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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第二章:もふもふギルド入会編
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討伐の依頼

遅くなりましたが、どうぞ

 ハジマリのギルドへと戻ってきた俺たちは、いつものカウンターへと向かっていく。今日に限っての話ではあるが、いつもカウンターで待ってくれているリリアさんと一緒に向かっているので、なんだか新鮮な気分だ。


 「それじゃあ、ユーゴさん。依頼書を取ってくるっすからちょっと待っててください」


 リリアさんは、そう言うといつものごとく奥の方へと消えて行った。

 彼女が戻ってくるまでの時間は、俺とコンのもふもふタイムだ。この後に待ち受ける依頼の為にも、今のうちに存分にモフって、モフり貯めをしておく必要があるのだ。

 俺はコンを頭の上から抱きかかえておろすとそのまま膝の上にのせて、思いっきりモフり始めたのであった。




 「ユーゴさん。お待たせしたっす。こちらが今回の依頼っすね」


 リリアさんは、戻ってくるなり開口一番にそう言ったのだ。そして、俺の方へと依頼書を渡してくる。

 俺は、リリアさんから渡された依頼書を見てみる。するとそこには、暴走したボアアンの討伐、と書かれていたのだ。


 「ボアアン?」


 「ボアアンっす!」


 俺の呟きを聞いていたであろうリリアさんが即座に反応してくれる。しかし、残念なことに彼女が強く肯定してくれたところで、正直なところ俺には、ボアアンのイメージが全く湧いてこないのだ。


 「とりあえずこの絵を見てもらった方が早いっすね」


 リリアさんは、そう言ってボアアンの絵が描かれた本を取り出してきて、俺の方へと見せてくる。おそらく彼女も俺がちんぷんかんぷんなことは分かっていたのであろう。実に用意周到なことである。

 俺は、その本を覗き込み、ボアアンの絵を見てみる。その姿は、イノシシととても似ていたのだ。


 「このボアアンっすけど、一部の迷い人が言うには、イノシシという生物によく似てるそうっす。ユーゴさんには、こちらの名前の方がなじみがあるかもしれないっすね」


 リリアさんは、俺にそう説明したのだ。彼女の言う通り、俺にとっては、イノシシという名前の方が断然なじみがある。

 それにしても、まさかイノシシという名前をリリアさんから聞くことになるとは思わなかったので、正直、俺はとても驚いたのだ。おそらくではあるが、この世界にはなかった迷い人の言葉が、多少なりとも受け入れられているのだろう。

 リリアさんは、続けて話し始める。


 「ちなみにボアアンは、普段は穏やかな魔物っす。たまに暴走してしまうこともあるっすけど、たいしたことはないんですよ」


 「それなら討伐までする必要はないんじゃ」


 「通常ならユーゴさんの言う通りっす。暴走してしまったボアアンを落ち着かせるだけで大丈夫っすからね」


 そこっす、と言わんばかりにリリアさんは俺の方に身を乗り出して、彼女は俺の言葉に答える。普段の受付での死んだような彼女の様子とは違い、とてつもなくテンションが高い。普段との違いになんだか押されてしまいそうだ。

 そんな俺の様子のことなど特に気づくこともなく、彼女は説明を続ける。


 「今回の個体っすけど、身体が黒いモヤのようなものに覆われていて、完全に自我を失ってるんすよ。こうなってしまうと、後は本能に任せて破壊するようになるので、討伐しなきゃいけないっす。本来であれば、モフリストが討伐の依頼を受けることはあまりないっすけど、何度かは経験しておいたほうがいいので、受けてもらうっすよ」


 どうやら今回の依頼のボアアンは、少し特殊なようである。おそらくではあるが、通常のボアアンよりも強いのであろう。具体的な強さは分からないが、前回以上に気を引き締めて行かないといけないだろう。コンの不思議な力があるとはいえ、俺自身の戦闘力もなければ、俺達には戦闘経験もないのだ。油断や慢心をしてしまえば、即座にやられてしまうだろう。

 俺は、コンを撫でていた手を止め、胸の前で軽く拳を握っていると、リリアさんから声をかけられる。


 「ユーゴさん。今からそんな力を入れてたら肝心な時に疲れちゃうっすよ。気を引き締めることは大事っすけど、そういうことは街を出る前にしたらいいんすよ」


 リリアさんの言葉を聞いて、俺は全身に力が入りすぎていることに気がついた。ゆっくりと深呼吸を繰り返して、身体の力を抜いていく。昨日のアクシデントもあってか、どうやら気負いすぎていたようだ。


 「リリアさん。ありがとう」


 俺は、リリアさんにお礼を言う。


 「気を抜ける所は、抜かないと疲れちゃうっすからね。それとまだ言ってなかったっすけど、今回のユーゴさんの依頼私も同行するっすからね!」


 リリアさんは、俺にそう言ったのであった。

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