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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第二章:もふもふギルド入会編
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アステール

 大きな星型のナニカへと姿を変えたアステールは、次々と黒モヤボアアン目掛けて降り注いでいく。その様子は、巨大な流星群が目の前へと降り注いでいるかのような迫力であった。


 「やっぱり、リーゼのアイテムはすごいなぁ」


 俺は、素直にそう思う。

 先ほどの黒モヤボアアンから受けた攻撃によって、身体もまるで動かない、視界もぼやけている俺であってもそのアステールの存在感や凄まじさが感じ取れるほどなのだ。いかに黒モヤボアアンとはいえ、無傷では、すまないだろう。


 「グルォォ」


 黒モヤボアアンの雄たけびが聞こえてくるものの、明らかに先ほどより声に力がない。今なお黒モヤボアアンに降り注ぎ続けているアステールのダメージが大きいのであろう。


 黒モヤボアアンがいるであろう場所は、地面に衝突したアステールの影響もあり、煙が立ち込めている。その影響で、現在黒モヤボアアンがどうなっているのかは、見ることができない。煙が晴れた先は、神のみぞ知るだろう。


 「倒すことができなくてもコンを逃がせるぐらいに弱ってくれれば」


 俺は、そんなことを考えていた。

 俺が、黒モヤボアアンから受けたダメージは、あまりにも大きい。ましてや、ろくに身体も動かないのだ。助けが入るのを待つしかない状況である。

 だが、コンは、俺がなんとか間に合ったこともあり、無傷で済んでいる。コンの青い球が黒モヤボアアンに通用しない以上、コンには倒す術がない。だからこそ、今のうちにコンには逃げてもらう必要があるのだ。


 「コン……、今のうちに逃げろ」


 俺は、なんとか振り絞って声を出す。

 コンは、そんな俺の言葉なんか聞きたくないと言わんばかりに、必死に俺の身体に負った大きな傷を舐め続けている。


 「コン」


 「こゃっ!」


 俺は、もう一度コンに声をかけようとするものの、コンの強い声に遮られてしまう。

 コンは、じーっと力強い瞳で俺を見つめてくるのだ。その様子は、絶対に自分だけでは逃げないという強い意志が現れているのだろう。

 俺は、そんなコンの強い意志を感じて、今コンを逃がすことを諦めたのだ。


 「頼む。なんとかこのアステールで黒モヤボアアンを倒しきってくれ」


 俺が、今できることは、ただ祈るだけであったのだ。




 アステールの勢いが徐々に弱まってきた。もうすぐその攻撃も終わってしまうだろう。

 長い間続いた、アステールによる攻撃もついに終わりを迎えた。立ち込めていた煙も徐々にはれていき、少しずつ見えるようになってきたのだ。


 「あいつはどうなったんだ」


 俺は、はれていく煙の先を見つめる。

 その中には、大きな黒い影が見える。その存在は、間違いなく黒モヤボアアンであろう。


 煙が完全にはれたその中に姿を現したのは、全身から血を流し、満身創痍と言える状態の黒モヤボアアンであった。


 「くっ、あの攻撃でさえ倒しきれなかったか。とはいえ、相当弱っているみたいだな」


 俺は、黒モヤボアアンを倒しきれなかったことを残念に思いつつも、かなり弱らせることができていたことにホッとしていた。この状態であれば、最悪俺が盾になることでコンを逃がすことができそうだ。


 「こゃっ!」


 コンは、力強い声をあげて、俺と黒モヤボアアンの間に割って入る。尻尾をあげて、いつでも青い球が放てるように構えているのだ。

 対する黒モヤボアアンは、鳴くことなく、俺たちの方を見据えて、少しずつ近づいてくる。

 いよいよ、黒モヤボアアンとコンが対峙するかと思われた時であった。


 「ブモォォォ!」


 そんな鳴き声と共に、黒モヤボアアンの横側から何かが現れて、黒モヤボアアンを弾き飛ばしていったのだ。弾き飛ばされた黒モヤボアアンは、木に身体を打ちつけられることで止まり、その場に倒れ落ちた。


 俺は、そんな目の前で起こった出来事に目を白黒させていると何やら声が聞こえてきたのだ。


 「ユーゴさん! 遅くなったっすけど、大丈夫っすか?」


 聞こえてきた声の方を振り向くと、そこには、通常種のボアアンに乗ったリリアさんがいたのであった。


 

 

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