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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第三章:リーゼのアトリエ
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黒い鈴の鑑定結果

 「さて、ユーゴさん。よく来てくれたっすね!」


 「こゃ!」


 リリアさんは、先ほどの出来事なんてまるでなかったかのように俺に声をかけてくる。そんな彼女の近くでは、コンもよく来たなと言わんばかりに鳴いていたのだ。


 「いや、ちょっとまって! コン、お前はこっち側だろう」


 「こゃぁ……!」


 コンは、やってしまった……、とばかりに鳴くと、俺の方まで戻ってきて、そのまま俺の肩へと飛び乗っていつもの場所へと落ち着く。


 「コホン、それじゃあユーゴさんさっそくですが、例の黒い鈴についての鑑定結果をお伝えするっすね!」


 「うん。あっ、じゃあ何かわかったんだね」


 「いえ、分かったと言いますか……。それはともかく、先に結論から言うっす。黒い鈴の鑑定結果ですが……残念ながら鑑定不能でした」


 リリアさんは、真面目な顔をしながらもどこか悔しさをにじませた表情でそう答えたのだ。


 「えっ?」


 俺は、リリアさんが何を言ったのか分からず、彼女に聞き返してみる。しかし、彼女は黙って首を横に振るだけで、それ以外の返答は何もなかったのだ。


 「嘘……だろ? じゃあ、結局は何も分からずじまいだったってことか!」


 「結論から言うとそうなるっす。ギルド側と私の個人的に用意した鑑定用のアイテムとスキルでは、黒い鈴を鑑定できるレベルには至ってなかったっす。ただ、勘違いしてほしくないのは、まだ手が残されていないわけじゃないってことっす。そのことで、ユーゴさんには、緊急の依頼をお願いしたいのです」


 「そ、そっか。まだ手は、残されてるんだな。それで俺への依頼って?」


 「ユーゴさんには、リーゼさんにこの黒い鈴を鑑定できるような強力な鑑定アイテムの作成の依頼と彼女が錬金するのに必要な素材集めを手伝って欲しいっす。正直なところ、私としても鑑定ができなかったことにはかなりショックを受けてるっす。それでもずっと追いかけてきたこの黒い鈴の真相に近づけそうなチャンスは逃したくないんすよ! 何をするでもなかった魔物達が勝手に狂わされていく悲劇を止める第一歩になるかもしれないからこそ止まるわけにはいかないっす」


 リリアさんは、俺に向かって深々と頭を下げてきた。その姿勢と言葉からは、リリアさんの強い気持ちが、俺に伝わってきたのだ。


 「リリアさん、顔をあげてよ! その依頼、受けるよ。正直、リリアさんほどの強い気持ちは、持てないかもしれない。……それでも、コンにもしものことがあれば、俺は絶対に許せないから……!」


 「ユーゴさん……。ありがとうっす!」


 リリアさんは、俺に向かってもう一度深々と頭を下げたのだ。




 リリアさんは、リーゼに渡しておいてほしい物があるとのことで、それを取りにカウンターの奥へと行き、戻ってくると俺に一枚の紙を差し出してきた。


 「リリアさん。これは?」


 「それは、私個人のお二人への依頼書っす。ギルドを通して指名依頼という形をとらせてもらったっす」


 どうやらギルドからの依頼ではなく、リリアさんから出した依頼のようだ。

 俺は、その依頼書にざっくりと目を通してみる。そこには、先ほどリリアさんが説明していた依頼の具体的な内容が書かれた項目や報酬などの項目が書かれていたのだ。

 俺は、なんとはなしに報酬の項目に目を移すと、そこにはこんな驚くべき内容が書かれていたのだ。



 依頼達成時には、報酬100万リン及び出来高により加算するものとする。



 俺は、見間違いじゃないかと思い、一度視線を外した後、もう一度報酬の項目を見てみる。しかし、そこにはやはり先ほどと同じ内容が書かれていたのだ。


 「ケタが違いすぎる……。それにこれ、リリアさんからの個人依頼って言ってたけどまさか……」


 俺は、あまりの額の大きさに驚きつつも、リリアさん一人がこれだけの額を支払うのではないかと心配になり、彼女の方を見てみる。


 「ユーゴさん。何か驚いているようですけど、大丈夫っすよ。それよりも依頼の方をお願いするっす。こんなことをしているやつらを逃さない為にも」


 リリアさんのまっすぐな眼差しと言葉にこもった強い気持ちにあてられた俺は、数度顔を左右に振り、報酬のことは、頭の片隅に追いやる。今すべきことは、報酬のことを心配することでなく、依頼をこなして、少しでも早く黒い鈴について解明することが先なのだ。報酬の心配は、無事依頼をこなしてからすればいい。俺は、そう自分に言い聞かせると、まっすぐリリアさんの方を見つめる。


 「わかったよ……。一刻も早く、リーゼに作ってもらえるように俺もがんばるよ!」


 「ユーゴさん。無理は禁物っすよ。それとリーゼさんにも、無茶はしないようにと、作れそうにないのであればそうだとはっきり言っていただけるよう伝えてほしいっす」


 俺は、リリアさんの言葉に頷きを持って返すと、そのままギルドを後にしたのであった。

 



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