クラリッサとの再会
俺たちは、何事もなくギルドへ到着するといつものようにリリアさんのいるカウンターへと向かっていく。そこまでの道筋は手慣れたもので、いまさら迷うこともない。
俺は、頭の上にコンを乗せてギルドの中を進んでいると、突然声をかけられる。
「あら? ユーゴくん!」
「えっ? クラリッサさん?」
どうやら俺に声をかけてきたのは、クラリッサさんのようだ。彼女は、俺の方へと近づいてくる。コンは、そんな彼女の姿を見るや否や、彼女に向けて少し唸った後、急いで俺の服の中へと隠れていったのだ。
「また、コンちゃんに逃げられた……」
クラリッサさんは、やはりショックだったようで、膝から崩れ落ちている。その落ち込みようは、前回よりさらにパワーアップしてるような気がするのだが、きっと気のせいだろう。
俺は、少しの間彼女を慰めていたのだ。
「ユーゴくん、今日は何か依頼を受けにきたのかしら?」
復活したクラリッサさんは、そう俺に尋ねてきた。
「いえ、ひとまず昨日の依頼の関係で、リリアさんに頼まれてたものを出しに来ただけですね」
「あら、そうだったのね。私もリリアから呼ばれてるの。せっかくだから、ユーゴくんも一緒に行きましょ」
「リリアさんに呼ばれてたんですね! はい。そうしましょうか」
クラリッサさんと目的も一緒だった俺は、彼女と一緒にリリアさんのもとへと向かっていった。
俺たちがいつもの場所へと辿り着くと、そこには机に突っ伏しているリリアさんの姿があったのだ。以前も彼女が突っ伏していた時もあったのだが、その時よりなんだか生気がないような気がする。
「リリアさん! 大丈夫?」
昨日まですごく元気だったリリアさんが今こんな姿になっているのを見て、心配になった俺は、彼女の元へ近づいていく。すると、彼女が何か文字が書かれた物を持っていることに気付いた。俺は、何だろうと思いそれを読んでみる。
リリアへご用事の方は、明日のご訪問をお待ちしております。
「ええー!」
俺が、驚いていると、同じように横でリリアさんが持っていたものを読んだクラリッサさんは、一つため息をつくと、拳を振り上げたのだ。
「いい加減に起きなさいリリア」
「痛いっす……」
クラリッサさんから拳を振りおろされたリリアさんは、頭を抱えて、痛そうにしながら起きあがってきたのだ。そのまま、目の前にいた俺と目が合う。
「ゆ、ユーゴさん!?」
リリアさんは、目の前に俺がいたことに驚いたのか、あわあわとしている。
そんなリリアさんの様子を見ていたクラリッサさんは、一つ咳払いをした。
「コホン。私もいるんだけど……」
「えっ? クラリッサ?」
リリアさんは、じと目で彼女の方を見ていたクラリッサさんに気付くと、どうやら落ち着きを取り戻したようで、少しばつの悪そうな顔を浮かべていた。
その後、リリアさんは、俺とクラリッサさんの顔を交互に見ながら首をかしげている。
「そういえば、どうしてお二人は一緒にいるっすか?」
「ユーゴくんとは、ギルドで会ったの。彼もあなたに用事があるようだから一緒に来たのよ」
クラリッサさんは、そう答えると、俺の後ろまで下がり、目で合図を送ってくる。おそらく、先に要件を伝えろということなのだろう。俺は、クラリッサさんに一度頷くとリリアさんに要件を伝える。
「リリアさん。昨日言われてたようにあの子を持ってきたんだけど……」
「さっそく持ってきてくれたんすね。ユーゴさん、ありがとう。ここだと流石に狭いっすから、別の場所に移動するっすよ」
リリアさんは、そう言うや否や俺の手をつかみ、そのまま移動し始めようとしていた。しかし、クラリッサさんは、そんな彼女の肩を掴み、待ったをかける。
「ちょっと、リリア待ちなさい。私への用事は何だったの?」
「そうっす。クラリッサには、ユーゴさんが持ってきた物を解体してもらいたいっす。だからこのままクラリッサも行くっすよ」
リリアさんは、クラリッサさんにそう答えると俺を引き連れてその場を離れていったのだ。何やら後ろの方では、クラリッサさんが何かを言っていたようだが、少しするとそのまま俺たちについてくることにしたようであった。




