(2)回想_1
輿入れると、カレには既に側妃がいて、
しかも、カレは到着した自分の目の前で側妃を堂々と寵愛した。
聞いてない、帰りたい、と怒る姫に
誰より信頼する傍仕えが言い聞かせた。
「確かに、婚姻前に側妃を設けるなど、気分の良い物ではありません。
この件に関しては、事前連絡がなかった事を厳重に抗議しましょう」
「知っていたら、私は来なかったっ!」
姫はそう喚いた。
一目惚れだった。自分の王子さまだと思った。
でも、ただ一つ欲しいモノにしたのは、
ただ一つ欲しいモノにしてもらえると思ったから。
そうじゃないなら、要らない。
そうじゃないなら、欲しくない。
だって、そんなのフェアじゃないから、だから、もうこんな婚姻無効にする。
そう憤り、今にも馬車に乗り込もうとする姫に傍仕えが言い聞かせる。
「そんなに簡単に諦めていいのですか?
欲しいモノだったのでしょう?ただ一つ、欲しいモノだったのでしょう?
それを、こんなに簡単に諦められるのですか?」
だけど、と姫は不貞腐れる。
他の女性と愛を交わす姿を見て、あれほど輝いて見えた全てが霞んで見えた。
穢れて見えたのだ。
姫は潔癖だった。
そんな姫の頭を優しく撫でて、傍仕えはいつもの優しい笑みで言い聞かせる。
「カレは王太子です。側妃を持つこともまた、義務の一つ。
ですから、姫様の魅力でカレの心を縛ってしまえばいいのですよ?
姫様なら、それができるでしょう?」
傍仕えの言う事はいつも正しい。
でも、その時はウンと言えなかった。言いたくなかった。
不貞腐れて、俯く姫に傍仕えが言い聞かせる。
「どうしても、ダメだと思ったら、すぐに迎えに参ります。
ですから、どうか、婚姻まで半月我慢してみて下さい。
私の方でも、側妃となる方の事を調べてみますから・・・・・・」
ようやく、コクンッと頷いた姫。
半月間、独りぼっちだった。
何度も、傍仕えを呼んで、と喚いた。
でも、傍仕えどころか、母国の侍女すら呼べなかった。
癇癪を起こし、当たり散らした。
でも、結局、誰も来てくれなかった。
もう帰りたかった。もう嫌だった。
だけど、待てど暮らせど、
すぐに迎えに来ると言ったのに、傍仕えは来てくれなかった。
結局、婚姻の日をそのまま迎えた。