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トリムルティ  作者: 姫野博志
第一章  神機妙算《しんきみょうさん》
5/56

合成獣の脅威

「ホ~~ホッホッホッホッホッホッ……………………」


 谷間たにあいの小さな村落セロンに、奇矯な笑い声が響き渡った直後――それら(、、、)は現れた。

 凶悪な兵士の一団――一言でそう言ってしまっていいのだろうか…………

 その大半は鰐・狼・熊・獅子・蜥蜴・蛇・蜘蛛等々…ありとあらゆる種類の動物の頭を、筋骨隆々とした人間の身体にくっつけて、無理矢理擬人化したかのような姿をしていた。

 ぬらぬらと黒光りする鉄色にびいろの肌は、鱗状の表皮で覆われている。

 生物分類上の節足動物門……簡単に言うと昆虫類以上の動物は、家畜等の有益動物を除いて、このアロォーンの地ではほとんど存在しない。

 すべてお伽噺や神話等に登場する想像上の動物――大昔には実在したが、現在は絶滅してしまっている…という説もある――であるという、その点だけをとっても異常かつ不可思議な存在である。

 あまつさえ顔の一部が異常に肥大化し、眼球・耳あるいは鼻だけ(、、)が頭部についている―まるで悪夢のように畸形な姿をしたモノ(、、)まで混ざっていた。

 村の入り口付近の畑で日常の農作業に従事していた村人達は、何が起こっているかも理解できないうちに、次々と打ち倒されていく。

 一方的な戦いは、瞬く間に村の中央広場にまで達しようとしていた。

 異形の兵士達――獣人兵とでも言うべきか――はその恐ろしい姿とはうらはらに、剣の腹を使って、なるべく村人達を傷つけないように昏倒させると、手際よく縛り上げていく。

 殺戮を目的としているわけではないようだ。

 獣人兵の唸り声と村人達の悲鳴で満たされていた中央広場に、突如として剣戟けんげきの響きが混ざる。

 村の自衛団の男達が、剣を持ちだして獣人兵に抵抗を始めたのだ。


「女・こどもは集会所に避難しろ!!――

 副長――っ! 三~四人連れて、裏山の抜け道を確保しておけ―っ!!」


 大剣ロングソードを手にした筋骨たくましい男――

 セロンの若長ガリウスが、村人達へ矢継ぎ早に指示の声を張り上げる。

 あごひげを蓄えた精悍な表情はまだ若い。三十代後半には届いていないだろう。


「――サティ お前も行くんだ」


「まだです……っ! 逃げ遅れている人がいます――」


 転んで泣いている幼児を抱き起こし母親の手にゆだねながら、サティが真顔で応える。


「それに……父様のそばにいたほうが安全です」

 ガリウスの目元がふっと和む。


おだてたって俺は知らんぞ。自分の身は自分で守れ――!」

 わざと突き放すように言ったガリウスは、腰元から短剣を引き抜き、サティにぽんっと放り投げた。


「あとは……自分の判断で行動するんだ――いいな」


「えっ?」


 何とも言い知れぬ表情を浮かべて、深い眼差しをサティに向けたガリウスは……

 次の瞬間くるりと身を翻し、戦いの指揮をとるべく中央広場に向かった。

 放られた短剣を両手で受けとめたサティは、呆気に取られて突っ立っていたが、はっと気を取り直して慌ててガリウスの後を追って駆け出した。


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