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BCO ~キャットハンド~  作者: 飛び猫
3/5

3 いつかの出会い


 ファミリア――ギルドマスターはBJさん、サブマスターはオツイチさん、メンバーは現在7人。

 コトハがそう言うとマユはナユの顔を見て、「ですって」と言い、ナユはそれに対して、「とな」と言い返す。

 この二人のやり取りは、"らしいよ"とマユの意があり、"なるほど"とナユの意がある。


 二人の中は三才からで仲良くなった理由は、名前の最後が癒という漢字が一緒だった――からではなく、泣き虫だったナユをマユがよく笑わせていたからだ。

 そんなナユマユとコトハは、小学校の四年生のクラス替えの時に出会う。

 ただのクラス替えで出会った三人は最初はただのクラスメイトだった。

 コトハはクラスでも浮いた存在のグループにいて、ナユマユとは話すきっかけさえも生まれない状況で半年が過ぎた。


 そんな関係だった三人だが、ある事が切欠で変化する。

 コトハに対するいじめがそのきっかけであったのは、とてもいいきっかけであったとは言い難い。


 仲良くしていたグループのリーダー的存在の女の子、その子が好きな男の子がコトハの事が好きであると噂が広がった。

 くだらないことだ――そう思えるが、子どもにとってそれは人生においてとても大事なことだった。


 子どもの殆どは将来ではなく今現在においてが全てで、その出来事はコトハに対するいじめの切欠になってしまった。

 ただ、いじめと言っても種類や程度に違いがあり、コトハの場合は無視――シカトに留まった。

 だが、身体に害が無いだけで、幼い心に対してそのいじめは残酷なまでに傷を付けた。


 グループからの孤立はクラスからの孤立にも等しいもので、コトハは一人でいる時間が増え、体育などの授業でもどこにも混ざれないでいた。

 そんな様子を数回窺っていたのがナユマユだった。

 特にマユはジッと観察してクラスの空気の流れを読むのに長けていたため、その状況の打破を一人模索してある時行動にでた。


 ある日の昼御飯、家の弁当を皆が広げる中、不意にマユは例の男の子に声をかける。


「○○くん拙者のこと好きでござるか?」


 その言葉にクラスの女の子は氷付き、男の子たちはソワソワとし始めた。

 男の子が顔を真っ赤にしてそれを否定すると、マユは続けて"じゃ、誰が好きでござる?"と言う。

 その男の子はある女の子の名前を出し、それがこのクラスではない女の子の名前であったため事はその場で終了した。


 その後少しの間マユは女の子に疎まれていたが、元々"不思議系"な彼女へのそれは長続きしなかった。

 その騒動でコトハに対する色々が解消され、ナユが体育の時にコトハを誘ってくることでコトハも一人ではなくなった。

 グループのリーダーも、マユナユのところにコトハが入ることに特に何も思わず、クラスに平穏が帰って来た。


 ナユに感謝したコトハだが、ナユ本人はコトハの感謝にある真実を告げた。


「ありゃ全部マユの考えだよ、マユが考えてマユが動いて私はただコトハちゃんに声をかけただけ、私も頭が良かったら助けられたんだけどな~」


 そう言って全てはマユの考えだと言ったナユ、それを信じて次にマユに感謝を言うコトハだったが、再び今度は"ナユの考えだ"と否定される。


「あのままだとナユ氏が噛みついていただろうから、拙者はコトハ氏を助けることを考えただけでござるよ、むしろナユ氏の行動で事が悪化しないように動いただけでござる、が、もし仮に拙者が動かずともナユ氏はコトハ氏を助けていたと思うのでござるよ」


 二人の言葉にコトハはが出した結論は、"両方に感謝する"というものだった。

 いじめが切欠の出会いだったが、三人は直ぐに打ち解けて親友と呼べる仲になった。


「ねーコトハは犬派?猫派?」


 仮想現実に生成されたリアルな犬と猫のモブを見ながらそう尋ねるナユに、小首を傾げアゴに指を当てて考えるコトハは答える。


「犬は小型犬なら、やっぱり猫がいいかな、時々かまってちゃんなところとか、あと――」


「「肉球とか!」」


 声が揃うナユとコトハは互いに笑みを浮かべる。


「じゃ、ナユちゃんとマユちゃんはどっちなの?」


「もち猫だね、"飼われてるんじゃない……飼わせてやってるんだ"って感じがいいよ」


 ナユの答えに続いてマユの答えを聞こうと、視線を向けたコトハは少しだけ驚きを表す。

 マユは渋い表情で二人を見ながらゆっくり声に出す。


「犬は……昔、発情した大型のに馬乗りになられて腰を振られたっきり小型の犬でも恐怖の対象で、猫は野良が怖いですぞ――どちらかと言えば飼い猫のあのプニプニがいいでござるな」


「プニプニって――」


「「「肉球!」」」


 三人の声が揃ったところで笑みが再び零れる。

 そうして、ナユが閃いたことがあった。


「そうだ!猫の手なんてどうかな?」


「何でござるか唐突に――」


「もしかしてギルドの名前かな?ナユちゃん」


 ナユはコトハを指さして頷く。


「猫の手……猫の手……孫の手みたいでござるな」


 マユの笑みにナユは自身の閃きがいまいちであることに気が付く。

 すると、コトハが再びアゴに指を当てて考える。


「う~んと、キャットハンドっていうのは――」


 コトハのセリフにナユは、「英語にしただけ――」と言うが、意外にもマユは「カワイイでござる!」と目を輝かせた。

 ナユは、「マユのセンサーに引っかかったか――」と呟く。


 その後、マユの"キャッツアイ"か"キャットハンド"の二択の質問に、ナユとコトハが後者を選んでギルド名が決定した。


「ギルド名の決定はいいけど、私たちまだお金無いよ」


 コトハの言葉にナユマユは顔を見合わせてワザと驚くふりをする。

 そうして、ファミリアのホームの前まできた三人は、ホームの呼び鈴を同時にタップした。


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