(3)回想_2
ようやく、会えた傍仕え。詰め寄った姫。
「どう言う事よっ!!なんで、私を1人にしたのっ!!」
傍仕えは悲し気に顔を歪ませる。
「申し上げたように、この国の王太子妃となられる姫に仕える事が出来るのは
この国の者のみ。私たちの国の者はもう姫に仕える事は出来ないのです。
・・・・・・・・・私を含めて」
なっ、と姫は奇声を上げる。
「なぜっ、なぜよっ!!私の騎士は諦めた。でも、お前は、お前だってっ!」
傍仕えの服を掴んで、怒る姫の手を傍仕えは優しく包んで、
申し訳ありません、と小さく謝った。
なぜっ、と姫はその胸を叩きながら怒る。
「なぜ、教えてくれなかったっ!
お前までもが仕えられないってっ!!
なぜ、お兄様は教えて下さらなかったのっ!
あの女は私に婚約を申し込んだ3年前にはもう側妃に入っていたってっ!!
なぜよっ!!!」
クシャリと顔を歪めた傍仕えに
教えなかったのが故意だとようやく気付いた姫。
そんな・・・・・・・・・、と手を離し、フルフルと首を振って、後ずさる。
そんな姫に傍仕えは跪いて、許しを請うた。
「どうか、どうか、耐えて下さい。
婚姻さえ、そう、婚姻さえ済ませれば、それでよいのです。
両国の婚姻がつつがなく終わったという実績が・・・・・・・・・」
「お黙りなさいっ!!!」
髪を振り乱し、手あたり次第、傍仕えにぶつける。
そんな姫に傍仕えはただジッと目を閉じ、耐える。
周りに物がなくなり、肩で息をする姫は
いいわ・・・・・・、と呟いた。
そんな姫に傍仕えは顔を上げる。
姫は傍仕えを見ず、遠くを見つめまま、呟いた。
「私は、カレのただ一つになって見せる。
・・・・・・・・・どんなことをしても、ね・・・・・・・・・・」
姫、と傍仕えが何かを言いかけたが、姫は背を向け、命じた。
「出て行って」
それは、いつも、国で気に入らぬ者を遠ざける時にしていた仕草。
そして、それをされた者を姫は二度と視界に入れることさえしなかった。
傍仕えはそれを己にされた事に衝撃を受けた。
それでも、ギュッと目を閉じ、ただ、その背に呟いた。
「・・・・・・・・・お便りを下さい・・・・・・・・・
その時は、今度こそ、必ず、お迎えに参りますから・・・・・・」
願うように告げられた言葉にも答えず、淡々と姫は婚姻の衣装を整え始めた。
もう、姫の視界に傍仕えの姿は入らなかった。




