仔犬と仲間たち③
話が進んでない…。
「そういえば、何故急に腕立ての量を増やそうとしたのかな?普段から鍛練は、見回りの合間にしていたのは知ってるけど」
書類を送る部署ごとに分けていて、話しに参加していなかったケイロンさんは、不思議そうに聞いてきた。
私が持っていた分は量が少なかったから、既に分別済みだ。元より、持たせてもらった量は少なかったから直ぐ終わったんだけどね。
「さっき、いい掛けてたのって、それのことか?隊長との見回りの後で、何かあったとかか?」
そうでした!
「見回り中、別の分隊に所属する人たちに合ったんですが…」
かいつまんで、そのときにいわれたことを説明する。
「何というか…ひどい誤解を受けてるな」
眉間に皺を寄せていうのは、アルコル先輩。
「以前まではこの王都にいないのに、騎士団に入れたのが気にさわったのでしょう。試験を受け、他の志願者と同じようにして、ここに配属されたというのに……」
『やれやれ』と、いう雰囲気で苦笑するのはケイロンさん。
トゥーバンさんは無表情を貫きつつ、頭をぽんぽんと撫でてくれた。『気にするな』って、慰めてくれてるのかな?
「……」
目が合うと、無言で頷いてくれた。もしかして、考えていることがわかる…とか?
そういえば、私は顔に感情が出やすいらしい。…だとしたら、少し恥ずかしいかも。以後、気を付けよう。
「例え陰口のつもりでも、よくあのウルにそんなこといえるな。若いって、すげぇな」
ニヤニヤしているダバランさんだけど、私にはどういう意味かよくわからなかった。
『あの』って、どの?
「ある意味、嬢ちゃんもすげぇけどな。婉曲されてるとはいえ、誤解されるような行動したんだからな」
「?」
ダバランさんのいうことは、いまいち意味がわからない。自分の理解力の低さに落ち込んでしまう。
“ウル”と呼ばれているのは、隊長のことだ。
いまの話題は、他の分隊の人たちにいわれた話のこと。
その話は、私の隊長に対する行動が誤解を招いた原因だと、ダバランさんはいってるんだよね?
うーん…?
配属されてからの短い期間の自分の行動を踏《ふ》まえて考えるけど、分からないばかりで、頭がやたらと熱くなってきた気がする。心なしか、ぷすぷすと変な音が聞こえるような?
「ただいま戻りましたぁ〜。あれ、みんなどうしたんですか?」
頭が熱いまま、フラフラしながら声がした方向を向けば、同じくフラフラしながらこちらにやって来る小柄な先輩の姿があった。
にこにこしてるけど、あれっ、先輩何か騎士服がよれよれなんですけど?!
5人目の仲間登場。名前はまだ(出て)ない。