プロローグ
コード2112の続編として書いていくつもりです
つまらないものですが暇なら読んでいってください(笑)
カチャカチャカチャ……
カチャカチャ…… カッ
「……ふぅ……」
そこはほとんどが暗闇に包まれた部屋だった。
その中でパソコンの光る液晶と、そのキーボードを軽やかに叩く男の白衣だけが色を帯びる。
男の容姿はズリ落ちそうな眼鏡を高めの鼻で止めているような顔に、背中まで伸びきった黒い髪と白衣はどこかミスマッチだった。
そして彼が見つめる先の画面に表示されるのは『ERROR』の五文字。
「やっぱりそう簡単にはいかないなぁ……」
男はボリボリと頭の後ろを掻きながらうなだれる。
と、その時彼の後方から扉を叩く音がした。
「入っていいよ」
「失礼します」
ガチャリ、と年代を思わせるノブを回して入って来たのは長方形のレンズを嵌めた赤いフレームの眼鏡に、臙脂のスーツを上下でピッチリと揃えたまさに秘書と呼ぶべき女性だった。
「明日の会議ですが……あぁ、また『ソレ』ですか」
画面に表示された英語の羅列を見て、秘書は眉をひそめた。
『ソレ』
「いいじゃないか。僕の趣味の1つでもあるんだから。所で明日の会議がどうしたって?」
男は腕をわざとらしく広げて話題を強引に変える。
「……えぇ、明日の会議ですが……」
秘書は手元の書類を捲りながら説明を始めた。
――ドクン
「……ん?」
男はデスクトップの表示の異常に気づく。
中央に警告の表示が1つ現れる、と同時に二つ、三つと増えていく
「まずった……ウイルスか……」
カタカタカタッ
ウイルス撃退用のソフトを立ち上げるが――
「そ……んな馬鹿な……」
画面は警告で埋まり、もはやPCとして機能しなくなっていた。
「私……管制室に排除を要請してきます」
「頼む」
話しながらも男はキーボードを叩く指を休めない。
――――ドクン
「あぁ!くそっ……」
バン、と机を叩く。もはやどんな抵抗も無駄だった。
真っ赤な表示で埋め尽くされた画面を見つめる。
――――――ドクン、ドクン……
そして表示されたのは
『再起動』
刹那、隣の部屋で轟音が鳴り響く。
男は振動で座っていた椅子からズリ落ちる。
カタン、と眼鏡が落ちる音が響いた。
「やっと……」
男は呆然と、だがしっかりとした口調で
「『彼』が生き返った……」
もう隣の部屋から聞こえていた轟音は遠のいていた。
誰かが助けを呼んでいる気もするが、彼には聞こえていなかった。
丸二年かけて彼がしてきた事が実を結んだのだ。
轟音はもう聞こえない。轟音の元は彼が修理したアンドロイドだった。
直ったのだ。自分が直したのだ。
そこではっ、と意識が返ってきた。
「逃げ……た?」