流れ星の夜に
登場人物紹介
浅間柚月 ♂(あさまゆずき)
高校一年生。運動はそこそこ、頭は学年トップ10入りするレベル。
ある日祖父の持っていた魔道書を読み、雷を操る魔法使いとなる。
退屈が嫌いで、心優しい性格。
浅間法之♂(あさまのりゆき)
柚月の祖父。
義理の妹、ばぁちゃんと真未と共に花火を見る。
氷室麗華♀(ひむろれいか)
高校二年生。柚月の通う学校の生徒会長で、氷を操る魔法使い。
冷静で頭脳明晰。コーンポタージュが大の好物。
篠宮真妃瑠♀(しのみやまひる)
25歳。
法之の知り合いで、扉に関する記憶を死後に引き継ぐ魔法と生命力を操る二つの魔法を持つ。
菊池とは腐れ縁。
菊池芽衣♂(きくちめい)
25歳。
情報屋を自称する真妃瑠の知り合い。
腐れ縁とは言っているが、心では信用している。
触れたものを反射したり、衝撃を吸収する絶対障壁という魔法を使う。
小畑亮平♂(こばたりょうへい)
高校一年生。
柚月の親友。
暑苦しい性格と顔面が特徴。
サッカー部のキャプテン。
知らぬ間に麗華と仲良くなっていた。
浅間真未♀(あさま まみ)
不死身の身体強化魔法を操る少女。
記憶を失っており、すでに亡くなっているものの魔力によって生き続けている。
本名は別にあるが、自らこの名前を名乗った。
ものすごいウブ。
番外編その1
流れ星の夜その1
「ユズゥ!!!いこっぜぃ!」
「ちと待てよ。なにそんな慌ててんだ」
玄関口で男がズタズタと地団駄を踏んでいる。
「だってよぉー!かわいい女の子いっぱいいるかもしれねぇべや!!!」
名は小畑亮平。
顔面の暑苦しい僕の友達。
「そうか?こんな田舎の祭りにかよ?」
今日は花火大会だ。
小さな規模だがここら辺の人々には親しみの深いイベントで、うちの学校の生徒も多く集まる。
夏休みの終盤に行われるこの花火大会は、毎年夏の終わりを告げるかのように思う。
「宿題終わった?」
「ふふん…今年の俺は違うぜ」
「おお」
「4分の1は終わってる」
「休みあと5日しかねぇけど」
夕日に照らされながら、少し離れた公園へと向かう。
公園といってもなかなかの大きさで、この花火を見るために多くの人が集まり、近くの歩道にはズラリと夜店が並んでいる。
「うぉぉい!!ユズ!俺、りんご飴食べてーー!」
「食べればいいだろ、別に」
「一緒に…食べよ?」
「彼女かおめぇは」
ガハハと笑うと、亮平はりんご飴を買いに駆けていった。
まだ花火の時間まで結構あるな…
古ぼけたベンチに腰を下ろし、携帯を見る。
氷室麗華:今どこ?
麗華さんからのメールだ。
もう公園に着いてます
今日は麗華さんに花火を見ようと誘われたのだった。
もちろん亮平も一緒に。
最近あの2人の距離も知らないところで縮まっているらしい。
自分としては、驚きだった。
あの麗華さんに亮平みたいな友達?ができるとは…
2人一緒?
返信が来た。
あいつはりんご飴買いに行ってます
なにそれ笑
売店にコーンポタージュはないと思いますよ
別に…いいもん…
「ユズー!麗華さんは!」
「まだ。てかお前、女の子探すんじゃないの」
「そうだ」
「麗華さんいるのに?」
「いやーぁ、麗華さんとユズは途中から二人だろ?」
「…は?」
「え?」
「おまたせ!」
不意に後ろから話しかけられ、急いで振り返った。
「麗華さん!こんちわっす!!」
「こんにちは亮平君、柚月君。なんの話してたの?」
「いやね、こいつは途中から麗華さ「なんでもないです!!行きましょう!」
強引に亮平の声を遮り二人を押しながら歩いた。
「花火、何時からだっけ」
「確か、7時ですね」
「まだ少し時間あるけど、どうする?」
「そこらへんの売店まわりましょうよー!」
「いいね!まわろ!」
こんな楽しそうな麗華さんは珍しい。
彼女のこんな笑顔を見るのは、久しぶりな気がする。
真未ちゃんとじいちゃんは、家からじゃ見えないのでばあちゃんの家で花火を見るそうだ。
亮平のりんご飴がボリボリシャキシャキとオノマトペを奏でている。
「なんかお腹すいてきちゃった…なんか食べる?」
「そうですね、ヤキソバとか」
「ベタだなぁオメェはよぉ!!牛串とか美味いっすよ」
「いいね」
「うん!」
まさか一年前は、この3人で祭りに来るとは思ってなかったな。
そもそも麗華さんとは出会ってなかったわけだし。
「二人とも宿題は?」
「後は読書感想文だけです」
「おー、流石柚月君。亮平君は?」
「パーペキっすよ。あと少しってとこっすかね〜」
よく言うよ、本当。
「え〜、なんか嘘っぽい」
「ええ!!」
空も少しずつ星が顔を出し、薄暗くなってきた。
「そろそろかな」
「ええ」
「ワクワク」
そのとき。
軽い爆発音のあと一筋の閃光が空を駆け上がっていった。
「うお!」
ドカン!!と広がった花弁が空を覆い尽くす。
無数に降る一つ一つが尾を引きながら垂れていく。
「綺麗…」
「でけぇなぁ!!!何尺だあれ!」
夜空に咲いた花は静かに消えてなくなった。
すぐさま二発目が上がる。
公園中からうぉ…や、おおといった声が聞こえる。
「ターマヤァァアア!!!!」
亮平の声がでかい。
「うるせぇな!!耳元で!」
残念ながら、僕の声は花火でかき消されてしまった。
胸を貫くような音と瞼に焼きつく迫力だ。
鮮やかな夜空のコントラストに、3人で釘付けになった。
少しずつ、夜も更けていった…