遺跡探査
遺跡探査とは名ばかりの、魔物を見つけては撃破するイタチごっこは続く。
「光よ!」
「これでもくらえ!」
二条の光が敵を撃ち、轟音とともに爆発四散させる。馬型の敵は沈んだ。
「敵、倒すと拙いんじゃないんですか?」
「あれは絶対仲間にならない種ですから」
「そんなものですか?」
「はい、そんなものです」
「エクス?」
「オーロラの言っていることに嘘は無い。ま、どうでもいいから先に進むぞ」
◇
「大目玉相手に話が通じるわけ無いだろ?」
「やってみなくちゃわからないわ。なにごとも実践よ!」
「バカ、やめろって!」
「こんにちは」
『dcskどdふぁpそ:あ:!』
「あの、あなたの力を化して欲しいことがあるの。ええと、なにもただとは言わないわ。ここに、あなたの気に入りそうな美味しい肉を用意したのだけれど……」
『けfんmwkふぉwfんkどf!』
「……ええと、それって……」
「バカ! 伏せろ、これでもくらえ!」バックべアードの虹色光線をオーロラが浴びると石になり、エクスの放った白色光線がバックべアードの目玉を射抜き爆発四散させる」
「ほうら、言わんこっちゃ無い」
「すみません、ガラムズさん。オーロラさんの治療をお願いします」
「この連中の中には治癒士はおろうに」
「石化解除ほどの高度な奇跡を使えるのは、信仰篤きガラムズさんしかいないそうです」
「使えん連中じゃな」
「言葉には気をつけて。旅の飯を共にする仲間です」
「そうじゃったの。同じ杯で酒を呑みまわす仲じゃたわい」
◇
「やめろ、淫魔相手に話が通じるわけ無いだろ!? 上手い具合に騙されるのがオチだって!」
「あの、あなたに素敵な贈り物があるんですが」と、宝石を渡す。
『まぁ 悪くはないわね』
「お願いです、私たちに力を貸してはいただけませんか、お願いします」
『へぇ そんなにアタシがいいわけ?』
「はい、あなたしかいないんです!」
『いい加減飽きたわ イっていいわよ』
「そんな!」
『アタシに殺されるのよ 光栄に思いなさい!』
と、火の玉が迫ってくる!
「危ない!」ロイが雑種剣を抜き放ち、火の玉を切って落とした。
『そんな、爆発しないだなんて!』
「残念だな」と、ロイの雑種剣が悪魔を貫く。悪魔はその場に崩れ落ちた。
◇
「バカ、合成獣相手に話が通じるわけがないだろ!?」
「やってみなくちゃわからないわ。なにかあったとき、手助けをお願い」
「わかったよ」
『挨拶とは殊勝なこと、礼節を心得ておるな?』
「あなたの力が必要なの、手を貸して欲しいの。この肉をどうぞ。力がつくと思うわ」
『どれ……これは! 得も言われぬ 至高の品! 感動した!』
「お願いできるかしら?」
『我が英知 汝とともにあらん よろしく頼む』
「ありがとう!」
◇
「やったわエクス。合成獣が仲間になってくれたの」
「信じられねぇ……」
と、オーロラが不用意に合成獣の背を撫でたその瞬間、
『我が逆鱗には 触れぬ方が 身のためだ』
「え?」
『小癪な奴だ 死んでわびるがよい』
「ちょ、」
竜の首より炎が馳せる。途端に部屋の周囲は炎に包まれ、山羊の首より邪悪が漏れて、ロイらの肌を凍てつく冷気が焼いた。獅子の咆哮、光る牙。
牙はオーロラの太ももに食い込み、
「これでもくらえ!」エクスの魔法が合成獣を焼き、牙が離れる。赤に次ぐ赤、塔の治癒士がオーロラを癒す。竜の首、放たれるのは再び火炎、ロイらは盾にて防ぎつつ接近を。山羊頭も再び氷の魔法。ロイは足に焼け付く痛み、ロイらの足元が凍りつく。
獅子の雄叫び、ロイは雑種剣を抜刀し、合成獣に挑む。
横殴り、山羊頭が飛び、縦割り、竜の頭が潰れた。喚き散らす獅子の喉に投擲弾が飛び込み、咽たところをロイの雑種剣が刺し貫き、エクスの光を浴びて獅子の頭は爆散した。合成獣は一度跳ねて、それきり沈黙したのである。
◇
魔物捕獲がうまくいかず、手の打ちようが無くなった<塔>の面々。
かれらは<塔>の危機を救うべく、もう一つの可能性に賭けてみることで話がまとまったらしかった。
「エクス、そしてロイさん、アリーナさん、ガラムズさん! お願いです、<塔>に来ていただき、塔の危機を救ってください、お願いします!」
「「「お願いします!」」」
一同がそろって四人にお願いを立てる。
「お願いです、どうかお越しください!」
「「「お越しください!」」」
ずっとこの調子だった。
「どうするんじゃロイ?」
「どうするのロイ?」
「どうにもこうにも……」
「俺は反対だ!」
初めから拒否しているエクスは別として、ロイ、アリーナそしてガラムズは困った顔を見せていた。
「そして、私たち塔の人間を救うとともに、人類の砦を死守してください!」
「「「死守してください!」」」
三人は顔を見合わせる。そして出した結論は一つ。隊長に一任すること。
「困っている人を見捨てることなどできません」
ロイは、オーロラら、<塔>の人間からの要請を受け入れることにしたのである。
◇
しかし、このロイの決定にエクスは強硬に反対するのだった。
「どうしてお前らと一緒に<塔>に行かないといけないんだ!」
「エクス、あんたが戦力だからでしょうに」
「アリーナ、お前は戦力外だろうが!」
「あたいにはこれ、投擲紐があるもん」
「そんなもの飛竜に何の役に立つというんだ!?」
「良いではないかエクス。頼られるうちが華じゃぞ?」
「知ったような口を利くなガラムズ!」
「エクスさんがみんなの希望だからです」
「ふざけるな、あいつらは俺が病弱だからと言って、ただそれだけの理由で俺を<塔>から追い出したんだぞ、それを自分たちの都合で、自分たちの身がちょっと危なくなったから呼び戻すなど最低だろうが!」
「エクスさんの気持ちはわかります」
「嘘付け!」
「いいえ、俺も追い出された経験がありますから多少なりとはわかるつもりです」
ロイは噛み締めるように言う。
「追い出された?」気勢をそがれるエクス。
「騎士見習いとして奉公していた家を、おれがその家のお嬢さんに手を出した、と言う濡れ衣を付けられて追い出されたのです。なまくらな大剣と王国金貨二枚を餞餞別に」
「そ、そうか」
「はい。ですから、エクスさんの憤りもわかります。ただ」
「ただ?」
「敵は魔軍というではありませんか。魔王の尖兵です。ここで俺たちが叩かずして他のだれが叩くと言うんです?」
ロイが、いや、ロイらが叩いてこそ希望が生まれるというもの。
ここでロイらが魔軍を叩く。そうすることで力なき人間が魔軍に、そして魔王に一矢報いることができるという証拠を民衆に突き付けることができるのだ。
「関係ない──」
「魔軍は間違いなく強敵でしょう。強い敵を倒して<塔>を見返すのではなかったんですか、エクスさん」
エクスは強敵との邂逅を望んでいたはずなのだ。
「お、おうよ」エクスが言いよどむ。
「飛竜の群れでは、役不足ですか?」