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トリムルティ  作者: 姫野博志
第四章  鷹視狼歩《ようしろうほ》
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夢幻追想

な、なんだ……っ!?


いったい何が起きたんだ――?


右舷損傷!

正体不明物体(アンノウン)進入――!!


厖大なエネルギーを観測!!


緊急事態(エマージェンシー)

緊急事態(エマージェンシー)――!!



次元融合炉(ディメンションジェネレーター)が暴走――

正体不明物体(アンノウン)の力と相互干渉


数百億光年離れた惑星内部へ機動要塞が転移――惑星爆散……



超越部隊(トランスセンデンス)ラクシュミー少尉

正体不明物体(アンノウン)を体内に融合して自己封印――



時間凍結したラクシュミー少尉

邪神竜と命名された正体不明物体(アンノウン)とともに永劫の眠りにつく――



――――結論――――


我々の科学力では……

故郷への帰還は叶わない


――この…宇宙の事象的地平面からの脱出は不可能である――



……では……では、邪神竜の力を使えれば……!?



――しかし邪の力を利用するなんて…………


――正でも邪でも構わない――!!


我々には分析することすら不可能な次元の壁を……

自由自在に移動できる神の力――


利用することができれば――

きっと……きっと戻れる―――!!



……そう信じて、希望を捨てずに…

我等は幾世紀にも亘って命を繋ぎ、記憶を繋いでいった……


ある者達は眠りにつくことで……

またある者達は新しい大地に根付くことで……


……そしてまたある者達は、

記憶(こころ)を受け継ぐことで……



永い…永い年月を費やし――


欠損した南半球を残存物資で補完

北半球を機動要塞の力場(フィールド)で覆い、

対消滅転換炉の莫大なパワーで永続的な維持を計画

未知の物質――月輝石と命名――で構成された惑星中心核を衛星軌道に投入



生き延びる場と

生き延びる手段を確保……


然るのちは、ただ延々と研究を重ねていった―――



実験初期においてはは―――

邪神の一片の細胞ですら制御不可能であった……


先達ラクシュミーの例に習い、人間との融合を図ってはどうか―――


――駄目だ!!

 

睡眠等により、人間の意識が途絶えた途端……

暴走が始まる―――

 

……では、意識が断続せぬ手段を講ずればよい…


二体の人間を同相位において合成し

二十四時間、封印領域における意識を持続すれば解決することだ―――



こうして……


――超次元相転移融合理論が完成した……


が……


封印されし高位次元体――


“邪神”を普通の人間の精神力で制御できる可能性……

 

 ――(ゼロ)――



……ならば……ならば……彼女を使おう――



邪神を単身その身に受け止め

生存している唯一の個体――――


 

――原型素材(オリジナル)ラクシュミー



登録されていた彼女の細胞を培養し

大量製造された無数の人工生命体(クローン)…………


過酷な競争によって淘汰を重ね――

最優良個体の選出作業に入った――――



原型素材(オリジナル)ラクシュミーと交代要員二体―――

三体だけでは邪力変換に要する魔力が不足する恐れがある……


……しかし、三体以上の融合は技術的に不可能だ!


それでは魔力を供給することのできる補助要員を用意しよう

女神専属人間補給基地(ヒューマンサプライベースフォアゴッデス)要員の追加を検討――


素質を有する双子の姉妹を発見・確保

初代乗員(オリジナルクルー)の精神を双子に上書きインストール……


採取した細胞から人工生命体(クローン)の生産を試みるが――失敗

原因不明のため、古典的な品種改良の手法を採用する


安定・確実な一体から卵子を採取

頑健な移住者子孫における精子提供者との交配実験……



――不測の事故により、実験の推進を一時停止――



継続中であった同相位合成のための特別優良素材――――二体……


――――選抜終了――――


原型素材(オリジナル)ラクシュミーとの超次元相転移融合実験の目処が立つ――――――



邪神の持つ無限の力を使いこなす

新たな生命体の誕生に向けた実験の開始…………



来たれ――!!


三位一体(トリムルティ)の破滅の女神(パールヴァティ)――!!!

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