7話
二人で、今は廃坑の最下層に居る。
目の前には昇降機の機械、しかしながらその乗るべき板ははるか上にあり、『暗視』をもってしても見えることはない。
「ねぇ、どういうこと?」
「どういうことというとー?」
不審げなレイナに、訝しげに返してみる。
「こっちで昇降機操作出来ないって、それじゃどうやって戻るのよ!?」
「徒歩で、大体一週間もあれば戻れるからねー。」
レイナは青ざめているけど、これも訓練だからね。
後は、最初に聞いてくれればどういった訓練をするのか教えたんだけど、一切聞かれなかったからねー。
「あんた、そんな軽装でよく平気でいられるわね。
それとも自分だけは戻れるってことなの?」
幾分期待していみているが、流石にそれは違う、違うよー。
「ここには、蛋白源になる生き物が沢山いるしねー。
一週間くらいなら、野菜は無くてもなんとかなるもんだよ。」
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鉄串に幾つかの蛋白源を刺して火で炙る。
火については、問題ないことは幾度かの調査でわかっているし、その事も伝えている。
最初は火の危険と聞いてもキョトンとしていたけど、危険性の詳細を教えると、やっぱり罵倒されたー。
そして、今もまさに罵倒されているんだよねー。
「何よ、聞いてないわよ!
そんなもの食べるなんて、キモイキモイ!!
近づけないで、私は要らない!!」
現代日本人なら仕方ないんだけどねー。
何せ、鉄串には、ヤモリっぽいものはマシなほうで蜘蛛、百足、正体不明の虫などを焼いているんだから。
結局、レイナは離れて保存食を大事そうに食べている。
ああいうのは、いざというときに残しておいたほうが本来はいいんだけど、まあ逃げ道があればそうなるよねー。
レイナの立場ならそうするし。
一通り食事を終えると、そろそろ夜・・・・・・っても時間なんてここじゃよくわからないから、懐から懐中時計を取り出して確認する。
けどまあ、ここでまた問題が一つ出るんだよねー。
「寝るけど、どうするん?」
「どうするって、何を?
・・・・・・まさか、私の毛布を狙っているのなら、譲らないわよ!」
いや、フォローする人間がそんなことするわけないし、そんな事期待しないって。
それにだ、無言で鉄串を無造作に投げつける。
「ヒッ!
そ、そんなことしたって無駄なんだから!!」
いや、別にレイナを狙ったわけじゃないし、近くを掠めたわけでもないんだから。
指を刺してそちらを見せると、口を押さえてしゃがみこむ。
鉄串で固定されているのは、少し大きめの百足ー。
朝飯にする為に、火にくべて焼けたらとっておく。
「見張りの話だよー。
流石にモンスターが居ないとも限らないから。
後、火は虫除けにならないし、毒性のある虫もいるからねー。」
「そ、それなら私が最初に見張りするから眠ってて。
なんか眠れそうにないし。
なんなら毛布も貸してあげるから。」
「いえ、マントで十分なんで。」
そして、眠る前に『虫除け』『常温』『危険哨戒』といった野営用の魔術をこっそりとかける。
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訓練の期間を聞いていないって、おかしいと思わないもんかね?
後、若い男と暗闇にって、そこで危機感を持たないのもどうかとおもうし。
食事は、保存食を持っていったからまあよしとするかね。
減点はマイナス12と、プラス要因は今のところゼロか、そんじゃこっちの僕も寝るかね。
何か、なろうみてると、昆虫食が平気に思えてくる不思議。
けど、いざとなるとやっぱ無理だとおもう。