せなかった智代は、そのことを悔しく思いながらも時雨と一緒に校内に向かって走っていった。


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