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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第二章:もふもふギルド入会編
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不穏な気配

すみません。大変お待たせしました。

どうぞです

 先に街の外に出てしまっていたリリアさんに追いつくと、俺は彼女と並んで歩きはじめる。進んでいく方向を見ていると、どうやら昨日エノノノコ草を採取した森の方へと向かっているようだ。

 俺たちが、森の入口付近まで近づいてきた時、突然リリアさんの足が止まった。


 「ユーゴさん、ここからは、コンちゃんと一緒に警戒してくださいね。昨日の依頼でも経験したはずっすけど、魔物がいつ出てきてもおかしくないっすからね」


 どうやら、森の手前で彼女が止まったのは、俺に注意を促すためであったようだ。

 彼女から受けた忠告は、昨日身を持って体験しているので、素直に受け取り、彼女に頷いた。そして、コンに伝えようと思って、顔を下に向けると、先ほどまで俺の服の中にいたはずのコンがいなくなっていたのだ。


 「コン? どこにいったんだ?」


 俺は、おかしいなぁと思いながら首をかしげて、周りを見ているとコンを見つけた。どうやら、ひと足早く、下におりていたようだ。

 コンは、すでに警戒モードに入っているようで、耳をちょこちょこと動かしながら、周りをキョロキョロとしている。


 「コンちゃんは優秀っすね」


 ぽつりと呟かれたリリアさんの声が、俺の耳に聞こえてくる。その言葉には、正直同感だ。

 俺もコンを見習わないとな思い、一度深呼吸をして、自分の頬を叩いて気合を入れる。


 「ユーゴさん。気合を入れてるところ悪いっすけど、さっそくここからの案内をよろしくするっすね」


 「了解。……って、ええっー!?」


 ニコニコとしながら、彼女はとんでもないことを言ってのけたのだ。


 「最初にもお伝えしたっすけど、これはあくまでもユーゴさんの依頼っすからね!ユーゴさんとコンちゃんで進めてくださいね」


 「は、はい……」


 彼女の言葉に、俺はぐうの音も出なかったのだ。


 俺は、再度気合を入れなおすと、地図とにらめっこしながら森の中へと進み始めた。




 俺たちが、森の中をある程度進んだ頃、ふと俺は、何か違和感のようなものを一瞬感じた。具体的には、分からないのだが、なんとなく森が騒がしいような気がするのだ。


 「何かが、おかしい気がする」


 俺は、ぽつりと呟くと、警戒してくれているはずのコンの方を見てみる。コンの方も何かを感じているのだろうか、先ほどよりも周りをキョロキョロ見ながらせわしなく耳を動かしているのだ。そして、尻尾を上にあげて例の青い球をいつでも出せるように構えている。


 「コンの警戒度も上がってるってことは、やはり気のせいじゃないんだろうか」


 「ユーゴさん、どうしたっすか?」


 俺の呟きが聞こえていたであろうリリアさんが、声をかけてきたのだ。


 「うまくは言えないんだけど、一瞬何か違和感を感じて。コンも警戒度が高くなってるみたいだし、この先何かが起こるかもしれないなって思ったんだ。ただ、昨日はこんな違和感を全く感じなかったから不思議なんだけど」


 「そういうことっすね。それならその違和感は、多分正解っすよ。ちょっと前からピリピリと嫌な空気はあったすからね」


 合点がいったと言わんばかりに、彼女は頷いた。どうやら彼女は、俺たちよりも早くに何かに気づいていたようだ。正直、早くに気づいていたのなら教えてほしかったところではあるが、森に入る前にも彼女が言ってたように、これはあくまでも俺たちの依頼だから俺たちでなんとかしろということなんだろう。


 「それと、昨日は何も感じなかったって話っすけど、それはユーゴさんとコンちゃんの理解度が上がったからだと思うっすよ」


 「理解度?」


 「そうっす。簡単に言うと、どれだけお互いのことを分かっているのかということっす。この理解度が上がると、相棒の魔物が持っている能力を一部得ることができるっす。ただ、完全に同じというわけじゃなかったり、元よりも劣化した形にはなるっすけどね」


 俺のもう一つの疑問にもなにやら思い当たる節があったようで、彼女は答えてくれたのだ。彼女の見立てでは、コンの持つ気配察知の能力を劣化させた感じで得たのではないか、ということらしい。


 俺は、その話を聞いて納得していた。確かに、コンの能力を少しばかり得たと考えれば説明がつくのだ。理解度というものについても、もっと知りたいところではあるが、今はそんなことも言ってられないだろう。通常であれば、こんな話をしていると、コンがドヤ顔を見せてくるのだが、コンは今も変わらず警戒態勢を取っているのだ。すぐにでも危険が迫ってくるかも知れない以上、今はこちらに集中しよう。俺が、そう思っていた時であった。


 「こゃー!!」


 「ユーゴさん、コンちゃん今すぐ隠れるっすよ!」


 コンの声とリリアさんの声が、同時に飛んできたのだ。俺も一歩遅れてかなりやばそうな雰囲気を感じとったので、急いでコンとリリアさんと共にできるだけ離れた茂みへと身を隠す。


 俺たちが身を隠して少ししてから、さっきまで俺たちが立っていた場所に何か大きなものが突っ込んできたのだ。その大きな何かは、近くの大木に体当たりをかまして、なぎ倒すとその場に止まった。

 俺は、身を隠しながらもその大きな何かの姿を確認する。その姿は、依頼書で見た黒いモヤを全身にまとったボアアンであったのだ。


 「ユーゴさん、コンちゃん、今はまだ動いちゃダメっすよ。声もダメっす。何があってもひとまずは、あのボアアンが立ち去るまでは大人しくしていてください」


 リリアさんは、真剣な表情で、俺の耳元でそう言ったのであった。



次回は、黒モヤボアアンとの対決です。

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