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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第一章:ハジマリのまち
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VS角うさぎ~コンの片鱗

いつもより少し長めとなっています。

それではどうぞ

 目の前の草むらからガサガサと音が聞こえて来る。そして、風も少し吹き始めてきた。タイミングといい、なんとも嫌な雰囲気を感じさせる風である。俺は、そう感じたのだ。


 ガサガサという音は、徐々に大きくなってきた。これは、本格的にやばくなってきたかもしれない。音が小さいうちは、静かにやりすごせば、なんとかなりそうだと思っていたのだが、その判断はどうやら正しくはなかったようだ。

 俺は、急いで魔物よけをを取りだすと思いっきり地面に叩きつけた。その瞬間、魔物よけからたちまちにモクモクと煙が立ち上り、その場が煙に覆われてしまったのだ。


 「今のうちに逃げなきゃな」


 俺は小さくそう呟くとコンを連れて逃げだした。しかし、俺が動き出したと同時に俺の横を何かの影が通り過ぎる。それがかすっただけなのであろうが、俺の足に一本の線が入り、そこから血が出ていたのだ。大した怪我じゃないことにホッとしていると、俺たちが逃げようとしていた方向からドォンと大きな音を立てて何かが倒れていた。その方向を目を凝らしてよく見てみると、それは木であった。根元の横側が大きくえぐれている。それに気付いた瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。


 「なんて威力だ!」


 言葉がぽつりともれる。かすった程度なので、あの程度で済んだが、もし直撃していたら足が一本もっていかれていただろう。俺の中で恐怖の感情が強くなってくる。正直、今すぐにでも叫んで走り出したいほどには強くなってきている。しかし、俺の肩に乗っているコンが、落ち着け、気を失えばやられるぞといわんばかりに必死に俺の顔をペチペチとしている。そのおかげで、なんとか自分の中に涌いてくる恐怖を抑えられているのだ。


 あの影の生物がどこにいるかは、確認できないが、おそらく俺が今見ている方向にはいるだろう。後ろを向けば今度こそやられてしまうかもしれない。かといって、動かなければいずれやられてしまうのは、目に見えている。そう思った俺は、目の前の方向をしっかりと見ながらも少しずつ後ろへと後退していく。

 そして、少しだけ下がりきった時、嫌な感じのした俺は、コンをしっかりと抱きかかえながら横へ寝転がるように飛びこんだ。それと同時に俺の横を再び影が通り抜けていく。なんとか回避できたようだ。俺は即座に立ちあがり、態勢を立て直す。


 「なんて速さなんだ!」


 俺は、心の中で叫ぶ。今回はなんとか避けることができたが、次もそうだとは限らない。それにしてもあの影の生物はなんなのであろうか。そう思っていた矢先、煙が少しずつ薄れてきて、件の影の生物の姿が徐々にあらわになってきた。その生物はうさぎだったのだ。いや、正確にいうと一本の角を持ったうさぎである。

 俺は、その姿を見て驚いていた。見た目は、とても愛らしいのだが、その身にとてつもない力と速さを兼ね備えているのだ。まさにファンタジーという他ない。しかし、気のせいであろうか。このうさぎこそが現在の脅威であるというのに、その後ろからとてつもない大きな力が感じられるのである。


 俺と角うさぎがにらみ合っていると、俺の肩からコンが飛び降りた。


 「こゃーん!!」


 そう一声鳴くと、尻尾を高く上げ、臨戦態勢となる。

 そして、その声につられたのかあるいはコンの方を敵と認識したのか、俺から目を離しコンの方へと向き直る。


 「コン!まさかお前戦うつもりか」


 俺は、角うさぎの方を警戒しつつもコンへと問いかける。すると、コンは一つ頷いた。そして、コンの尻尾の先から青い球状のようなものが浮かび上がってきた。コンは、それを投げつけるようにして角うさぎに放ったのだ。放たれた球のスピードは申し分ないほどに速い。しかし、こと速さに関して角うさぎの方が一枚上手で、驚異的なスピードで横に避けたのであった。そして、避けられた球は角うさぎがいた場所に当たると小爆発を起こし、地面をえぐりとったのだ。どうやら、威力に関して言えば、同等もしくはそれ以上っぽいようである。これは嬉しい誤算である。当りさえすればなんとかあの角うさぎを倒せそうだ。後は、どうやって当てるかだが、先ほどの攻防を通して少し見えてきたことがある。


 「コン!」


 俺は、再び尻尾の先に青い球を浮かべていたコンの名前を呼ぶ。角うさぎの素早さが脅威である以上、悠長に話している暇はない。俺は、コンとのつながりを信じて、その目に語りかける。少しの間、見つめあっていた俺たちだが、任せろと言わんばかりにコンは尻尾をふり、角うさぎの方へと目を向けた。おそらく俺の作戦は、伝わったであろう。ここを生き残るために俺とコン二人分の力が不可欠になる。俺は、自分の頬を軽く叩いて気合を入れると作戦を開始したのであった。



 コンが、角うさぎをけん制してくれている間に俺は、石ころを拾い始める。そして、ある程度集め終わると、俺はコンに指示を飛ばす。するとコンは青い球を角うさぎに放つ。それと同時に俺も石ころを投げた。角うさぎが逃げるであろう場所にだ。案の定、角うさぎはコンの攻撃を避ける為に自慢のスピードで横に避ける。しかし、そこで俺の石ころにあたったのだ。ダメージ的には、少ないであろうが、何が起こったか分からない角うさぎは混乱している。角うさぎが落ち着く前に俺たちは、石ころと青い球を使って追いこんでいく。青い球は相変わらず当らないが、俺の石ころが次々と当たり、少しずつではあるがダメージが入っていく。

 そうしてしばらく続けていくことで、角うさぎは弱っていたのであろう。コンの青い球が見事に命中したのであった。


 俺は、おもわずやったかと言葉に出しそうになったが、グッとこらえて、角うさぎの方を見る。すると、角うさぎは倒れ伏していたのである。どうやらなんとか倒しきったようである。

 俺は、コンの方へと近づいていき、喜びを分かち合おうとした時であった。目の前の草むらから大きな熊のような生物が出てきたのである。その熊から放たれる圧はとてつもなく強いもので、俺たちが満身創痍なのを抜きにしても到底及ばない物である。

 俺が、絶望を感じ、ここまでかと半ばやけに諦めたところ、突然人影が飛び出し、その熊を一刀のもとに両断したのである。そして、その人、俺たちの方を向くとこう言ったのだった。


 「あなたたち、大丈夫だったかしら?」

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― 新着の感想 ―
[一言] コンちゃんのnewスキル!強い!! 連係プレーで撃退したけど、さらなる強敵が……一刀両断された!? この人は何者?
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