回想――慄然
生まれ落ちたその瞬間から、すでに生存競争は始まっていた。
日常生活のすべてが戦いだった。
戦って勝たなければ、食べることも、休むことも、眠ることさえままならなかった。
そして三歳になって―かろうじて防具の装着だけは赦されていたが―
実戦形式の過酷な訓練が開始され、熾烈を極める淘汰が始まった。
そんなある日……
見たこともない程巨大でごつごつとした人間が、剣術教官としてボク達の前に現れた。
これまでの教官は皆、でこぼこした柔らかい小柄の人間ばかりだった。
――それはもちろん、性別の違いによるものであったのだが……
当時ボク達の周りにいるのは、ほとんどが養育担当も兼ねた女性研究員であった。
初めて見た男性剣士は、とてつもなく巨大で、
身長よりも長くて太い棍棒を軽々と片手で振り回していた。
油断なく警戒するボク達に、女性教官がいつもどおりの冷徹な最高音域で指示を出す。
――あの棍棒でひき肉にされたくなかったら、殺られる前に巨人を殺れ―と……
ボク達は一斉に跳びかかった。巨人は恐ろしかったけど、ひき肉になるのは嫌だった。
でも…………巨人は恐ろしく強かった――
誰も一太刀すら浴びせることが出来ず、足を払われ、胴体を押され転がされていく。
長大な棍棒を軽々と振り回し、剣だけを器用に弾き飛ばしていく巨人……
それでもボク達は、飛ばされた剣を拾って、何度も何度も打ち掛かっていった。
――凶悪な表情を浮かべた巨人が、何か叫んでいる。
でも、ボク達には聞こえない。頭部保護具が視覚以外のすべてを封じているから……
――唯一聞こえる声は、教官からの冷徹な指示だけ…………
殺せ―― 殺せ―― 殺せ―― 殺せ―― 殺せ――




