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(5)初めて識ること

 

「そう、悲しかったね・・・・・・・・・」


全ての話をジッと聞いてくれた少女は

そう言って、姫の身体を抱きしめてくれた。


姉姫たちと違って、その身体は少し骨ばっていて、

その指は下女達と同じようにガザガザだった。


それでも、その暖かさに涙が零れる。


「私は・・・・・・、私は、ただ、愛されたかった、それだけなのに・・・・・・」


そうだね、と少女は頷いた。

そして、優しく肩を掴むと、ゆっくりと姫の身体を持ち上げ、目を合わせる。

「でもね、諦めるのはまだ、早いんじゃないかな?」


え?、と首を傾げた姫。


私はね、と少女は微笑む。

「今日、死んじゃったんだ」


えっ、と目を丸くした姫。


そんな姫にくすりと笑う少女。

「酷い雪でね。スリップした車が突っ込んでくるのを見たのが最期」


クルマ?、と首を傾げた姫に、少女は微笑む。

「馬車、って言えば分かる?」


ええ、と頷いた姫。


そんな姫にまるで他人事のように明るく自分の最期を話す少女。

「馬車がね、突っ込んできてね。それでね、轢かれて死んだんだ」


でも、と戸惑う姫に、うん、と少女は頷く。

「気付いたら、ココに居たの。微かにね、助けてって声が聞こえてね。

なんだろう、って思ったらね。そしたら、ココに居た」


そうか、と姫は納得する。

確かに、何度も、願った、助けてと・・・・・・


きっと、少女は自分の祈りを聞いてくれたのだろう。



だからね、と少女は微笑む。

「死ぬ気になれば、ってよく言うけどね、そうだと思うんだ。


私もね、もし、今日が最期だって分っていたら、そしたら、

言いたい事、我慢していた事、諦めていた事、全部、全部やったのに。

もっと、生きたかった。時間が欲しかった、って、そう、思った」



だからね、と少女はその小さくて、ガサガサだけど、暖かな手で

姫の白く、傷一つない綺麗な手を包む。

「姫様もやれるだけ、やってみなよ。

その人を愛さなくてもいいよ。その人に愛されなくてもいいよ。


だけどね、自由に、自分の思った様に生きてみなよ。


誰かに許された範囲を犯さず、

誰かに許された人たちだけと付き合うのではなくて・・・・・・



姫様がしたい事をして、付き合いたい人と付き合って、

楽しく、そして、自由に生を精一杯楽しんでよ・・・・・・・・・」



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