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回想――ガナ
ガリウスの灰色に煙る瞳の奥に、深い苦悩の影が宿っている――
ガナの瞳には、暗がりの中でもその闇がはっきりと見て取れた。
――あの時……ガリウスの棍棒は、襲い来る子供達の剣のみを狙い、子供達の身体に打擲を加えることは決してなかった。
いくら五歳児とはいえ、切っ先鋭い小剣を振り回す無秩序な集団を相手にして身を守ることは、容易なことではなかったろうに……
「先刻の治療のときに見たよ……その胸の古傷…………
あの時の一太刀を放ったのはボクだよ」
「――――っ!?」
眼を瞠り驚いたガリウスは、ガナを凝視したまま絶句する―――
――班員が次々と掛かっては跳ね除けられていく中、
ボクは遠くから刹那の機会を狙って動かなかった。
一瞬――何に気をとられたのだろうか?
動きの鈍った巨人が、再び教官に向けて何ごとか叫んでいる。
ボクは、腰だめに剣を抱えたまま、躊躇することなく身体ごと体当たりした――――




