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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第一章:ハジマリのまち
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もふじゃらしの魔力

 「これがもふじゃらしです!」


 リーゼがそう言って、掲げたもふじゃらしを俺は見てみる。それの中心部から先っぽに至るまでが、もふもふに覆われている。そして、先っぽにいくにつれて、それは丸みを帯びていて、まるで毛並みを整えた後のコンの尻尾に近い。ようは、とてもモフモフしていて、モフりがいがありそうなのだ。

 少しの間、もふじゃらしに魅かれていた俺だが、ハッと自分を取り戻すと、すぐさま顔を横に振ってもふじゃらしを頭の中から一度追い出す。


 「これがもふじゃらしの魔力か。なんて恐ろしいもの(いいもの)なんだ」


 俺は、ポツリと呟いた。そして、ふとコンの方を見てみると、コンは食い入るようにもふじゃらしをみている。今にも飛びかかっていきそうだ。実際、リーゼが上に掲げているもふじゃらしに向かって手が伸びかけている。

 コン、お前ももふじゃらしの魔力にやられたのか、と俺が思っていると、リーゼから声をかけられる。


 「コンちゃんもそうですが、ユーゴさん夢中になって見ていましたね。でもですね、これはこうやって使うんです」


 リーゼは、そう言って、もふじゃらしをコンの前まで持ってくるとそれを左右に振り始めた。コンも顔と尻尾を振りながらもふじゃらしを見ている。そして、コンは、狙いをつけてもふじゃらし目掛けて一気に飛んでいったのだ。しかし、間一髪彼女によって、避けられてしまった。コンは、再びもふじゃらしを狙い始める。

 そうして、リーゼはもふじゃらしを使って、コンと戯れながらも俺に話しかけてくる。


 「もふじゃらしは、モフリストにとって必須のアイテムと言われているのですが、それはこうしてもふもふちゃんと戯れることで、仲良くなる為なんです。もふじゃらしには、もふもふちゃん達が好むエノノノコ草に含まれる成分を素材にしていますので、初心者モフリストさんたちが相棒と仲良くなるためのきっかけに使われることが多いみたいですね」


 彼らだけでなくベテランさん達も愛用してるんですけどね、と彼女は付け加えて言う。


 「そうだったのか。あ、もしかしてリリアさんが言ってたエノノノコ草はモフリストにとって必須の素材って、もふじゃらしが作れるからということだったのか」


 俺は、ふと依頼を受ける時に言っていたリリアさんの言葉を思い出して、一人納得した。確かに、俺はまだまだかけだしなので、コンともっと仲良くなるためには必要なものなのかしれない。


 「おそらくそうだと思いますね。ただ、エノノノコ草は、モフリストにとっては他にも使い道が多いんです」


 私もあまり詳しくはないんですけどね、とリーゼは言う。彼女によると、これらはあくまで基本的なことらしいので、詳しくとなるとモフリスト専用のギルドで説明してもらった方がいいそうだ。幸いにも俺は、明日もふもふさんのいるモフリスト専用ギルドに行くことになっているので、時間があればその時に詳しく聞いてみたらいいだろう。



 リーゼは、コンと戯れていたもふじゃらしの手を止めて、俺の方へとそれを差し出してきた。さっきまでもふじゃらしで遊んでいたコンは、少し名残惜しそうに彼女の方を見ている。


 「ユーゴさん。先ほどぶつかってしまったおわびと言ってはあれですが、こちらを差し上げますね」


 これでもっとコンちゃんと仲良くなってくださいと彼女は言う。

 それに対し、俺は彼女から色々ともらってばかりだなと思いつつ、少し申し訳なさそうに答える。


 「リーゼ、ありがとう。でもさすがにただは申し訳ないからお金払うよ」


 「いえいえ、大丈夫ですよ。先ほどのおわびですから」


 俺は、リーゼにお金を払おうとしたのだが、彼女は頑なにそれを拒否する。それならと、昨日のブラシのお金を払おうと思い、金額を彼女に聞いてみた。しかし、彼女は大丈夫ですの一点張りで、むしろ今日稼いだ分は置いといて、ブラシのお金は貯まってからで大丈夫ですと言われる始末である。

 結局のところ、俺は使い道が多いらしいエノノノコ草数束と、先ほど買ったばかりのポムポムを一つ彼女にお礼として渡すことで落ち着いたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ユーゴまで魅了されてる笑 みんな優しいけど、ただで貰うのはやっぱり気が引けますよね。対等な関係でいたいからこそ、対価はきちんと払いたい。優しい人たちと健全な関係を壊したくないから……
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