竜破の泡沫
還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……
試験管の中で……、
訓練の過程で……、
囁かれ続けた魔性の言葉――
……現在はラクシュミーまでもが共鳴して泣いている。
……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい…………還りたい……還りたい……「――っ……」還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……
眼の光が弱まり、夢遊病者のように覚束ない足元でふらふらと歩みだす哭臥竜邪。
妖女の招きに従って、一歩、また一歩と、毒百足の触肢の内側に自ら近寄っていく。
……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……「――さんっ……」還りたい……還りたい……還りたい……還りたい……還りた―――
「――ガナさんっっ!!」
尋常ではない哭臥竜邪の様子に、声を限りに叫んだサティ――
「「…わ……我………我は……………」
サティの叫びが、二人の心に直接届く――
「「………我は………人間だ――っ!」
渾身の力を込めて、弓籠手の弓弦を引き絞るサティ。
身体に残留している魔力の欠片をありったけ丹田に集中し…………
狙いを定めて……一気に撃ち放つ―――――
放たれた魔力の矢は、狙い違わず摩覇化螺の蝕肢の付け根――
妖女の眉間を撃ち貫いた。
暫時――摩覇化螺のあらゆる活動が停止する。
その一瞬に身体の自由を取り戻し、
摩覇化螺の直前で踏み止まった哭臥竜邪は――――
「「たとえ……姿形は魔物でも………………」」
過去からの魍魎の呼び声を振り切るべく――
全身全霊を込めて魂の叫びをぶつけた。
「「心だけは人間だ――っ!!!」」
想いの丈すべてを込めて、力ある言葉を
その精神の内に紡ぐ哭臥竜邪。
妖女を――その精神を縛る怨霊ごと――昇華するべく、
紡いだ魔力を一点に集中して解き放った。
【【【【――अजगरतबाही――】】】】
暗き雷光が時空を駆け抜け、
球形の崩壊領域に摩覇化螺を囚えた。
領域内部で荒れ狂う漆黒の電光はその中心に集約され、時空の特異点を形成する。
崩壊の因子を穿れた妖女は、
自らの中心に向かって幾何級数的に崩れ去っていく―――
「うぎぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~!!!!!!!!!!」
断末魔の咆哮を上げ、虚無の彼方への放逐から逃れ得ようと、
虚しい試みを続ける妖女。
「掴むのよ………この手に……世界を……」
奈落の底に通じる虚空の扉から、
差し求めるように手を伸ばし、
最後まで破滅の女神を渇仰する
「……還り………い……故……郷……………………へ…………………………………」
…………漆黒の深淵の中から覗く亡者の双眸が、
哭臥竜邪の脳裏に焼きついたまま、
いつまで経っても離れることはなかった―――――――――




