3話
パソコンに、今日の転移者の情報を一通り打ち込む。
担当した人間はこれで5人になるが、未だに望むスキルを持つ人間は出てこない。
ここは、現代の日本でいろいろな意味でぶっとんでいる世界だと思っている。
価値観、道徳観、宗教観等々が入り乱れていて、秩序がけっこうとれているという、混沌な場所だ。
それはおいといて、僕は大野相汰 大学一年生になるところだ。
幸い、現在はまだ休み中で、あちら側で事情聴取しながら授業をうけるようなことにならなくて済んだ。
こういった幸運は滅多にないので、有効活用させてもらっている。
情報をひたすら記述して、羅列させ、系統ごとに分ける。
人に見られたところで、ネタ帳とでもいえばいいことだ。
と、誰にでもなく説明しているが、これもいつものことだ。
1人暮らしを始めて間もないのに、既にこれが癖になってしまっている。
本来なら仕送り等で切り詰める生活をするのだろうが、両親から自立したいからと断っている。
しかし、実は、それなりの収入があるため不要というだけのはなしだ。
競馬、株、FX等で、大学4年間、普通に暮らすだけなら既に問題ないだけの額が溜まっているのだ。
ちなみに、僕にノウハウなんてものはない。
あるのは、情報だけだ。
担当した二人目の転移者が運の良い事に、少し先の時代の人間で、賭け事好きだったからだ、
その時は特に意識しておらず、惰性的に話をメモっていただけだったのだが、それがこの結果なのだからたまらない。
ただ、あまりやりすぎると色々目をつけられそうだし、下手に干渉して時代が変わりかねないので抑え気味にしている。
二つの身体をもっているがゆえに出来ることだ。
・・・・・・と一言で書いてみたが、わかりにくいだろう。
オレンジな忍者の影分身というのを知っているだろうか?
知っているなら話が早い、あれの意識同期をリアルタイムで行っていて、それぞれの身体が別世界にいるということだ。
どちらが本体ということもなく、どちらも本体だ。
生まれた時期は同じらしいが、片方が死亡したらどうなるのか等、疑問に思うことは多々ある。
しかし、ためしようが無いのだし、その時はいずれ来るとして考えないことにしている。
そんなことより、新転移者の教育を始めないとな。
面倒だけど、一ヶ月の我慢だ。
実際決まっているわけではないが、大体僕が担当している。
異世界、別世界、平行世界等々、創作物ででもなければ想像の範疇でしかない世界の人の相手というのは存外に疲れるものだ。
異世界物が流行っているせいか、日本人達の感性はどこか壊れている。
こんな世界でも何とか折り合いをつけていくんだからね。
大多数に迎合する体質からかもしれんね。
大多数がぼっちだから、ぼっちが増えてるとか?
そんな考察はいいか、それはともかく必要だろうものの準備をしておくかね。