はじめての依頼
「えっ?」
もふもふさんからの思わぬ言葉に俺は、衝撃を受けて思わずまぬけな声が出てしまった。もふもふさんから誘ってもらえたとか、モフリストのギルドって何だなど、頭の中は絶賛混乱中である。
そんな俺の様子を見ていた彼は、少しだけ申し訳なそうな顔をしながら俺に言葉をかける。
「ふむ、いきなり言われてもわからんかったじゃろ?すまんのう。このことについては、明日リリア嬢から聞いてくれるかの?」
あの娘には、伝えておくからの、と付け加えて彼は言う。
そして、そんな言葉に対し相変わらず混乱中の俺は、こう答えていたのだった。
「はい。わかりました!」
そうして、俺ともふもふさんは別れたのだが、彼がいなくなってから少し落ち着きを取り戻した俺は彼の言葉を思い返す。
「ん?リリアさん?ナンデ」
もふもふさんの言葉にリリアさんの名前が入っていたことに気づき、思わず声をあげてしまった。そんな俺の様子を見ていたであろう頭の上にいたコンは、自らの尻尾で、俺の顔をペシペシと叩く。まるで、お前はいい加減落ち着けと言わんばかりである。そんなコンの行動によって冷静さを取り戻した俺は、おとなしく宿へと戻っていたのである。
夜が過ぎ、朝を迎えた。この世界で、二日目の朝である。
俺たちは、朝食を食べ終えるとギルドへと向かっていく。宿からギルドまでは、少し離れているが、道のりは、比較的単調である。とはいえ、昨日初めて通ったばかりの道なので、地図とおぼろげな記憶を頼りに慎重に周りを確認しながら進んでいく。
そうして、進んでいくと見覚えのある建物が見えてきた。ギルドだ。どうやら無事辿り着けたようだ。相変わらずギルドに出入りしているのは、ごつい冒険者ばかりである。俺はひとつ深呼吸をすると、ギルドの中へと入っていった。
俺は、中へ入ると一直線にリリアさんのいるカウンターへと向かっていく。そして、そこに辿り着くと彼女は、机に突っ伏していた。おそらく彼女は寝ているのであろう。昨日見たときよりもなんともやるきのない姿だ。
俺は、彼女の元へ近づいていき、肩を軽くゆすりながら声をかける。
「リリアさん。起きてください」
そうした瞬間であった。
「ニャアアア!」
彼女は奇声を上げながら飛び起きたのである。彼女が、周りをキョロキョロと見回すと俺と目があう。そして、まるで何事もなかったかのように俺に話しかけてきたのである。
「ユーゴさん。おはようっす」
彼女が一瞬にして落ち着きを取り戻したのをみて少し呆気にとられていたが、すぐに戻ると挨拶を返した。
「リリアさん。おはよう」
俺は、リリアさんに昨日の仕事の件ともふもふさんから言われたギルドのことについて尋ねる。
それに対し、彼女は答える。
「了解っす。モフリスト用のギルドについては、後に回して、先にお仕事について教えるっすね」
そういうや否や彼女は、下から一冊の本のようなものを取りだしてきた。彼女の説明によると、大きく分けて、探索・採取と討伐の二つの仕事をギルドから紹介しているらしく、その冒険者事の職に分けて妥当な方を勧めているらしい。
「ユーゴさんは、モフリストっすからこの採取クエストからがいいっすよ」
そう言って、彼女が開いたページにのっていたのは、エノノノコ草の採取であった。
「このエノノノコ草は、モフリストにとっては必須と言われるほどの素材っすからまずはこれがいいと思うっすよ」
どうっすか?と彼女は聞いてくる。俺にとっては、このエノノノコ草がどういったものかは全く分からない。しかし、俺が迷い人だと知ったうえで勧めてくれてるだろうからまずは、これから始めるのがいいのだろう。そう思った俺は、リリアさんに返事をする。
「わかった。じゃあこの依頼を受けるよ」
その言葉を聞いた彼女は、じゃあこちらで受理するっすねと言って、その依頼のページに俺のギルドカードをかざしたのであった。




