2話
「どうもすいません。
かなり取り乱していたようで。
ようやく、何となくわかってきました。」
はあ、助かった。
結構寝込んでいたので、夕食の時間になってしまい、食事を運んできたんだけど、丁度そのときに起きて殴られそうになったよ。
いや、まあ殴りかかられたんだけどね。
それなりに鍛えてるし、色々な技もつかえるからこちらに着たばかりの一般人ならなんとでもなるんだけどさー。
せめて、御粥をおいてからにしてほしかったな。
おかげで、少しこぼれたよ。
もったいない。
土鍋で作ったお米の御粥なんだけど、これが結構旨いんだなー。
シンプルな塩味ながらも、無農薬で作られた米、しかも品種改良も盛んに行われてて、こちらの世界でも"こしひかり"などに匹敵するお米が使われてるからねー。
組み伏せて、何度か痛みに訴えておとなしくさせて、今ようやく話が出来るところにまで来ている。
ちゃんと手加減しているから、精々しばらく押さえつけた跡が残る程度かな。
話をしながらちょっと手をさすっているよ。
「うん、現状を理解しないとね。
それで、どうするにもまず、自分の能力しらんとね。
説明が難しいなら、この紙に一通り書いていって。
ああ、そうだ、嘘は駄目だけど秘匿は大丈夫だからねー。」
たまに、とんでもない能力を持つのがくるからね、そういうのは書かれてもこちらもスルーする。
最初の頃は取り込むことも考えられたけど、面倒だからねー。
「ええ、ありがとう。
書かせてもらうわ。」
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ステータス
名前:レイナ・ダテ
STR:15
VIT:20
DEX:5
AGI:20
INT:15
MED:5
Skill
パッシブ:自動翻訳(話/書),計算,身体能力向上(強)
アクティブ:格闘,短剣,魔術(火,破壊,粉砕)
状態:疲労(弱),精神衰弱(弱)
称号:なし
加護:武神の加護
転移前
国:日本
時代:2○○5年
職業:学生
趣味:アロマ
尤も印象的な事件:国内の××地方で、爆弾テロ、死者100人越え。
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なるほど、比較的未来からだね。
この情報は知らないし、時代も違うからねー。
念のためインターネットで調べるけど、こんな事件は今迄おこってないっと。
ってことは、これはいいねー。
けど10年以上先だから、忘れないようにしないとね。
将来はジャーナリストってのもいいなと、パソコンの前で将来のことを考える。
「それじゃ、今日はここに泊まってていいよ。
これからの事は、ちょっと相談になるかな。
悪くても、冒険者するだけになるから、そんなに気に病まないでねー。」
「あ、ありがとう。
そ、その、ごめんなさいね本当に。
とりみだしちゃって、後、詳しい話を後で聞かせてくれない?」
紙と鉛筆以外何もない机の上から、記述した紙のみを持っていく。
少しメモ帳程度の紙を残す。
「ごめんね、それはギルドマスターに聞いてね。
職員の1人なんで、確実でない事に対して話は返せないんよ。」
それだけ話して、1人部屋を出て行く。
何か言ってたみたいだけど、1人になるのが不安なんだろうなー。
けど、一度1人になって頭の中を整理してもらわないとね。
下手にこういうときに一緒にいると、依存されっからね。
それは、面倒だしねー。
紙をギルドの事務員に持っていき処理をお願いする。
「そんで、今度の奴はどうだった?」
「うーん、なんていうか、フツーだったよ。
今も暴れている『剛剣』みたいの、滅多にいないって。
けど、魔法がなんか怖い感じだね、そのうちテロリストになったりして。」
覚えてる事件がテロってことで、頭のなかで結びついたのか、ついついそんな事をいってしまい、事務員の人は軽く顔を引きつらせている。
けどまあ、あれなら大したことできないね。
第一、たいしたことする人ってこっちでも大した事をしてる事が多いしね。
雀百まで踊り忘れずってね、あれ? ちがったかね?
さてと、マスターにも報告しておかないとね。
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「ってかんじですけど、文書にしたほうがいいですか?」
ギルドマスターの部屋にきて、一通り転移者の対応を話ししても、鉄面皮のおっさんの表情は特に変わらないから、いつも何を考えているか判らない。
いかつい大柄のおっさんで、左手を冒険者時代に失っている。
それでも、そうそう敵うものがいないんで、なんだかんだでギルドマスターに上り詰めたわけだ。
「いや、それならそのままでいいだろう。
計算がスキルにあるなら、商人のところも引き取りたがるだろうしな。
ただ、折を見てきっちり伝えておけよ。
戻る方法は未だ見つかっていないことをな。」
実際そうなんだよね。
なんていうか、一方通行の扉、上がれない落とし穴、戻れない過去って感じで、こっちからあっちには絶望的だったりする。
今言うと、風船が割れたような感じでまた失神するか、良くて泣き出すかかなぁ。
とりあえず、今日の情報を一通り入力しておくかね。
こうして、慌しいこちら側の一日は終わった。