表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/43

切り開く道

 そうして事件が起きたのは、ロイたちの地下第七層の探索が順調に進んでいたと思えた、その矢先のことである。


「ロイ、大変よ!」

「どうしたんだ?」

 アリーナが宿に走りこんできたのだ。


「騎士団に行って! 名指しで依頼が着たわ。この国の大臣から!」

「なんだって?」

「お姫様、ソフィア姫が魔物にさらわれたの」

「それで?」

 ソフィア姫がさらわれた、それはわかる。だがアリーナがここまで慌てる理由がわからない。


「『それで』って、そんな人事みたいに! お姫様よ!? もっと他に言い方あるでしょ!?」

「いや、それはそうだけど……」

「あたいのお姉ちゃんなのよ!」

「え?」

 お姉ちゃん……もしかして、それはソフィア姫のことを指しているのだろうか。だとしたら、目の前にいる銀髪の森妖精アリーナは──。


「お姉ちゃんを助けて! お姉ちゃんを助けてよ、ロイ、お願いよ……! やっと見つけた血のつながった身内なの。この前見て、ああ、この人がお姉ちゃんなんだって嬉しく思えたわ。それが、どうして魔物なんかにさらわれなきゃいけないのよ!」

「と、言うことはアリーナお前、まさか……」

「そうよ! あたいの名前はイーリス。イーリス=レギーレ=オリーヴィア=ガストルン。王家の呪われし取替え子(チェンジリング)よ!」

 ロイはすべてを察した。アリーナは嘘を吐いてはいない。だとすると、いや、そうでなくても急ぐべきだろう。事は一刻を争うに違いない。


「急ぐぞ! 俺は団長の話を聞きに行く。話を聞いて突入だ。アリーナは他のメンバーを集めておいてくれ。ああ、アリーナと呼び捨てはまずいな、これからはアリーナ姫とか、イーリス姫と呼ばないと……だよな?」

 ロイはどもる。


「今まで通り、普通に接しなさいよ!」

「いや、あの……普通に? 構わないのか……ですか?」

「アリーナと呼んでよね!」


 ◇


 突入すると集合をかけて、数刻と経っていない。

 ロイはエクスにもしもの時の作戦を伝えた。


「エクスさん、今の作戦でお願いします」

「ロイ、魔王と出くわしたら、今の作戦通りで行くぞ? その作戦でいいんだな?」

「ええ、構いません。エクスさんが頼みです。どうかそれまで、生き抜いてください」

「不吉なことを言わないでくださいロイさん」オーロラがロイをなじる。

「すみません」

「安心しろ、俺は殺されても死なないさ」

 オーロラは力を抜いて、エクスにしな垂れかかる。

「ロイ、お前が護ってくれるんだろ?」エクスはオーロラを抱いたまま、片目を瞑り、

「もちろんでエクスさん」

「頼むぜ、隊長!」ロイの答えに応じた。


 ◇


 迷宮は地下第七層に降りる。

 そしてすでに、ここは第七層の奥深く。ロイらはそこで赤き炎を見る。


 小山のような影があらわになる。たいまつの炎が照らすのは、赤き竜(レッドドラゴン)、その名も高き火竜ファイアドラゴンであった。竜は炎の息を吐く。ロイらは守りの盾(イージス)をかざして炎から身を護る。魔法の盾は、竜の鼻息を浴びても燃えはしなかった。ガラムズとアリーナも守りの盾(イージス)をかざしてその陰に潜む。ロイらは距離を詰めて竜に挑んだ。アリーナの投擲紐スリングが遠心力を持って赤き竜の頭部を狙う、竜の目の下に当たり瞼が閉じられる、その隙を突いてロイが跳びかかり、竜の胸を狙った。竜は前足でこれを防ぐも、ロイの雑種剣バスタードソードは深々と食い込み、皮を、肉を、骨を断ってついには足が切り落とされる。迸る竜の血、血を吸う雑種剣バスタードソードと浴びるロイ。竜の悲痛な咆哮、オーロラが悶え苦しむ、ガラムズは戦の歌を歌い、オーロラは嘘のように我を取り戻した。

「これでおわりだ!」

「光よ! 終末を!」

と、迸るは白き光の奔流。皮膚を焼いて、肉を焼く。爆発。骨が千切れ、竜の巨体は融け崩れる。それでも竜は鉤爪を振り上げ、ロイを切り裂く。切り裂かれるも、ロイは流れに沿うように、血を垂らしロイは雑種剣バスタードソードを流して、竜の胸元、ロイは雑種剣バスタードソードを突き上げる。雑種剣バスタードソードは首を串刺しにする。赤き竜(レッドドラゴン)は血と炎を喉から吹き出して、自らが炎に呑まれるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ