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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第三章:リーゼのアトリエ
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恐ろしく早い解体

 「ユーゴさん。それじゃあ、さっそく魔法のかばんからあの子を出すっすよ!」


 ギルドの裏手側にある解体場と書かれた看板のたっている大きな広場に辿り着いた俺たちは、さっそく魔法のかばんから黒モヤボアアンを取りだしていく。ズドン、と大きな音をたてながら広場に黒モヤボアアンが取りだされた。


 「次は、クラリッサの出番っすよ!」


 リリアさんは、そう言ってクラリッサさんに解体用のナイフらしいものを手渡す。クラリッサさんは、彼女に向かって頷いてナイフを受け取ると、その場で何回か素振りを行う。なにやら、ナイフの感触を確かめているらしい。


 「そうね。すぐに終わらせるわ」


 クラリッサさんは、そう言って黒モヤボアアンの方に向かっていくと、その言葉通りあっという間に解体を終わらせたのだ。正直なところ、俺にはどうやっていたのか全く分からないほどの驚異的なスピードであった。彼女が、黒モヤボアアンの方に向かって行ったかと思うと、一瞬にして、バラバラに解体されていたのだ。


 「流石クラリッサっすね! 恐ろしく早い上に、丁寧な解体さばきは相変わらずっすね」


 「それほどでもないわ」


 リリアさんからの褒め言葉に、クラリッサさんは照れているようだ。言葉は、そっけないが、どことなく嬉しそうにしている。


 「あっ、それとリリア! ここに来るまでに話してた例の黒い鈴は、きっちり取り外しているから、私が持っていくわ」


 「ありがとうっす!」


 リリアさんは、クラリッサさんにお礼を言った後、俺の方までやってきた。


 「ユーゴさん、私は今からこの黒い鈴を調べてみるっすから今日はゆっくりと休んでください。また明日になったら私のところに来てもらっていいっすか? 何か分かればその時にお伝えしますので」


 「わかったよ。せっかくだから今日は、ゆっくり休ませてもらうね。リリアさん、無理しすぎないようにね」


 「ユーゴさん、ありがとうっす。解体した物は、一度こちらで預かっておくっすから明日どうするか決めるっすよ」


 リリアさんは、そう言って俺ににっこりとほほ笑んだ。俺は、そんな彼女の笑顔に思わず見惚れつつも頷いて返事を返す。


 「こゃ!」


 突如コンは、俺の服の中から顔を出すと、リリアさんに向かって短く鳴いた。リリアさんは、そんなコンの姿を見つけると、嬉しそうにコンの方へと手を伸ばしていき、その頭を撫ではじめたのだ。


 「コンちゃん、大丈夫だったっすか? 昨日は、ユーゴさんと一緒に頑張ってくれてありがとうっすね!」


 「こゃぁー」


 コンを撫でるリリアさんの目つきはとても優しいもので、コンは、気持ちよさそうに撫でられている。そんなコンの姿を見ていると俺までなんだか気持ちいいようなそんな心の暖かさを感じられてきたのだ。


 後方から、俺たちの様子をじーっと眺めているような視線を感じた俺は、そちらに顔を向けるとそこには頬を膨らませて悔しそうにしているクラリッサさんの姿が見えたのだ。


 「うぅー……、どうしてリリアはよくて私はダメなのかしら」


 彼女の悲痛な呟きが聞こえてくる。

 俺は、そんな彼女の呟きを申し訳ないと思いつつも聞かなかったことにした。なんとかしてあげたいと思ってもどうにもならないこともあるのだ。




 その後、たっぷりとコンを撫でまわしたリリアさんは、コンの方から手を戻すと俺の方へと顔を向ける。


 「ユーゴさん、お時間を取らせちゃってすみません」


 「大丈夫だよ! コンもすごく気持ちよさそうだったしね」


 「それならよかったっす。ユーゴさん、また明日お待ちしてるっすね」


 リリアさんは、そう言って別れの言葉を告げるとクラリッサさんがいる方へと去っていったのだ。

 俺は、そんな彼女をその場で見送った。


 「よし、コン。今日はせっかくだから街の中を見て回ろうか」


 「こゃ!」


 この後、俺は、コンと共に街の中を見て回ることに決めると、解体場をあとにしたのであった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点]  コンちゃんが、可愛すぎる。そのぶん、クラリッサさんが不憫……。
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