回想――ガリウス
「――俺には……どうしても殺せなかった……」
重たいため息のようなガリウスの声で、ガナは現実へと引き戻される。
「あの頃の俺は、知らず知らずのうちに|《機関》《アムリタ》の選民思想に毒されていた…………」
田舎者の武骨な若者が、初めて触れる王国の文化。
超常技術の結晶|《機関》《アムリタ》との接蝕。
――そして……美しい娘との出会い。
|《機関》《アムリタ》の中に在りながら、その存在意義に疑問を持つ娘は、
|《機関》《アムリタ》に傾倒していく若者に危惧を抱く――愛するが故に…………
……ある日娘は、|《機関》《アムリタ》の真実を――
その狂気を若者に知らしめるべく、荒療治を試みた。
幼児構成員に対する武術の基礎訓練――小ちゃい子の健康体操みたいなものよ―
そう言われて連れだされた若者は、
王国の地下に根を張る|《機関》《アムリタ》の施設の一室に通された。
そこには見るからに異様な集団が、整然と列を成して待ち受けていた。
――銀色の頭部保護具で顔を隠した三十人の幼児達…………
想像と全く違う状況に、戸惑いながら問いを発する若者……
傍らに立つ指導教官は全く意に介することなく、冷たい声で号令をかける―
戦闘開始…………と――




