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縄張り争いを止められないロボット

 ハーレム制の動物は、オスの身体が大きくなる傾向にあります。

 その理由は簡単に分かりますよね?

 ハーレム制では、オスの争いが過酷になります。たった一匹しか、群れの主になれない。自然、力の弱いオスは淘汰されていき、オスの身体は大きくなっていくのです。

 さて、ところで、人間はオスの方が身体が大きいですよね? その点から、人間は昔はハーレム制だったのではないかという仮説があります。

 実際、その頃の名残なのか、今でもハーレム制を認めている国は多いです。まぁ、実状がどうであるかは別問題にして。

 しかし、仮にそうだとするのなら、ある疑問が浮かびませんか?

 

 ――ならば、どうして今はハーレム制は廃れてしまったのだろう?

 

 これは、まぁ、想像に過ぎませんが、それは人間が社会性を身に付けた動物である点が関係しているのではないかと思われます。

 だって、たった1匹よりも、2匹…… 或いは、それ以上いた方が有利なのは当り前でしょう。

 はい。

 ハーレム制で、メス達を独占する力の強いオスに対抗する為、他のオス達はチームを組んで対抗したのじゃないですかね? 当然、その戦いに勝利したなら、メス達を誰かが独占するような真似はしません。きっと、それぞれがつがいを見つけたのでしょう。

 この話を聞いて、或いは、フェミニストの方達は憤慨するかもしれませんね。

 「そのようなことは、確かに起こったのかもしれないが、それではメスが受動的に過ぎる。これではメスが物みたいではないか!」

 そうかもしれません。

 オスがメスを求めるばかりではなく、恐らくは、メスの方でもオスを選ぶ…… どんなオス達に味方するのかといったアプローチはあったのではないかと思われます。

 メスを味方につけられたオス達の方が有利になるだろうことは想像に難しくありませんからね。

 メスを味方につけるため、オス達はメス達に良い条件を用意したかもしれません。そしてそれによって、男女平等社会や女性優位社会すらも生まれていったのではないでしょうか?

 実際、古代には、そのような社会もたくさんあったと言われています。

 ですが、それら男女平等社会や女性優位社会は衰退をしていってしまいます。

 何が起こったのかは分かりません。様々な説があるようですが、どれも仮説に過ぎません。

 がしかし、やはり想像する事ならばできます。

 人口増競争においては、実は男性優位社会の方が有利なのです。必ずしもイコールではないのですが、男性優位社会は父系社会に結びつきます。父系社会というのは、オスからオスへと血が引き継がれる社会ですね。

 子供は男性の血を受け継いでいなければいけない。

 しかし、これは逆を言えば、女性は他の社会の人間であったとしても構わないという話でもあります。

 ですから、

 「他の社会から、女性をさらってきて、自分達の子供を産ませる」

 なんて事も可能なのです。

 (因みに、こんな習性を持った猿の姿をした妖怪が中国等に伝えられています。何か関係があるかもしれませんね)

 もちろん、「他社会を侵略して支配し、女性達に自分達の子供を産ませる」でも良いのですが。

 当然ながら、そのような行動を執れば、人口は増えていきます。

 ところが、女性優位社会…… 母系社会の場合はこのような事ができません。

 子供は女性の血を受け継がなくてはならないのですから、他の社会から女性をさらってきても、子供を産ませる訳にはいきません。母系社会の場合、その子供は相手の社会の子供という事になってしまいますからね。

 すると、人口の多さで負けてしまいます。結果、競争で敗れ、女性優位社会は衰退していってしまったのではないでしょうか?

 まぁ、真相は分かりません。分かりませんが、戦争には性欲が付き物というのは、人間社会の歴史で起こって来た数々の事件を観れば明らかではあります。

 

 ――戦争。縄張り争いをし続ける理由は、当然ながら、メスの獲得だけではありません。人々を養う為には、食糧が必要です。その食糧を確保する為にも、土地の支配力を持つ事は重要でした。

 その競い合いの中で、戦争の技術はどんどん進歩していきました。より効率良く相手を殺せるように。

 この過程は、皆さん、大変良く知っていると思います。

 火を使った兵器、爆発を利用した兵器が生まれ、毒ガス、生物兵器、やがては質量をエネルギー源とした核兵器の誕生。

 水爆はたった一つだけで、一国を亡ぼせるほどの力を持ちます。

 軍事力の飽くなき欲求は、現在でも留まる事を知りません。

 しかし、ですね。

 この軍事力への欲求からは、いつの間にか目的が抜け落ちてしまってはいないでしょうか?

 軍事力の目的は、社会を繁栄させる事にあったはずです。いえ、多くの人にとっては、「ただ単に仕合せに暮らせればそれで良い」というのが本心ではないでしょうか?

 そうなんです。

 いつの間にか、人間社会は無理をして領土を広げなくても、充分に豊かな生活が送れるほどの技術力を持ってしまったのです。

 確かに、未だにエネルギー源は石炭や石油やウランといった“枯渇する資源”に頼っています。ですから、“奪い合い”が発生する要因がある事はあります。

 がしかし、昨今、枯渇しない資源である再生可能エネルギーが、急速に成長しています。もう奪い合わなくても、社会を動かせるだけのエネルギーを手に入れられるようになっています。

 人手をかけて、充分に再生可能エネルギーを普及さえさせれば、もう“奪い合い”は必要ないんです。

 食糧生産技術だって同じです。

 協調行動を執り、人手をかけさえすれば、世界中から飢えをなくすことすらも可能でしょう。

 ……そもそも、もう人口を無理に増やす意義はあまりなくなっています。人口は増え過ぎてしまっていますからね。むしろ、現代は、人口を抑制しなくてはならない時代です。

 ま、日本のように減る速度が速すぎる社会もあって、それはそれで問題なのですが。

 

 もう、戦争をして、メスをさらってきて、子供を産ませる必要はありません。住み良い社会を実現するのに、他の社会を侵略する必要もない。

 とっくの昔に、そんな事は時代遅れになってしまっているのです。

 では、どうして、そこまで軍事力に固執しなくてはならないのでしょう?

 相手が自分達を狙っているから?

 だから、自分達もそれに対抗しなくてはならない?

 それには一理はあるかもしれません。

 ですが、それは相手も同じ理屈を信じているからこそ、成り立ってしまっているだけの理屈かもしれないんです。

 

 これから先は、AIなどを用いた無人の殺戮兵器の時代だと言われています。

 果たして、我々は何処へ行こうとしているのでしょうかね?

 

 世界中の軍事力にかけている資源をつかって、社会をよりよく変えるように努められたなら、もっとずっと世の中は良くなるのに。

 

 理屈の上では、もう軍事力なんかに固執しない方が良いのに、それでもそれを止められない人間……

 僕にはそこに理性を感じません。感情だって、それじゃ、ないのと同じでしょう。

 プログラムされた行動をただただ執り続けるだけの、“縄張り争いを止められないロボット”。

 もしかしたら、人間はそんな存在なのかもしれませんよ。

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