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魔導士

「俺はロイといいます。家名はありません。始めまして」

「ああ、エクスだ。俺も家名は無い。まあ、あっても意味のない記号の様なものだろ?」

 エクスの指摘に、ロイは頭を掻いた。


「そうですね。ボクは騎士見習いでした。騎士団にはいった今では騎士を名乗っています」

「ええと、俺は魔導士をやっている。始めは食い逃げで捕まって、衛士を十二、三人半殺しにした。そして気がついたら騎士団の世話になっていた」

 ロイの顔が引きるも、エクスはそうした反応に慣れているのかどうなのか、全く気にした様子は無い。

「で、この娘がアリーナ」

 値踏みするような目でエクスを見上げるアリーナがいた。


「あんたが魔法使い? 全然魔法使いっぽくないんだけど?」

「ぁあ!?」

 アリーナが言葉を発した瞬間、エクスの我慢袋が爆発した。だがそんなものは疑り深く、何事にも慎重なアリーナには通じない。


「魔法使いと言えば、もっと虚弱体質でひょろくさい末成うらなり瓢箪ひょうたんみたいなゴボウ男を思い描いていたのに」

「きょ、虚弱体質!? ゴボウ男!?」

 アリーナの暴言にエクスの堪忍袋かんにんぶくろが切れた。


「じゃあエクスさん俺達の仲間に──」

「待てよ! 待ちやがれその話!!」

 ロイが強引にまとめようとするも、すでにエクスには通じない。


「え?」

 

「俺は一言もお前らの仲間になるとは言っていない!」エクスはロイを指差して、

「お前ら、いやお前! 俺を仲間にしたければ俺と戦って勝ってみやがれ! 俺にお前達の仲間であることを体で教え込ませてもらおうか!!」と指名した。ロイはうろたえ言葉も無い。。


「勝負だコゾー!? いや、ロイ!」

「勝負!?」

 と言いつつも、ロイは冷静に考え始める。エクスは強い。<塔>出身の魔導士が弱いわけは無い。しかし明らかに普通の精神状態じゃない。油断を誘って隙を突けばあるいは──。


「頑張れよ、少年ロイ

「アリーナ! お前のせいだろうがどう考えても!」

 冷静な心がアリーナの余計な一言で吹き飛んだ。


「ごちゃごちゃ言ってないで表に出ろ! 戦え俺と!!」

「仕方ない、でもやるからには俺は勝つ! 勝たしてもらいます、エクスさん!!」

 ロイは思う。もっと考えておきたかったけれども、仕方が無い。せめて今の一言で相手が動揺してくれれば占めたもの──。と。


「言ってろガキが!!」

 エクスが言い捨てた。


 ◇


 そんなこんなで表に出てみた訓練場。見物人がチラホラと、遠巻きに眺めている。


「この、クソがこのガキが! これでもくらえ!!」

 突き出されたエクスの両手に光の束が収束し、矢を放つ。


「負けるか!」

 ロイは大剣グレートソードを構えつつも回避運動。光はロイの足元で着弾爆発した。


「外した!? またも外した、この俺が!?」

 爆炎で加速したロイは煙の中から現れて、やけくそ気味に地を蹴った。


「行けロイ! そこだ、やっちゃえ!!」

 アリーナの無責任な声援がロイを推す。エクスまでの距離が一気に詰まる。


「舐めるなコゾー、これでもくらえ、これでもくらえ!!」

 突き出されるエクスの両手。懐に飛び込むロイがいる。

 エクスの紡いだ呪文はロイの目の前で発動し──弾けた。

 大剣グレートソードが光弾を切り裂いた。鉄のやいばが高熱で蒸発、爆発する。


「痛てぇ!」

「ぐっ!?」

 二人は反発する磁石のように、お互い真反対の方向へと弾け跳ぶ。


「全く、どうして俺がこんな面倒なことする羽目に──ああ、そもそも俺が言い出したのか」

「まだ終わってない。俺はうご、動ける、俺はまだ動ける!」

 大文字に倒れたまま、なにごとか呟いているエクスを尻目に、ロイはまだ諦めていない。

 柄だけになった大剣グレートソードを捨てると、ロイはエクスに組み付いて躍りかかる。

 立ち上がろうとするエクスの内股に、ロイは足を掛けて引き倒す。


「負けを認めろエクス!」右手で殴り、

「負けたと言え!」左手で殴った。

 ロイに組み付かれたエクスは仰向けに倒れており、ロイに胸の上へと乗られて動こうにも動けない。

 ロイの打撃は止まらない。

 エクスの首は左に右に振れ続け、エクスがなにか言おうにも言葉が出ない。

 その間にもエクスはひたすら殴られて、ロイは今も拳を握る。


「ロイ、もうそのくらいにしてあげたら?」

 アリーナの声で我に返るロイ。

 見れば、エクスの手がロイのズボンを握ったまま伸びているのだった。

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