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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第一章:ハジマリのまち
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もふもふさん


 ギルドを出た俺たちは、ひとまず教えてもらった本日の宿を目指すことにした。

 ギルドからは、少し距離があるみたいだが、道は分かりやすいので迷うことはないだろう。とりあえず宿までの道で街並みを見るとしよう。そう思い、歩き始める。


 少し進むと、いろんなお店が見えてきた。おそらくこの辺は市場なのであろう。まだこの世界のお金はもっていないので、横目に見るだけにしておこう。何も買えないしね。

 そして、ちょっと前から俺の肩に乗っているコンは辺りをキョロキョロと見回している。おそらくコンにとっても新鮮なものなんであろう。とはいえ、見ているのは食べ物を置いているところばかりであるが。宿に着いたらコンに何か分けてもらえないか聞いてみよう。そう決意したのだった。



 市場を過ぎると広場に出た。相変わらずコンは辺りを見回していて、興奮しているのかさっきから尻尾がぺちぺちと俺の顔に当っている。決して痛くはないのだが、むずかゆい。

 俺は、肩にいるコンを手の中へと持ってくると思いっきりわしゃわしゃとモフり始める。コンは気持ちよさそうになでられていて、時折なでてほしい場所に身体を持ってきていた。

 少しの間、そんなふうにコンと戯れていると、おそらくそれを見ていたのであろう通りがかりの人に声をかけられる。


 「おっ、モフリストかい?かわいい相棒だな。この先に世界最高峰のモフリストであるもふもふさんがいるから絶対見に行った方がいいぜ」


も、モフリストだと?なんと響きのいいことか。それにしてもそんな職業まであるとはな。それよりももふもふさんとは誰だろうか?そう思い、俺は聞いてみる。


 「あのもふもふさんってだれですか?」


 「お前、もふもふさんを知らないのか?さては、迷い人だな。いや、モグリか。そんなことは、どうでもいい。とりあえず一回見てこい。連れてってやるからよ」


 俺がもふもふさんを知らないと聞くと心底驚いたような表情を見せた男は、見た方が早いと例の人の所に連れて行ってくれたのだ。

 男に連れられてきてやってきた場所は、たくさんの人だかりができている。正直人が多すぎて何をやっているのか全く見えないので、分からない。


 「ほら、前にいってちゃんとみてきなよ」


 そういって男に押し出された勢いで人ごみに紛れこんでしまった。しかし、運よく流れに任せて動いているうちに最前列までこれたようだ。これでようやく噂のもふもふさんとやらが何をしているのか見ることができる。そう思い、前を見てみると、そこには驚きの光景が広がっていたのだ。なんと初老ぐらいの男性が、自分よりも大きな身体を持つ怖くて強そうなモンスター?をなでまわしているのだ。しかもモンスターも満更ではないどころか、とても気持ちよさそうになでられているのだ。

 あまりの光景に驚いていると、観客たちの声が聞こえて来る。


 「さすがのもふもふさんだぜ。あの凶暴なタイガードラゴンでさえも虜にしてやがる。正に超一流のモフリストだな」


 観客からもたらされたあまりの情報に俺は、しばらく呆然としていた。そうこうしているうちにどうやらモフリタイムは終わってしまったようで、もふもふさんは、タイガードラゴンに乗っていた。そして、彼らが消え去る前に言葉を残していったのだ。


 「さて、諸君らよ。これはいつも言ってることじゃが、モンスターと仲良くなりたいのならもしくはモフリストになりたいのなら彼らを対等に見ることじゃ。上でも下でもない対等じゃ。彼らと同じ目線で見ることで彼らを初めて知ることができるのじゃ。それから先はお主らの腕次第じゃがの」


 その言葉に大歓声が起こって、もふもふさんは観客達に見送られたのだった。



 「さて、兄ちゃんどうだった?」


 そう言って、観客たちが立ち去った後も一人立っていた俺に話しかけてきたのは、ここに連れて来てくれた男だった。


 「正直すごいという言葉しか出てこなかった。理解が追い付いていない」


 一言で表すならすごいの一言なのだ。素直にそう感じたのだ。しかし、今の自分では理解が追い付かないこともいっぱいある。

 そんな俺の様子に彼は、ニヤリと嬉しそうに笑いながら答えたのだ。


 「だろ?そこまでわかってるなら後は兄ちゃん次第さ。モフリストになりたいならな」


 そう言って俺の背中を軽く叩いた後、男はどこかへと行ってしまったのだった。

 

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