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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第二章:もふもふギルド入会編
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VS黒モヤボアアン

いつもの文量より約2倍近く多くなっています。


 黒モヤボアアンが走り去っていった方向を頼りに俺たちは、急いで追いかけていく。

 すでにその姿は、見えないのだが、時折聞こえてくる何かにぶつかったような音や所々に倒れている木が目印となって、だいたいの方向がわかっているのだ。とはいえ、いつまでこの方法で追いかけられるかは分からない。なにより問題となるのが、俺たちよりも圧倒的に速いスピードだ。少し油断しただけでもすぐに見失ってしまうことになるだろう。


 「まったく追いつける気がしないな……」


 俺は、思わず言葉がもれる。

 もとより正攻法で、黒モヤボアアンに追いつけるとは思っていない。少しだけでもその距離が詰められたのなら、それは御の字なのだ。しかし、追いかけても追いかけてもその距離が縮まっている気がまるでしない。これは、早々にやり方を変えてしまった方が良いだろう。

 

 「コン!」


 「こゃーん!」


 何だと言わんばかりにコンが、俺の方を向いて返事をする。


 「あの黒モヤボアアンの匂いはわかるか?」


 コクッ、とコンは頷く。


 「なら、その匂いで追いかけることはできるか?」


 再びコンは、コクッと頷いた。そして、力がこもったような瞳で、俺の目をじーっと見てくるのだ。その様子は、任せろと言わんばかりである。


 「よし! コン、キミに決めた!」


 「こゃ!」


 コンは、俺にそう返事をすると早速地面の方へと鼻を近づけてにおいをかぎ始めたのだ。

 少し時間が経つと、コンは一瞬俺の方へと振り返った後、ある方向へと走りはじめた。おそらく、ついてこいということなのだろう。俺は、急いでコンを追いかけはじめた。




 コンの案内に従いながら、俺は森の中を突き進んでいく。不思議なことに、先ほど黒モヤボアアンが通ったであろう道を通っていた時よりも少しずつ距離が縮まっているような気がするのだ。おそらくだが、コンが最短ルートを選んでくれているからなのだろう。先ほどまでとは違い、迷いなく進めていることも大きい。


 「よし、コン。いい調子だ! そのまま頼むな」


 俺の言葉に返事をするかのようにコンは、尻尾を上にあげて横に振った。

 黒モヤボアアンに追いつくまでは、このままコンに任せてしまって大丈夫だろう。


 「次は、どうやってあの黒モヤボアアンを倒すかを考えないとな」


 俺は、前を走るコンを追いかけながら考えを巡らしていく。


 「リリアさんがさっきの戦闘にヒントが隠れてるって言ってたっけ」


 俺は、先ほどの黒モヤボアアンと通常種のボアアンの戦闘を思い返す。

 通常種のボアアンが、相当近くに寄るまで、黒モヤボアアンは反応していなかったはずだ。黒モヤボアアンが気付いていながらも反応しなかったのか、そうでないのかはわからないが、これは一つのポイントだろう。

 そして、もう一つ気になるのが、黒モヤボアアンが見せた異常なまでの反応の早さだ。うかつに近づきすぎてしまえば、先ほどのボアアンの二の舞になってしまうだろう。


 「この二つのポイントから見つけられることは……」


 俺は、頭をフル回転させていく。

 二つのポイントから言えることは、すぐに思いついた。次は、それを使ってどうやって黒モヤボアアンを倒すかだ。


 「そうか! 見えたぞ」


 俺は、なんとか俺達でも倒せそうな方法を思いついたのだ。しかし、この方法だと俺もコンも危険度がかなり増してくる。いや、攻撃手段がない俺の方がより危険になるかもしれない。それでもやるしかないのだ。万が一の時には、リーゼからもらったアイテムもある。とにかくやるしかないのだ。


 「コン。そのまま案内しながら聞いててくれ」


 俺は、コンに案内してもらいながら対黒モヤボアアンの作戦を伝えたのだ。




 「なんとか追いつけたな」


 俺は草むらに隠れながら、前方に黒モヤボアアンの姿が見えることを確認する。幸いにも黒モヤボアアンは、現状どこかにいこうといったそぶりは見せていない。


 「コン。作戦通り頼むな」


 「こゃーん!」


 俺は、コンに声をかけると二手に別れて移動していく。俺は右手側から、コンは左手側からある程度の距離を保ちつつ黒モヤボアアンに近づいていく。特に何事もなく、俺は黒モヤボアアンの側面側の方向へと来ることに成功したのだ。


 「ひとまず、第一段階は何事もなく突破できたな」


 俺は、ホッと息を一つ吐いて安堵する。とはいえ、まだ準備段階なのだ。安心するにはまだまだ早すぎる。

 俺は、深呼吸を一度すると気を引き締めて、作戦を実行することに集中する。


 「反対側にいるコンも準備はできたっぽいな」


 俺とコンの繋がりで、コンの準備ができたことを悟ると、俺はさっそく作戦を始めて行く。

 俺は、ここに来るまでの間に拾っていた石を黒モヤボアアンの方へと思いっきり投げる。


 ストンッと音を立てて、俺の投げた石は、黒モヤボアアンに命中する。しかし、当然と言えば当然であるのだが、全くダメージは見受けられない。


 黒モヤボアアンは、何かが当たったということには気がついたのか、石が当たった方向へと顔を向ける。その時であった、俺とは反対側から放たれたコンの青い球が黒モヤボアアンへと迫ってくる。黒モヤボアアンは、直前にそれに気がつくと、華麗なサイドステップを決めて青い球を回避したのだ。避けられた青い球は、そのまま地面へと当たり、小爆発を起こして地面をえぐり取っている。


 青い球を避けた当初こそは、それが投げられた方向へと顔を向けていた黒モヤボアアンではあるが、さすがに小爆発を起こした音には、驚いたのかそちらの方を少しの間見ていた。ちなみにその間に、コンはすでに青い球を放った場所を離れて別の場所へと隠れている。


 「流石に作戦Aは失敗か」


 俺が石を投げて黒モヤボアアンの気を引いている隙にコンの青い球を当てることが、作戦Aだったのだ。前半部分は、見事に成功したのだが、肝心の本命は、黒モヤボアアンの反応の早さに失敗に終わってしまった。とはいえ、元からこの作戦は、成功するとは思っていなかったので、黒モヤボアアンの反応の早さが見えた分収穫であろう。


 「次の作戦Bに入るぞ」


 俺は再び黒モヤボアアンに向けて石を投げていく。先ほどは、その大きな身体目掛けて投げたが、今度は足元を中心に連続で投げていく。


 黒モヤボアアンは、先ほどの攻撃でやや警戒しているのか、俺が投げた石をかわしていく。しかし、黒モヤボアアンが避けた先には、コンから放たれた青い球が迫ってくるのだ。

 黒モヤボアアンは、青い球の方も間一髪かわしていく。


 「とんでもない反射神経だな」


 俺は、思わず言葉をもらす。

 俺は、攻撃の手を緩めることなく足元へと石を投げ続ける。そして、コンも同様に反対側から青い球を放ち続けている。それでも一度たりとも黒モヤボアアンには命中しないのだ。


 ちょっとの間、俺たちと黒モヤボアアンの攻防は続く。

 俺たちは、少しずつ移動しながら攻撃を仕掛けて、黒モヤボアアンもかわしながら少しずつ移動していく。そんな攻防をひたすら繰り返していた時であった。


 ドォン、と大きな音を立てて黒モヤボアアンは、落とし穴に落ちたのだ。

 これこそが、俺たちの作戦の本命、作戦Cであった。


 「コン! 任せた!」


 「こゃ!」


 コンは、俺の声に返事をしながら、落とし穴にはまってもがいている黒モヤボアアン目掛けて青い球を放ったのだ。


 ドゴォン、と大きな音を立てて、黒モヤボアアンがいた場所に煙がたちこめる。


 「や、やったか?」


 後にして思えば、その言葉がいけなかったのだろう。煙が晴れた先にいた黒モヤボアアンは、少し毛がこげついているだけで、見た目は全くの無傷であったのだ。


 「嘘だろ……」


 戦闘中だと言うのに俺は、気が抜けたように立ちつくしてしまう。コンの青い球を受けてもダメージを与えられないということは、今の俺たちに黒モヤボアアンを倒す術がないということなのだ。


 「グルオォォォ!」


 攻撃を受けた黒モヤボアアンは、怒りのおたけびをあげて、落とし穴から脱出しようとしている。その姿を見たコンは、追撃の青い球を放つ。しかし、黒モヤボアアンが落とし穴から脱出するのが早く、当たらなかったのだ。


 「!?」


 何か嫌な予感を感じた俺は、とっさにコンの方へと身体が動いていく。それと同時に、黒モヤボアアンもコンの方へと突進を開始した。

 なんとか俺の方が早くコンのもとへと辿り着き、コンを抱えて、横へと回避しようとした時、ちょうど黒モヤボアアンの突進が俺に直撃する。

 俺は途中一瞬意識を失いながらも吹き飛ばされ、近くの木へと激突した。


 「ゲホッ!」


 俺は、木にもたれかかるようになりながら思いっきり血を吐いた。

 視界は朦朧としていて、全身の壮絶な痛みに身体はまるで動かない。


 『ユーゴさん。もしものときはこちらを上に向かって投げてください』


 ふと、俺の頭にリーゼがそう言ってアイテムを渡してきた映像が浮かんできた。


 俺は、かろうじて動いた右手でポケットからアイテムを取りだすと、上に投げたのだ。それは、投げるというより、手放すということに近かった。しかし、リーゼのアイテム(アステール)は、それでしっかりと起動したようなのだ。

 アステールは、上へと上がっていくとやがて大きなアステールに似た星型のナニカとなり、黒モヤボアアンに向かってたくさん降りそそいでいったのであった。


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