もふじゃらし
俺たちは、先ほど買ったポムポムを魔法の鞄に入れると、お店を出た。そして、再び宿へと向かって歩き出す。やはりこの辺りは、色んなお店が並んでいて、とても賑わっている。お金がもう少し手に入ったら、じっくりと見てみたいところだなと思っていた時だった。目の前の方から誰かが猛スピードで走ってくる。
「うわっ、なんだ?とりあえず避けないと」
そう思った俺は、横へと避けようとする。しかし、戦闘になれているわけでもないので、反射的に動けるはずもなく、見事に激突してしまったのだ。
「うわっ!」
「きゃっ!」
お互いの短い悲鳴が飛ぶ。
激突した衝撃で、身体が倒れていく途中の俺は無意識的にコンを抱きかかえて、衝撃から守る。そして、そのまま背中から倒れてしまった。地味に痛いが、胸の中のコンは無事なようでホッとした。
なんだか前も似たようなことがあったなと思いつつ、俺はぶつかってきた相手を見る。
「えっ?リーゼ?」
「ご、ごめんなさいです。えっ?ユーゴさんですか?」
どうやらぶつかってきた相手は、リーゼであった。彼女も俺と同様に倒れていたが、彼女の後ろ側をスラちゃんがクッション代わりとなって守っていたので大丈夫そうだ。
彼女は、何度もごめんなさいです、と謝って頭をぺこりとさせていたが、俺の姿を見ると少し驚いた表情を見せた後、申し訳なさそうな顔をして、再度謝ってきたのだった。、
「ユーゴさん、ごめんなさいです」
ごめんなさいですマシーンと化したリーゼをどうにか宥めて、俺たちは市場を抜けて広場へと来ていた。近くにあったイスに俺たちは、腰をかける。
そして俺は、彼女に向けて口を開いた。
「なりゆきでここに来ちゃったけど、リーゼは急いでいたんじゃないのか?」
「いえいえ、大丈夫です。今は急いでないですから」
あはは、と笑いながらも若干ばつが悪そうに、大丈夫だというリーゼ。そして、彼女は自分のかばんから何かを取りだすと俺に渡してくる。
「ユーゴさん。これ私が作ったポーションです。軽いけが程度ならこれで治りますし、疲れも少し楽なりますので、ぜひ飲んでみてください」
「ありがとう。せっかくだからいただくよ」
俺は、そう言って彼女からポーションを受け取った。そして、一気に飲んでみる。すると、シュワシュワっとした感覚が口の中に広がると同時に甘さがやってきて、とてもおいしい。
「あれ?背中の痛みが引いたような気がする」
そして、気が付くと背中の痛みが消えていたのだ。この世界のポーションがどの程度のものなのかは分からないが、これはすごいシロモノだ。俺がそう感心していると、その姿を見たリーゼがちゃんと効いたみたいでよかったです、と言いながらニコニコとしていた。なんだか彼女にうまいことごまかされたような気がする。
その後、俺はリーゼと話し始める。俺が受けた依頼の話を聞いたリーゼは、俺に向けて口を開いた。
「ユーゴさん。エノノノコ草を二束程貸して頂けませんか?」
「いいけど、何に使うの?」
俺は、彼女に尋ねた。すると、彼女は、ニコニコとしながら答えたのだ。
「これを使ってある物を作りますので、楽しみにしててくださいね」
彼女はそう言うや否や、かばんから小さな窯のようなものを取りだし、そこにエノノノコ草を入れた。そして、今度は何かしらの液体の入ったフラスコを取りだすと窯の中に入れる。すると窯の中は、煙ですぐに見えなくなってしまった。
「ここをこうして、あれがこうなって」
リーゼは、ぶつぶつと呟きながらどうやら窯の中を混ぜているようだ。そして、しばらく混ぜていたリーゼが突如として叫んだのだ。
「スラちゃん今です!」
彼女の合図を機にスラちゃんは、窯の方へと飛びかかったのだ。
正直、俺から見るとスラちゃんが何をしているのか全く分からない。
そうして、しばらく彼女たちの作業を見ていると、徐々に窯の中の煙が晴れてくる。そして、彼女は窯の中に手を突っ込むとそのまま何かを取りだして言ったのだ。
「できました!これが、もふもふちゃん達を虜にする成分を含んだエノノノコ草から作ったもふじゃらしです!」
そう言って、リーゼはもふじゃらしを掲げたのであった。
明日は、投稿できそうにないので、次回更新は木曜日です




