5話
特に問題もなにもなく廃坑へと到着する。
元々ここらへんは鉱山が多く、廃坑も多々存在する。
鉱山などがあると、河川の汚染がひどかったりするけど、こちらの世界は魔術があるおかげで処理はそこそこされている。
採掘をするのに、全世界的に魔術師を入れるのは義務になっており、それらを無視すれば当然ながら罰が与えられる。
採掘の監督が一作業員になるだけというパターンも少なくないよー。
「ここが、廃坑?
案外近いのね。」
町をでて、30分程度で到着する距離にある。
「ええ、出ないといろいろ困りますからね。」
「ところでさ、なんであんたはそんなに軽装なの?」
実際、ローブにワンド、リュックでそのリュックの中も大してものはいれてない。
「ああ、魔術師なんでこんなもんですよ。
それに、基本サポートですからね。」
「ああ、そう……。
それと、何か急に丁寧な話し方になって気持ちわるいんだけど・・・・・・。」
「失礼だなー。
職務についたら、当たり前のことなのに。
そんならこれからは、普通にはなさせてもらうんで、よろしくー。」
「うん、それのが落ち着く。」
色々と釈然としていないようみたいだけど、そのまま疑問はおさめてもらわないと進まないし。
他に聞かれても面倒だしねー。
それに、これからのことは事前の情報より実体験がものをいうのだから、些末な他人事より自分のこれからのが大事だよー。
すげー、大事だよー!
そして、廃坑にの入り口にさしかかる。
「えっ、きゃ、むぐむぐ」
「ちょっと叫ばないでなー。」
叫びそうになってたので、口をおさえる。
まあ、叫びそうになったんも仕方ないかな?
廃坑の奥の方からふたつに光が見えるし。
その高さは子供の人間くらいかなー。
モンスター、魔獣、魔物とか座学で聞いたせいで、襲われるとか思ってしまったんかね。
けど、こんなところにモンスターがいたら、速攻討伐されてないとおかしい話。
そんなことを考えてると、予想していた人物が明るい場所に出てくる。
子供くらいの大きさで、片手にはツルハシ、すこし煤けた感じのする衣服、そして犬の頭と尻尾と毛皮をもつコボルトという種族だ。
「はなしなさい、あれは敵よね、倒すわ!」
「え、あっしでやんすか?」
「いや、落ち着いて、彼は敵ではないですよ。
ちゃんと市民証を首からかけてますからねー。」
この世界には、当然ながら人族以外の種族も存在する。
そして、モンスターとも魔物とも言い切れない種族がいくつか存在する。
また、種族としては敵対的でも、個人においてはそれが当てはまらない者もいる。
そういった存在のために、市民証というものを個人に持たせている。
もちろん、そういった証は並大抵の努力では取得できない。
ゆえに、彼らは下手な人族よりも尊敬されることもある。
当然ながら、他種族を認めない輩もいるわけだが、そこら辺は割愛。
「ども、おひさーボルト君。」
「その格好に、匂いはソータさんでやんすね。
どうも、まいどよろしゅう。」
コボルトのボルト君は、ツルハシを脇において挨拶するけど、犬系だけあって姿形よりも匂いのが印象にのこってるんやねー。
確かに、人族に普通にコボルトを見分けるのが難しいように、コボルトも人族を見分けるのが難しいんかね。
「相変わらず廃坑を見回っているん?
コボルトといえば廃坑というくらいだし、落ち着くんだろうけどもうちょっと色々やったら?」
「いえいえ、あっしはあっしのできる範囲のことをやることで満足なんで。
そちらは例の転移者でやんしょか?
そうすると、なるほど・・・・・・ほなお近づきのしるしに一ついかがでやんすか?」
ボルト君は懐から石のようなものを取り出す。
コボルトの伝承では、銀を偽の銀にすりかえる悪戯妖精として知られている。
しかし、手に持っているのはただの石っぽいね。
第一、鑑定なんてそれ専門の職業でないと、いやその職業でもなかなかわからんよね。
武器の目利きができても、宝石の目利きができるわけじゃないしねー。
鑑定なんてスキルがあればなぁ・・・・・・。
「えっと、何これ?
私はどうすればいいわけ??」
「泥炭っす。
この廃坑でよくとれるっすよ。」
燃料でいうなら最低ランクのものだったりする。
しかし、他にお酒の香り付けなどにつかうなど、燃料以外の使い道も調べてわかってはいる。
けどまあ、そこまで生活に困ってないしねー。
下手に博打うつのも危険だし、機会見てだれかにやらせようとかね。
「いらないわよ。
それより、はやく廃坑での訓練とやらを終わらせましょう。」
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「はい、減点2だね。」
パソコンに向かってレイナの評価を打ち込んでいく。
今回の仕事はフォローと採点、それによる再訓練の検討というのが課題だ。
何も問題なければ、色々と便利な物を渡そうかと考えていたのだけど、それも大分後になりそうだ。
減点の理由は以下の通り。
・初対面で敵対行動
・情報を得られる相手をスルー
最初がこれでは先が思いやられるねぇ。